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2019/03/20

Bench 89−対話ベンチ・鼎談ベンチ・座談ベンチなどの会談ベンチの発展を動物公園のベンチにみた

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春カフェの「あをや」では、O氏が着く前だったのでお先にちょっとと思い、散歩して乾いた喉をドイツ・ビールの小瓶で潤す。すでに2階は子連れの予約客でいっぱいで、1階の席もすぐに埋まってしまった。「あをや」の奥様は髪を、春めいたショートカットにしていて、忙しい仕事の合間にも雑談に付き合ってくださった。若いのに似合わず、いつまで生きられるのか、と謎をかけてきたりした。O氏とのランチ。ポタージュ・スープを頼み、春色コッペ・フランスコッペ・オムレツサンドをシェアする。ブロコリーの自然な香りと、りんご蜂蜜の甘酸っぱさが、口から鼻へ抜けていき、パンのもちもち感が持続して、これらの感覚を支えてくれた。

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「夢見ヶ崎動物公園で花見をしよう」と提案すると、O氏はすぐに桜の開花情報を聞いてくださった。「未だだ」という返事だったが、何か咲いているだろうと、歩き始めることにする。それで、ベンチ探索が始まったのだ。夢見ヶ崎動物公園には、現在流行りの「マーケット・サウンディング」が実施されていて、顧客動向に敏感な制度が取り入れられつつある。もちろん、緊縮財政のもとでの努力という側面もあるのだが、業者からの提案の動機付けは必要だと思われる。制度が流行に流されなければ良い結果が期待できるだろう。このような努力結果が少なからず、この動物公園には歴史的に蓄積されてきている。

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動物園の檻が並ぶメーンストリートのベンチは入れ替えがかなりあり、ベンチの変遷を博物館展示のごとく追っていくことができる。当然ながら、今回は動物展示よりもベンチ展示を追ってしまったのだ。この動物公園がどのようにベンチを考えてきたのか、業者がどのように考えてベンチを設置してきたのかが、展覧会場のごとく陳列されている。O氏と来ると、前回の本門寺のベンチ巡り同様なのだが、なぜか決定的なベンチ認識の転回が起こるのだ。今回は、O氏が「社交」の専門家であったので、社会における2者関係から3者関係がなぜ生ずるのか、という雑談話からの刺激があったからだと後から思ったのだった。(O氏のブログはこちらから

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まず、動物公園の裏にある事務所辺りに注目した。この近くには、旧い時代の最もシンプルなベンチが保存されている。この木製2本座面ベンチは、感動するほどにベンチの最小限の機能を実現している。まず当たり前だが、2人掛け以上を実現している。座面の2本の間が空いていて、身体を支える坐骨が直接座面に当たることを避けているなどの基本が最低限満たされている。さらに、事務所の前には、金属製の簡易ベンチが置かれていて、かつてはこれらがメーンストリートに置かれていたのだな、と想像させられるのだ。これらが、おそらく初期の夢見ヶ崎動物公園のベンチ群を構成していたものだと思われる。

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今回注目したのは、動物公園という場所の特色がどのようにベンチに反映されているのか、ということである。ここがじつに、今回途轍もないとわたしには思われるほどの、思考の発展をもたらしたのだった。ヒントは、動物公園では家族連れが多いという点だった。ベンチは通常、2者関係を想定している。3人掛けのベンチもあるがこれだと真ん中の人が媒介して、結局は2者関係が二組作られるだけになる。だから、ベンチの標準形は2人掛けであるといえる。つまり、カップル的社交は、「対話(対談)」でダイアローグを構成している。ベンチは二人が親密な話をするイメージで作られている。パーク・ベンチの正統はやはり2人掛けのベンチが圧倒しているのだ。

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ところが、ここは動物公園なので、多くは家族連れで3人用以上、できれば横一列ではない形式が求められたのだった。その結果、3人以上用のベンチが発達することになった。「鼎談」形式でトリアローグ型ベンチ、あるいは4人以上用の「会談」型、「座談」型ベンチなどが、2人掛けベンチを圧倒する勢いで設置されたのが、ここの夢見ヶ崎動物公園だったのだ。もちろん、会談ミーティングタイプのベンチは、特別扱いで、東屋付きの景色の良い場所に1箇所だけ設置され、東屋が雨を防いでくれるので、ベンチやテーブルも木製のしっかりしたものがつくられた。けれども、これらの需要は多かったらしく、その後テーブル付きのベンチが定着した。弁当を広げることもできるため、家族連れの動物園ベンチとして、このタイプが便利だったと言える。当然ここでは、コスト・パフォーマンスを提案する業者は出てくるわけで、弁当を広げる必要がなければどうだということで、テーブルなしの多人数用ベンチが最終的に現れることになったのだ。

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なぜ会談型(ミーティングタイプ)ベンチ、つまり2者会談ベンチから3者会談ベンチ、さらに多者座談ベンチへと、ベンチが発展したのかという具体的な変遷が、この動物公園における人数規模で説明できたことは、今回の大きな収穫であったといえる。このことは、ベンチというものの多様な柔軟性によるものだということは強調しておきたい。ベンチというものには、人数に合わせたアフォーダンスが誘発される素地が含まれているのだ。

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最後になってしまったが、この夢見ヶ崎動物公園の一番奥にある、「座談ベンチ」というのか「多者関係ベンチ」というのかをお目にかけたい。なぜベンチが社会性を誘導するのか。それは、ベンチが2者関係から3者関係を経て、多者関係へと導くところにまで、人びとの想像力を乗せる媒介項となって現れるからである。縦横4メートルほどのこの木製の巨大なベンチで、車座を作り、みんなが一緒に座り、頭上には満開に咲いた桜が枝垂れている様子を想像していただければと思った次第である。


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