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2017/01/17

来年度放送する授業「色と形を探究する」の最終録画が終了した

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4 月から始まるテレビ科目「色と形を探究する」とラジオ科目「日本語アカデミックライティング」のテキストがはやばやと送られてきた。2年間かけて制作したのだ。 一緒に制作した先生方や、編集者・ディレクターの顔は浮かんでくるものの、手に取ってみると、原稿用紙に書きつけていた頃が夢のごとくであり、自分の手から離れてしまった文章がこのように活字となってしまうと、にわかに書きつけられた世界がすでに彼方の世界のように思えてしまう。とはいえ、授業科目なので、録画・録音したのちも、数年間は質問を受けたり試験を採点したりと、通常業務がついてまわるし、何度も考え直すことが出てくることになるだろう。

 

P1176852_2 思い返してみると、わたしはここ数年間、音や色や形や言葉などの「感性」というものに注目して授業科目を作ってきた。経済学からは少し離れるのだが、十分に社会科学の領域内で考えることが可能だったので面白いと思いつつ制作してきた。感性を媒介として、人と人とがいかに結びついているのかを考えてきた。今年は、特に「色と形」に焦点を結んで考えてきたのだ。かなり困難なこともあったのだが、それでも、得るものはたいへん多かったし、今後の課題も発掘することもできた。さて、このように成果物が目の前にあるのだが、学生の方がたはこれらをどのように受けとめるのだろうか。

 

P1176880 それで、今日はテキストが届いただけでなく、じつは授業科目「色と形を探究する」の第15回、つまり最終回の収録日なのだ。5人の担当した講師全員、N先生、S先生、Y先生、O先生、そしてわたしで最後をしめようということになっている。午後からの収録に、Y先生は早くから控え室にきていらっしゃった。準備としては、それほどないのだが、定番通りメイクアップする部屋へ行って、専門のスタッフによって、テレビ用のお化粧をするのだ。それが済むと、テレビの技術スタッフとの全体的な打ち合わせがあり、シナリオ案にしたがって、ディレクターがレクチャーして、ディレクター達は二階の副調整室へ入り、私たちはスタジオフロアでカメラの前に座ることになる。

 

P1176854 今まで数百回も行ってはいるのだが、いつもこの録画の流れに没頭するまでには時間がかかるのだ。それで大概はリハーサルというものを行って、スタッフと出演者が互いに確認し合うのだが、今回は慣れた先生方だけなので、それぞれの場面のリハーサルは行わずに、進めるところは進むだけ撮っていくことになる。これだけ慣れた先生方ならば、腹八分目でおおよそのところうまくいけばOKなのだ。P1176864 講義というものは、相手との間の了解なので、上手い下手はあるのだが、大方良好に伝わるのであれば、それで良いのだと思われる。対話というものは、この程度の曖昧さが必要で、あまりにびっしりと計画どおりに、一字一句正確に撮ってしまうと、身も蓋もない杓子定規の、聞くに耐えないものになってしまう恐れがある。ある程度の緩さが必要なのだ。

 

P1176875_2 自然科学における「色と形」と、人文科学における「色と形」、さらに社会科学における「色と形」が勢揃いした。それでわかったことは、「色と形」の現れ方が、時間的・空間的にかなり幅があるということだった。Y先生は何億光年にも及ぶ「色」の出現について述べていたが、次のS先生は現在目の前にある「色」というものの現れを問題にしていた。この隔絶した世界のあり方を、一気に並べて共通点や、相違点を述べてしまうという壮大なことを、この番組で行ったのだった。O先生の批評が当を得ていたと思われる。P1176853 客観的な「色と形」から主観的な「色と形」、表層の「色と形」から深層の「色と形」、作り出す側の「色と形」から受け取る側の「色と形」などなど、この多様な幅のある「色と形」にはまだまだ探究すべきことがたくさん残されているな、というのが率直な、録画後の感想だった。けれども、「色と形」を様々な角度から考える「橋頭堡」のようなものをここに築くことができたのではないかと思われる。わたしたちが生活する中で、常に分子レベルの色彩を感知する細胞を意識しながら、「青」という色を認識するわけでもないのだ。生物学的な認知と、心理学的な認知と、さらに社会科学的な認知には、ある程度の距離があって当然だということもおぼろげながらわかってきたのだった。

 

P1176881 さて、いよいよ夕方になって最終回の打ち上げ会だ。近くのイタリアン「Oreaji」にて開いた。この科目を企てたH先生も加わってきた。天文学のY先生は、今年度で定年となるのであるが、タイミングの良い?ことに、ちょうど今日が古希の誕生日だということであった。S先生の取り計らいで、このような誕生日プレートが用意されて、打ち上げ会も盛り上がったのだった。P1176897 考えて見ると、通常の大学では、天文学の先生とこんな雑談をする機会は、社会科学者にはないし、ましてや同じ授業科目を作ってしまうなどということもないのだ。今回は、「日本語アカデミックライティング」とこの「色と形を探究する」の二科目で一緒して、自然科学的「感性」と社会科学的「感性」の共通点と相違点を考えることができたのは、もちろんすべてを理解したわけではないとしても、たいへん稀有な体験であったと感謝している。

 

 

P1176887_2 また、今回の収録では、3人の先生方がガテマラ取材を成功させていて、その時のシャーマンなどとのやりとりも、学問を超えた話として興味深いものだった。このやり方をもう少し最後の番組で反映させればよかったとも思ったが、それはあとの祭りとして、謹んで今後の課題として楽しみに残しておいても良いのだと思ったのだった。P1176902_2 さてせっかく、「色と形」という小さな窓が空いたのだから、一方的に窓から見える風景だけでなく、外からそれぞれの部屋へ闖入して、それぞれの研究分野へと重ねることができればということだが、それにはもっと時間が必要だろう。P1176901_2 けれども、少なくとも受講生の方々の中では、このような窓が開くことになるのだから、風の如くに存分に部屋に入り込んで、いろいろな「色と形」の姿を見ていただきたいと考えている。とにかく、一つの終わりと、もう一つの終わりの始まりとがあったのだ。


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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。