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2017/03/30

椅子と、椅子の言葉と

Img_6905 朝、雪道を散歩するのは、気持ちが良い。白い輝きが目を覚ましてくれる。この覚醒効果は素晴らしい。また、目を閉じると、ツーンとくる零度の香りがする。山の背へ向かって、樹々が立ち上るのが「図」とすれば、雪は油絵のキャンバスのような「地」を構成していて、山里の落ち着いた空気が伝わってくる。香りには生くささが少しもなく、硬質な感触を身体全体へ届けようとする。

 

Img_6898 ヘンリー・ソローの小さな小屋にはこんな飾りはなかったけれど、雪の広大さの中に立つ小屋は、明らかに雪を慮っているかのような気がする。それを、右目で眺めつつ通り過ぎながら、コミュニティバスへ乗った。

 

Img_6888 じつは田舎の家の水道管が凍結して、それに気づかずに破裂に至ったのだ。凍結で水道管にヒビが入り、その後の気温の緩みで、一気に水道水が噴水と化し、1階のリビング全体が水浸し状態となった。Img_6833 お世話になっている建築屋さんにお願いして、修理工事を行なってもらってはいたのだが、やはり掃除などは本人が行わなければならないと駆けつけた次第だ。ほぼ1日かけて、一応の清掃が終わり、市役所で水道料金の減免措置の手続きを済ませ、帰りの電車に乗ったのだ。

 

Img_6919 四月から新学期が始まるのだが、新しい研究計画を立てていて、今年は「椅子の社会経済学」というテーマで、様々なことを企てようと心に抱きつつ、研究も進めようと考えていた。椅子作家たちをヒアリングして、2、3年かけて椅子と椅子をめぐる産業についての社会経済学の可能性を探ろうというものだ。

 

Img_6920 この話を聞いてもらおうと、松本市中町通りにあるグレインノートのS氏を訪ねたのだ。近くの女鳥羽川沿いにある喫茶店「まるも」でじっくりと話すことができた。すると、どうだろう。思ってもみなかったような展開があったのだ。詳しいことは、2、3年先の結果をみていただくことにして、せっかくだから、わたしの研究だけに終わらずに、椅子作家たち自身の本を作ろう、という話に変わっていったのだった。きっかけは、S氏がある本を引き合いに出して、わたしがその本の現代版を作るというのはいかがか、とおっしゃったことから、話はどんどん深まっていったのだった。

 

Img_6932 まず、椅子作家の方がたが、自分の言葉で、自分の椅子を表現したことがあるのだろうか、という問いをしてみた。椅子は椅子であって、現物が存在すれば、それで良いのだ、ということがあり、なかなか「椅子の言葉」というものは存在しないことがわかったのだった。このことは、わたしにとっては新鮮な感覚だった。椅子があれば、「椅子の言葉」も当然に存在するのだろう、と思っていたのだが、そうではないのだということだ。これは面白いな、というのが二人の一致した考えだった。

Img_6933

Img_6931 などなど、まだまだ不確実なことがたくさんあるのは確かなのだが、先が見通せないことは決してマイナス効果をもたらすだけではない。むしろ期待を生む効果が勝る場合があるのだ。先ずは5月の連休目指して、椅子作家の方々への聞き取りを始めることにして、豊かな気分で「まるも」を後にした。Img_6957 グレインノートへ戻って、S氏の奥様にそのことを話すと、「椅子の言葉」の文章をみて、アイディアを出すことは面白そうだとおっしゃって、お誘いするとこの計画にご参加いただけることになったのだった。年度末には、何らかの転機が訪れるのだ。

 

Img_6929 駅までの途中、小腹が空いたので、グレインノートの近くの喫茶店「チーアン」へ寄ろうとしたら、木曜日は定休日だということで残念だった。もう1軒のいつも寄る喫茶店へ回ることにする。かつて市電通りだったところにあるブック・アンド・カフェ「栞日」で、カフェオレとレモンスコーンを注文する。Img_6936 栞日のご主人が、会うたびに大きくなっているお子さんを抱いて現れて、今回の展覧会の説明をしてくださった。「ウチダゴウ」という、松本で詩人とデザイナーを行なっている方の展覧会だった。Img_6958 中でも、スコットランドの7篇の詩ポスターには、緊張した日本での心を解放させるに十分な、スコットランド的自由が躍動していて、そして、とりわけ字体の綺麗さに心を動かされた。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。