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2019/01/07

Bench 39−The Park Bench 第1話 傷つけられる側と傷つける側の関係性

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アーミーナイフが取り出される。少年が持ってきたのは、赤い柄のものだ。コルク栓を抜いたり缶を開けたりできる道具も付いている。使い慣れたものではなく、家にあったものだ。柄から刃を引き上げようとするのだが、キツく出来ていて、親指と人差し指の爪にようやく引っ掛かって、刃が出た。

 

公園にベンチがある。少年が家から少し離れたこの公園へ来たのには、理由があった。女の子との2度目のデートだった。アーミーナイフは目的があって持ってきたわけではないのだが、女の子の気をひくには十分だった。

 

女の子がじっと見つめる中、ナイフがベンチの上段に「I」の字を刻む。間を空けて「U」の字を彫ったとき、女の子が少し微笑んだような気がした。女の目が次を誘ったので、「♡」を真ん中に印した。ベンチは鷹揚に構えていたし、ナイフの滑りは良かった。

 

でも、そのほんの一瞬だった。女の子の顔に陰りが出来て、目がそらされた。ベンチを支えられていた少年の親指に、ナイフが入ってしまったのだ。最初はたいしたことなかったのだが、血は傷口から流れ出し止まらなかった。びっくりした女の子は、少年を抱えるようにして立ち去った。ベンチに「I U」だけが残された。

 

何もなかったかのように、ベンチの前を通勤のサラリーマンが通っていく。買い物帰りの女性も通り抜ける。傷つけられたベンチは、傷つけた少年に報復をしたわけではないのだが、記された文字と贖われた血液とがこのベンチのただならぬ関係性を写し出している。パーク・ベンチの話がここから始まった。

 

()ここで語られているストーリーは、イラストから受けたイメージを文章に起こした創作である。Chabouteの『The Park Bench』がその元となっているイラストなのだが、セリフのないイラストのみによる書物だ。けれども、たとえ絵だけであっても、この書物が文章を想起させるに十分な源泉としての力を持った、そのような「原作」であることに間違いないことをここに記しておきたい。

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