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2018/02/01

半年間の林檎遍歴

Img_2960 去年1年間のりんご遍歴を思い返して見た。りんご遍歴とは言っても、種類はそれほど多くはないのだが、この時期になると、味の記憶をとどめておきたいという欲望が湧くのだ。20170814 先日、シナノスイーツという種類の、「訳あり」リンゴが出ていて、妻が求めてきた。ボケているのではと思われたが、意外に実がしっかりしていて、旬は過ぎているにもかかわらず、美味しかったのだ。

 

20170818 例年、りんご遍歴は8月から始まる。原稿を書くために田舎にこもるのだが、その家の近くにりんご園があって、その枝が重みで落ちてきて、たわわに実った果実が赤くなってくる時期がある。20170830 その頃から、リンゴが手に入るようになるのだ。

 

20170902 早生のりんごという種類があって、まずは農協の野菜市場をのぞくことにしている。ここに小さな農園でとれたような早生リンゴが出てくる。商用のりんごは、やはり10月すぎの最盛期を待たないとなかなか出てこない。実際に樹に果実をつけてから、甘さがついてくるまで、十分な実りを待っているのだ。174730048_unknown それに対して、早生のりんごは8月の最初が勝負で、この時期にお盆を目指して、ちょっとだけ出て、そのあとはさっぱり出てこないのだ。今年は、母の三回忌があったので、そのあとお墓へのお供え用のりんごも必要だった。

 

20170903 まず目立つのは、「祝」だ。青リンゴという感じがして、酸っぱさと新鮮さが取り柄で、この酸味が素敵だ。樹によっては、当たり外れがあるのが、早生リンゴの特徴なのだが、当たりとなるような青リンゴは、もうこれだけで良いと思えるほどだ。177474288_unknown これだこれだと、皮ごとかじってしまう味なのだ。ずっと「祝」が続いて欲しいと思うほどなのだが、この期間は驚くほど短い。1回購入できれば良い方で、例年購入を逃していまうほどなのだ。Img_2988 紅玉と同様に、酸っぱ味系のリンゴは価格は安いのだが、得難い。得難いから、美味しいのだ。もし祝がもっと後の甘いリンゴと混ざって売られていたとしても、これを手に入れたいと思うことだろう。ところが、しばらくすると祝自身の味も変わってきてしまうのだ。

 

Img_8566 次に出たのが「さんさ」だ。これも早生リンゴの一種なのだ。だから、祝の後に出て、これも次に続く楽しみがあるリンゴだ。このようにリンゴの種類は異なるけれども、連鎖を持っているのがリンゴの強みなのかもしれない。リンゴ味のネットワークが人びとの中に定着している。

 

Img_29581 8月から9月になると、近くのK農園に観光客が立ち寄るようになる。津軽、サン津軽などが出てくるのだ。実はこの「サン」がつくのとつかないのと何が違うのか、知らなかったのだ。177474304_unknown 調べればすぐわかることだが、陽に晒すか、袋をかぶせて陽を避けるかの違いらしい。これで早く熟成するのか、遅く熟成するのかが違ってきて、それが味に出てくるのだそうだ。近年、なぜか「サン」のつく津軽がこの辺では多くなってきたような気がするのだ。177474400_unknown わたし個人としては、じっくり型が好みなのだが、ほんの印象でいうならば、やはり長く味が持つような気がしてしまうのだ。

 

9月の後半になってくると、種類も多くなる。今年は2種類の珍しいリンゴに会うことができた。Img_9030 一つは赤い小リンゴだ。農協に早くに出ていたものだ。小リンゴで思い出すのは、米国のリンゴだ。20年ほど前に米国北部のニューハンプシャーをドライブして、街道沿いに真っ黄色い紅葉が連なる中、取材クルーと一緒に快調に走った。Img_8836 途中寄ったドライブインに入ったところに、赤い小リンゴが見事に山積みされていて、見た目にも、また味も素晴らしいものだった。20年経っても、リンゴの印象は変わらない。喉が乾いていたこともあって、この粗野な味は忘れることができない。Img_8817 リンゴは、罪深い人間であることを自覚させた果物として名高いのだが、他方において、自らが動物だったことを思い起こさせ、野生趣を呼び込む果物でもあると思うのだ。177474480_unknown 177737104_unknown Img_2809

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。