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2017/07/23

椅子のコレクションを観る

Img_2500 昨日、夜遅くまで議論が続くのかと思っていたら、思わぬ豪雨が吹き荒れたこともあって、ペールエールを飲んで、次回の予定を立ててあっさりとお開きとなった。博士後期課程のみなさん、かなり忙しいらしい。

 

Img_2458 宿は京都駅に近いことを重視して選んだのだが、かといいながらも駅の喧騒を避けて、じつは京都五条にとっていた。地下道の七条へ出て、東本願寺を越えれば、五条の街へ入っていく。まだまだ路地のあちこちに長屋が残っていて、京都駅からの徒歩圏であるにもかかわらず、住宅地としての顔を残している。Img_2454 朝の食事は、宿から五条大橋へ向かい、その袂に鴨川と並行して、高瀬川が流れ込んでいる、その脇にある静かな喫茶店「Kano」へ入る。Img_2456 窓から、水量豊かな高瀬川の清流が見えて、五条大橋の交通量の多さを打ち消している。街の中のオアシスという雰囲気だ。

 

Img_2466 今日の目当ては、五条にある、陶芸の河井寛次郎記念館に置かれた椅子コレクションだ。とくにここが、椅子のコレクションで有名だというわけではない。けれども、京都で椅子を集めて展示しているところを思い出していたら、俄然この館が浮かんで来たのだった。Img_2471 河井寛次郎の作風に似た「異形」の椅子があったな、ということだ。河井寛次郎が生活の中で、生活具を選んでいく過程が見えるような気がするのだ。

Img_2493

黒田辰秋に依頼した椅子もあるかもしれない、とも無い物ねだりの期待したのだった。黒田の制作になるものとしては、有名な棗(なつめ)や、綺麗な帯留が展示されていた。

Img_2495

 

「異形」の椅子と呼んでしまうと、ちょっとおどろおどろしいのだが、1階においてあった、この椅子などは、背板に特徴があって、過剰に異形だと思われる。Img_2501 ゆったりと背中へ体重を預けるときには、座りやすい椅子だ。特別なことがない限り、このタイプの椅子が大量に作られることは考え難い。座る人の何かが、椅子の内部にまでずっと浸透している椅子だと思われる。

 

Img_2487 次に、普通の椅子に見えるが、座ってみると「異形」なことがわかるのが、この書斎椅子だ。まず、小さすぎる気がするのだが、がっしりとした丈夫そうな構造に、さらに鋲が打たれた過剰な姿をしている。河井寛次郎の座っている写真が残されているので見ると、この椅子はおそらく彼の身体にかなり適するように作られている。したがって、ちょっとお尻や腰回りの大きい(わたしがそうなのだが)人が座ると、肘木に引っかかるくらいなのだ。Img_2491 けれども、座板の曲線はよくフィットするし、一日中机と向かい合う椅子としては申し分ない。この椅子のもう一つの特徴は、ひっくり返すとわかるのだが、椅子の脚に木製のコロが取り付けられていて、事務椅子のように、座ったまま転がすことができるように工夫されている。もちろん、木製なので、ギャロギャロと軋んだ音を立てて、可愛いのだ。この椅子も、河井寛次郎の思いがかなり吹き込まれ、浸透した椅子といえる。

 

Img_2477 それから、あった、あった。ゴッホのスペイン椅子だ。椅子作家のYさんから教えられてから、あちこちで見るのだが、このオリジナルに近いものは意外に少ない。この脚のしなりはどうだろう。やはり、生木なので、時間が経つと、ホゾが緩んでくるのは仕方がない。ギシギシと座ってみて、この緩みの具合を感じるのは、楽しい。この椅子がたくさんあるのは、やはりスペインから当時仕入れていた店が京都にあったからに違いないだろう。Img_2480 現在では、その店で扱っているのは、このような手仕事のものではなく、機械で削ったもので、見劣りがするのだ。それにしても、塗装無しで外に置かれたこの椅子は、粗野そのもので素晴らしいのだ。

 

Img_2481 それから、見過ごされそうな椅子が、登り窯の前にあり、気になって、座ってみた。なるほど、という感じだ。ふつう、このような仕事場にある労働椅子は、前傾姿勢を基本としている。前へのめって、仕事に没頭するからだ。ところが、この椅子の背当てが、曲げ木で、ぐるっと後ろへかなり回っているのだ。だから、座ると、少し後傾姿勢となる。Img_2469 おそらく、登り窯を三日三晩焼いていて、薪をくべる合間に、休憩をとり、窯を眺める時には、ずっと後ろの高いところまで、眺めつつ、休むのだと思われる。したがって、後傾姿勢の椅子が必要とされたのだと思われるのだ。

 

Img_2505 これだけ集めれば、少し壊れかけた椅子もある。この椅子は座面が楕円で、位置が偏っている。それが三角形の貫に乗っている。異形ではあるのだが、座りやすいし、文句のないところだ。しかし、形に凝ると、思わぬところに皺寄せが出るのだ。貫のホゾがやはり抜けかかっていた。Img_2506 ちょうど三角形の頂点のところなので、力がかかってしまったのだと思われる。けれども、ゴッホの椅子と同様で、これも完全に壊れるまで、丁寧に使ってもらえば、多少の故障はかえって椅子の特色ともなるのだ。長く使ってもらいたい椅子だ。

 

Img_2512 この記念館は、手仕事の工房を兼ねていたので、当然冷房はない。したがって、今日のように家の中でも35度を超えるような時には、扇子やうちわが必需品だ。1階の広間に用意してあった。とはいえ、2時間ほど滞在すると、喉も渇いてくる。Img_2508 この横丁に入る角に、青磁の陶工が経営しているらしい、珍しい「市川屋珈琲店」があった。ちょうど、入口のカウンター席が空いたので、ここでコーヒーを1杯。帰宅の準備を行う。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。