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2019/01/10

Bench 41−なぜだろうという好奇心を沸かせるベンチ

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O氏が提供してくださった、もう一つのベンチが、この木製のベンチだ。恵比寿駅から恵比寿ガーデンパレスへ至る「動く歩道」の中間においてあるベンチだそうだ。いくつかの好奇心を惹起させるベンチだ。

 

第1に、途中で置かれているから、休憩用だと主催者は考えているに違いない。けれども、ちょっと考えればわかるように、「動く歩道」なので距離は多少あっても、途中で疲れ、座りこむわけではないのだ。したがって、O氏も指摘しているように、このベンチに腰掛けている歩道利用者はほとんどいないのだ。

 

第2に、なぜ木製のベンチが置かれているのか、という点が疑問だ。動く歩道は屋外なのか、屋内なのかをいうことを、このベンチが示している。この歩道の管理者が、ここは屋内だという認識を示したことをこのベンチは示していて、もし屋外だったら、純粋木製のベンチを採用しなかったのではないかと思われるのだ。この意味でも、ベンチというものには、座ったりする以外にも、人間の意識を反映するというきわめて重要な機能が存在することを示しているのだ。

 

第3に、座るためではないとすると、このベンチは何のために置かれているのだろうか。たとえば、ベンチ全体が飾り用に作られていて、動く歩道を通って行く人びとの目を楽しませるためのオブジェになっているのかといえば、それもちょっと違うのではないだろうか。装飾性という香りはほとんど感じさせない。

 

けれども、一つ気になって指摘できるのは、背板が梯子状になっていて、それを支持する上板と、下板が曲がった板で作られており、この曲線が独特である点なのだ。この曲線は何なのだ、という不思議さはあるのだ。上板の曲線は、よく見るタイプであり、柔らかさを表現するためにありうると思われる。けれども、下板の曲線は何なのだろうか。直線であっても何ら問題はないし、あえてここを曲線にしたために、過剰で、無駄な感じを与えているように思えるのだ。

 

曲線をここで作り出すには、曲木にするのか、板材から切り出すのか、ということになるのだが、これだけの幅のものを曲木にするのは通常行わないので、おそらく切り出しを行なっているのではないかと思われる。そうならば、この一本の曲がった板を作るためには、曲がった部分全体を含む、通常の2倍以上の板の幅が必要になるのだから、上板と下板の2本作るのは、それだけで手間がかかってしまうに違いないと、わたしも最初は考えていた。

 

それならば、なぜわざわざ手間のかかる曲げ材の切り出しを、上板だけで済まさずに、下板にも適応しているのか、という疑問がますます起こってきてしまうだろう。それで、下板を上下ひっくり返してみればわかることだが、上板と下板は同じ形をしていることだ。職人の方がたならば、直感的に解決してしまうことがそこにはあるのだ。何を言いたいのかといえば、上板と下板を複数作るために、同型の曲がった板材を、大きな板材から量産させたに違いないということなのだ。それで、それを上板と下板に採用したので、部材としては、上板と下板は2つの部品なのだが、同じ部品を使えるので、手間はかからないことになるのだ。したがって、下板を直線で作るよりも、曲線で作った方が量産できることになると制作者は考えたに違いないと推測できるのだ。

 

手間をかけたように見せかけて、実際には手間がかかっていない部品作りがここにある。このようなちょっとした独特の工夫が、このベンチをここに置くことになった理由となっていたら、面白いなと思った次第である。

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