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2016/08/11

松本で、O先生と夏カフェ

Img_4457 朝、信濃大町のいつものバス停のそばを通ると、外国人の男女がコミュニティバスを待っている。視線に入ってこなければ気にはならなかったのだが、今日は「山の日」の祭日なので、このバスはお休みのはずなのだ。Img_4459 旅支度の様子からして、時間はそれほど気に留めないタイプの方々だなとは思ったのだが、ここで待っていて、気がつく頃には半日は経ってしまう。Img_4460 ちょっと差し出がましいとは思ったが、ひと声かけて、異なる路線のバス停を教えた。結果としては、良かったらしく、そのまま松本駅まで、わたしと同じバスと電車だった。早めに旅を進めることができて、感謝されたのだ。

Img_4462 大糸線では、信濃大町駅を出発して、一駅ごとに気温が上昇していくようだった。松本駅へつく頃には30度を超えていて、夏の日差しが厳しい。O先生との約束は午後の1時だったので、それまでカフェ書店の「栞日」でカフェオレを取ることにする。Img_4463 ここはちょうど1ヶ月前に、以前店のあったところから、5軒先の広い建物「高橋ラジオ店」跡へ移転したばかりだ。ここ数ヶ月で、新しい喫茶店開店と、書店とギャラリーの移転と活版印刷スタジオ新設、新装ホテル開業にレンタル・自転車と、さらに今月初頭の木崎湖で行われたImg_4466 「アルプス・ブック・キャンプALPS BOOK CAMP 2016」(野外ブックフェア)主催と、栞日のご主人は八面六臂の大活躍だ。

Img_4464 店の周りを見ると、じつは小学校時代の友人宅がすぐ近くにあり、そしてわたしの幼稚園時代には、ここから数分のところに両親が家を借りていて、この店の前にある銭湯「菊の湯」へ毎日通っていたのだ。懐かしいな。Img_4467 この辺は、清水の源泉が常に出るので、銭湯の帰りにはその清水で冷えた壜牛乳を飲むのが習慣となっていた。「栞日」の二階から眺めると、当然銭湯も様変わりして、建物も近代的な様相に変わってしまっていた。半世紀以上前のことだものな。

Img_4465_2 栞日の1階には、新しい店へ移る動機となったという「活版印刷機」が置かれ、さらにブックフェアのスペースを挟んで、ベンチタイプの客席がゆったりと作られている。そして、奥にカウンターがあって、カフェオレをここで注文した。

Img_4469 活版印刷機は半世紀ぐらい使われ続けたものだそうで、思ったよりも大きい。機械の隣には、この印刷機のためのインク缶、さらに活字が書体・ポイントごとに置かれていた。将来ここで、小冊子を作りたいという希望をわたしは抱いていたのだが、残念ながら、当面チラシや名刺を作るだけで、冊子印刷は考えないそうだ。Img_4470 基本的な技術さえ習得すれば、あとは誰でも動かすことができるとは、ご主人はおっしゃっていたけれども、実際に活字を組む時には、時間がかかるのだろうなと想像するのだった。印刷機と活版印刷のスタジオという、いわば店の「シンボル」を持ったことで、実際の印刷もさることながら、栞日は新たなカフェ書店の理念を獲得したと思われる。

Img_4472 中央のブックフェアのスペースでは、東京蔵前の出版社「アノニマ・スタジオ」の「旅する灯台」展(日本の各地を照らすという比喩だろうか)を開催していて、同社が展開する料理本や野菜本、詩集、絵本が平積みされていた。Img_4532 英国のP.L.トラヴァースの「メアリー・ポピンズ」のシリーズで、『台所のメアリー・ポピンズ』を購入。家に帰って、娘にメールすると、幾つかのレシピを送ってくれれば、そのうちこのトラッドな料理を作ってくれるとのことで、さっそく「アイリッシュ・シチュー」などを送る。この本には、お話と一緒に、料理ノートがついているのだ。

Img_4461 2階へ上がると、壁一面に古いたんすや書棚がランダムに取り付けられていて、そこに書店の書籍が並んでいる。東京でも簡単に手にはいらいないような地方誌や、生活誌、デザイン誌だ。見逃していた建築雑誌「住む。」や日本民藝館が発行している「民藝」などを手にとって読む。Img_4471 ここにも、幾つかのアンティクの椅子が置かれていて、やはり「教会の椅子」も置かれていた。長野で座ったタイプと似ている。聖書や聖歌集をちょっと入れておくような、木のポケットが素敵だ。

今日、この2階では二つの活動が見られた。このような使われ方が、今後のこの店の活動を支えていくのだろう。Img_4475_2 一つは、近くにある市民のための音楽や演劇などを興行する会館の関係者だろうか、スタッフと思われる方々が事務所代わりに、ミーティングを開いていたのだ。Img_4477 何やら難しそうな話をして、顔突き合わせてアイディアを出しあっていた。この方々もたぶん、わたしと同様に、世の中がお休みの時に忙しい人たちなのだ。

もう一つ、2階には、喫茶店の客席部屋以外に、もう一部屋がギャラリーになっていて、その展示準備が行われていた。これから展覧会「Travelling with Spices」が始まるとのことだった。女性の写真家と画家のコラボ展覧会で、テーマは「spices」、インドの旅のことらしい。Img_4480_2 展示されていた一枚の絵の中に四角い窓が真っ白に描かれていて、真ん中なのに余白といった雰囲気をもたらしている。さて、ここに何を描きたいと思うか、と話しかけているようである。もう一枚の絵には、昔懐かしい路地が建物で囲われているという、インドの原風景が描かれていた。この画家の方は、注文でも絵を描くことがあって、肖像画の依頼もあるそうだ。Img_4473 1号が数千円からとおっしゃっていた。これらの展示から察するに、基本的には暇を楽しみつつも、なおかつそれを仕事にしている方々だと思った。

Img_4474 後ろから声がして、待ち合わせ前なのに、なんとO先生が現れた。午前中の卒業生との約束がキャンセルになったそうだ。これで松本滞在中、彼は栞日に毎日来たことになる。さらになんと、この栞日が主催する「アルプス・ブック・キャンプ」のオリジナルTシャツを早速着て登場したのだった。「旅する灯台」どころか、「歩く広告塔」ではないか。すでに日程が終了したキャンプとはいえ、来年の宣伝には十分に貢献することになるかもしれない。

Img_4490 この9月に取材でお邪魔する、工芸店「グレインノート」の奥様へ挨拶に訪れる。その9月には、恒例の「グレインノート椅子展」が開催されているはずで、すでにダイレクトメール用のハガキが完成していた。この椅子展では、この2月に亡くなった、S氏と親しかった木工作家の日高英夫氏の追悼コーナーも設けられるそうである。Img_4487 S氏が日高氏のお嬢さんのために作った子ども椅子が、「AI」と名前が刻まれて店先に展示されていた。この椅子が十何年間にわたって、何人かの人びとを結んでいたのか、と考えると感慨深いものがある。Img_4536 Img_4535

Img_4494 昼食は、O先生が予約を取ってくださったフランス料理「コトリ」で。O先生は牛肉のソティ、わたしは阿波尾鶏ローストだ。味付けはフランス料理なのだが、和風料理の健康に良さそうなところを取り入れている。大根や人参などの付け合わせがさっぱりした味だ。今日は新しい祝日「山の日」で、上高地などでレセプションや祭典や行事が行われる。Img_4497_2 それには、皇太子一家が出席することになっている。この第1回「山の日」式典に客が取られたせいか、このランチ時間に限ってはいつもより店はすいていた。それで、O先生とは十分に親密な話ができたのだった。

Img_4500 気になっているのは、O先生のブログを見ればわかるように、卒業生たちが彼とのランチや喫茶を目指して殺到していることである。これだけの若い女性たちと会うからには、何らかの目的があるに違いないだろうとふつうは思うのだ。もちろん、年齢からして、恋愛関係は除外できるとしても、それじゃ何なのだろうか。彼女たちの親たちもきっと気にしているだろう、ということはW大卒では考えられないだろうが。Img_4499 話の中で、ある卒業生のお母様から、写真を綺麗に撮ってくださってありがとう、とお礼を言われたそうである。Img_4501 さて、会う理由は、彼の専門はライフコース論だから、その標本集めではないかということは誰にでもわかるのだが、さてその標本をどのように整理されるのか、たいへん見ものである、というようなお話をしたのだった。

Img_4502 明日からはわたしは山奥にこもって生活をするので、そのためのジャムを調達しようと、女鳥羽川沿いのいつものコンフィチュールの店「シェモモ」へ寄る。写真でわかるように、ここも改装していて、今度の店はグリーン主体の落ちついた店構えになっており、さらに店の中も、販売部門と製造部門とがガラスで隔てられている。Img_4504 フランスにある専門店をイメージしたのだとか。もちろん、ガラス戸だから双方見ることができるので、ご主人が手を休めて、調理場から出てきてくれた。Img_4528 香辛料の効いた新しい味も出ていたが、やはり定番の「バナナとイチゴ」と「ブルーベリーとレモン」をそれぞれ購入する。明日から「甘い生活」が始まる。

Img_4508_2 O先生との夏カフェは、この日差しと気温との相談の結果、喫茶店「チーアン」を最後の訪問地ということにした。この後、喫茶店MとかLとか、名前は挙がったが、ここでの二人の話が弾んだ一方、身体の方が1学期間の重労働に耐えかねていたこともあって、ここを動きたくなくなったのだ。Img_4509 もちろん、身体の事情は、わたしだけの事情で、O先生は老いて!ますます盛んで、数日前に一つの原稿の校正を終え、さらに今月中に50枚書くのだそうだ。わたしも、予定だけは今夏全部で300枚を目標に掲げているのだが、やはり身体との相談だな、と弱気なのだ。

Img_4507 なんの話が弾んだのかというと、このところここでも書いてきた「生活科学」とはどのような学問か、ということだ。じつはO先生は放送大学の同僚だったことがあり、その時の彼の担当が「生活学」だったのだ。その後、ライフコース論へ彼の関心は移っていったのだが、もしそのままずっと放送大学に彼が勤めていたならば、当然「生活科学とは何か」という、現在の論争の中心を占めなければならなかったのだ。Img_4510 それで今回、実際にこのテーマをめぐって、面白い対話ができたのはほんとうに得難いことだった。このテーマは現在の彼の関心とも決してかけ離れたものでないことも確認できて、わたしとしては夏カフェの成果を十分に感じたのだった。

Img_4514 O先生とは、中町通りで別れて、最後に寄ったのは、これも行きつけになりつつある、コーヒーの焙煎屋「ローラ」と駅前の「中島酒店」だ。すでにローラは、今日からお盆休みに入っていて、ローラのコーヒー豆はまた今度ということにして、Img_4531 中島酒店ではご推薦の新しいもので、ちょっと若い感じのワインであったのだが、長野県中野市のぶどう酒ファームのシャルドネを買う。ジャムとワインが揃ったので、当分の禁欲生活も十分に耐え忍ぶことができるのではないかと思う。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。