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2016/07/12

映画「ラスト・タンゴ」を観る

Img_4270 映画「ラスト・タンゴ」を観る。久しぶりの千葉劇場だ。ちょうど明日の教授会とコース会議に出席のため、千葉市内へ来ている。千葉駅前から、かつて父や母の看病で通ったバス「千葉大学病院」行きに乗って、中央二丁目で降り、パルコの裏道を行くと、喫茶店「呂久呂」が左側にある。

Img_4271 ランチ「具沢山の野菜スープ」と厚切りトースト、食後に自家焙煎のコーヒーを飲む。そのあと、近くのコーヒーの豆専門店で、明日のコース会議用に浅煎りの「マンデリン」を400グラム購入する。

Img_4275 アルゼンチン・タンゴがなぜ世界に広まったのか?この映画は、タンゴ革命を起こした伝説のペア、「マリア・ニエベス」と「フアン・カルロス・コペス」の愛と断絶を描いたドラマ仕立てのドキュメンタリーだ。特に、断絶以降が俄然面白くなる。なぜ喧嘩しているのに、踊りはさらに円熟していくのだろうか。ここのところで、本人たちが出演し語り、かつ、若手のダンサーたちの踊りがイメージを膨らませる映画だ。バンドネオンがパッ、パッ、パッと、切りの良いリズムを刻み、全編が進行していく。

Img_4277 マリアとフアンは、14歳と17歳で出会ってから、50年近くもペアを組んで踊り続け、世界的に有名になる。しかし、栄光の陰では何回にもわたって、愛と裏切りが繰り広げられていた。特に後半では、愛憎を芸術的なタンゴ・ダンスに昇華するところを描いていて、対立からの協調が描かれるのだ。そしてついに、1997年の日本公演の後、コンビを解消する。

Img_4276 映画の中で描かれている「テーブル上のタンゴ」という踊り方は、二人の限定された踊りを象徴しているように思われた。踊りの会場から出て、「橋の上や道路でのダンス」は、二人の開放的な踊りを表していると感じた。このような想像力溢れるダンスを見ると、なぜ50年間も踊り続けることができたのか、ということを思わずにはいられない。

Img_4273 評論家たちが指摘しているのは、前半生のペアとして、互いに愛し合って、ダンスをするときには、二人の視線が一致しているのだが、これに対して、断絶のあと、視線は合わず別のところを向いているという点だ。さらに、それにもかかわらず、踊りは良くなっていくというのは、どういうことなのか。

Img_4268 前半で、ペアとしてのパートナーシップの基本的な合意が行われてしまうと、後半で愛情のパートナーシップが失われようとも、ダンスのパートナーシップには影響を与えないということになるのだろうか。ここで、むしろ個性を限りなく発展させて、憎しみの中からでも、協調が生み出されるという逆説が生ずることになるのだ。けれども、これには肉体的・精神的な負担が相当なものであることは確かなのだ。Img_1163 最後は、フアンの現実の妻がこの状況に耐えられなくなる。二人の相互作用だけでは、世界は形成できず、三人以上の社会が支えなければ、「ペア」という関係も最後はうまくいかないのかもしれない。

Img_1164 今日の椅子は、喫茶店「呂久呂」の椅子だ。ここの曲木椅子は、年季が入っていて、座面と背中が当たる曲木の塗料が薄くなって、明るい黄色に変色している。1日数人、けれども合計すると、何万何十万人の人がこの椅子に腰掛け続けた結果なのだと思われる。木製椅子の価値は、このように地肌が出るほどに使い込まれるところにあるのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。