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2017/12/20

予てから企てていた「ウィスキーレモン」をつくる

Img_0386 わたしの本を編集してくださった編集者Tさんがやはり左右社で編集した本、『makingつくること』(T・インゴルド著)を読んでいたら、対照(co-responce)という言葉に出会った。意味からすれば、「共呼応」という、二つの対象が互いに共鳴しあって、物事を作り出していく意味に相当すると思われる。Img_0398 つくることは、つくる人と対象物との間の相互に感入する関係だということだ。この観点は、何も新しい考え方でなく、プラトン=アリストテレス以来の「質量形相論」で「個体というものがいかに形成されるのか」という議論の延長線上にあるものだ。衒学的ではあるのだが、改めてアリストテレスの『形而上学』の新訳を購入して、読み直した次第だ。これは次に書く本で、使いたい題材となった。

 

Img_0396 秋に、松本市にあるコンフィチュールの店、シェモモのM氏からおおよそのことを聞いたのちは、「ウィスキーレモン」なるコンフィチュールに憑かれている。このところずっと、これを自分でつくる機会を狙っていた。パンにつけて食べるのに、甘さばかりでなく、苦味と酸味の効いたものが欲しくなってきたのだ。シェモモでもときどき製造しているそうで、そのタイミングに店へ行けば手に入るのだし、Img_0406 また、通信販売という手もあるが、その場合自分でつくる機会を逃してしまうことになる。まずは自分で作ってから、シェモモの「ウィスキーとレモンのコンフィチュール」の購入を考えることにしよう。

 

Img_0392 シェモモではレモンは瀬戸内海産と言っていたのだが、それで、もし自分でつくるとしたならば、「レモン」という素材をいかに手に入れるかがキイポイントとなる。外国産のレモンにはモノカルチャア的な栽培法が取られており、そのため大量生産に有利なポストハーベストの薬が使われていて、ジャムを作るには不向きであることは知られている。Img_0391 また同様に、長期に運搬されるために、ワックスがかかっていて、レモンの皮そのものを使いたいようなマーマレードを作るには、やはり日本産で、ワックスのほとんどかかっていないレモンを探さなければならなかった。

 

Img_0411 もちろん通信販売の発達している現代なので、すぐにもインターネットで無農薬レモンは見つかるのだが、それらは3キロとか5キロとか、少なくとも1キロ以上は購入しなければならず、運送費だけでもままならない費用となるらしい。レモンという対象物にかなりの思い入れと購入のための手間暇をかけなければならないことを、思い知った次第なのであった。まずは、「質量」たる素材に、つくることが支配されていることを実感した。プラトンのようにレシピというアイディアさえ整えば、「ウィスキーレモン」がすぐ手に入ると思ったのが間違いだったのだ。

 

Img_0416 じつは、今回の沖縄出張で、「レモン」素材のことがクリアできた。妻に沖縄の黒糖購入を頼まれていた。沖縄学習センターの事務長Y氏にお聞きすると、黒糖ならばぜひ「多良間」のものをというので足を伸ばしたのだ。宮古島物産店というのが、那覇の国際通りにあって、そこで求めたのだ。それで、ひょいっと隣をみると、そこにレモンがあったのだった。宮古島産の無農薬レモン2個を求めた。

 

Img_0409 あとはウィスキーだ。住んでいる近くの小さなスーパーマーケットでは、ときどき酒類の安売りを行っている。偶然にも今回、通常値段の半値の伝統的スコッチが棚に並んでいた。砂糖は通常の蔗糖で間に合わせた。レシピは以下のとおりとなった。

 

レモン    300g(レモンの量に合わせて、以下の素材の量を考える)

ウィスキー 60g(好みでプラス/マイナスするが、今回はかなり多めにした)

砂糖      200g(今回はもっと少なくした)

水        200gM氏に聞けば水は入れないと答えただろうが、今回は少量)

 

1. タワシでレモンを洗って、4つに割り、皮と身を離す。

2. 身から種を取り出し、ざく切りにする。

3. 鍋に身と皮を入れて、最初は強火で、あと弱火。

4. 砂糖を3回に分けて入れる。

5. ウィスキーを入れて、とろみがつくまで煮詰める。

6. 火を止め、冷まして瓶詰め。これで出来上がり。

 

Img_0421 まだとろみが固まらない汁の暖かいときに味見をしたのだが、自分でいうのも何なのだが、なかなかの出来上がりだった。皮の苦味がウィスキーの苦味と輻輳して、さらにレモンの酸味と、とろみの甘さがそれらに乗り、複合した味が絶妙だったのだ。

 

Img_0424 こうなってくると人間の心理というものは恐ろしいもので、「ウィスキーレモン」の観念がわたしの中に住み着いてしまったのだ。シェモモの「ウィスキーとレモンのコンフィチュール」と、さらにはスコットランドのアイラ島で有名な伝統のモルトウイスキー「ボウモア」のウィスキーマーマレードも取り寄せて、じっくり味わって比べてみたいと思うようにもなっているのだ。メイキングとは、インゴルドが述べるように、観念と素材の限りない相互作用として存在することをコンフィチュールのつくることに見たのだった。

 

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。