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2019/01/08

Bench 39−2 The Park Bench 第2話 老夫婦は日常的非日常をベンチに感じた

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犬が寄ってきて、匂いを嗅いでいる。ベンチの左の支柱に、片足をあげた。サラリーマンが通勤帰りに通り過ぎていく。


公園にベンチがある。カーディガンとシャツ・ブラウス姿だから、近くの家から出てきたのだと思われる。老夫婦が互いに顔を見つめ、老婦人は老紳士の腕に寄りそって近づいてくる。目があって、二人はパーク・ベンチに腰を下ろす。


老紳士が微笑みながら、紐で括られた小さな包みを取り出す。蓋を開けると、さくらんぼの乗ったケーキが1個出てきた。あらかじめ用意していた折りたたみナイフで、その四角のケーキを斜めの三角に切って、老婦人に渡した。二人だけのお祝いだ。


老紳士が近くのケーキ屋でこれを買った時には、家に帰って食べるつもりでいた。けれども、家についてみると、ちょっと公園まで出かけてみようかということになったのだ。パーク・ベンチに座ったことだけが、いつもと違うことだったのだが、それでも何か晴れがましい感じだった。家で食べそれで満足しても良かったのだが、家からちょっと出て、日常とはほんの少し違うことを行ってみるのも、長い結婚生活の中でもなかなかなかったことだ。


老紳士は老婦人が食べることができるのか、気遣っていた。少し前から、よく食べ物を落としていた。口の周りにケーキのくずがついても、この頃は気にしなくなっていた。老紳士は、微笑みながらハンカチを出して、老婦人に手渡した。いつまでも、このまま二人で。


パーク・ベンチは無表情のまま、刻まれた「I ♡ U」を見せている。

 

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