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2016/05/22

砧公園の世田谷美術館へ行く

Img_0812 砧公園の世田谷美術館で開かれている、「竹中工務店400年」展へ行く。東急線用賀駅から遊歩道を15分ほどたどって、砧公園へ着く。歩道の石に、百人一首が刻み込まれていて、楽しい散歩コースだ。Img_0817 竹中工務店といえば、あべのハルカス(2014)や東京ドーム(1988)などの近代建築の会社であるというイメージが現代では定着しているのだが、関係者にとっては400年の歴史というものがあって、この400年のうち近代以前の最初の250年が重要な意味を持つことがわかった展覧会だった。

Img_0819 数多くのコンクリートの近代建築が展示されているのはこの展覧会ではまったくの事実であって、それらだけでもかなりのボリュームの写真や説明があるのだが、それらの中でもコンクリート以外の建築物、とりわけ目を引いた建築物は、やはりポスターに謳われていた「棟梁精神」が前面に出た、木造建築だった。先日神戸で訪れた大工道具館の展示を思い出した。

Img_0829 全体の展覧会では、必ずしもそのことは強調されていなかったのだが、見終わると心に残るのだ。記憶の底にズシンと沈殿してきて、重く思い出されてくる建物があるのだ。都市の建築物よりも、地域の建築物にそのような建物が多いのはなぜだろうか。それらは、神社仏閣もさることながら、それ以外の木造建築物だ。中でも、1935年落成の「雲仙観光ホテル」は今回の展覧会ポスターの下の方に、設計図が載っていて強調されていたし、この建物には窓が多く取ってあり、いかにも人間を向かい入れることを思い起こさせそうな建物なのだ。

Img_0834 さらに加えて、注目したのは、2013年に作られた「大阪木材仲買会館」だった。宇宙の果てまでもギューンと伸びていきそうな、木造の庇と外廊を持ったビルなのだが、素材として耐火性の木造であるという点が特色だ。木柱の芯に石が埋め込まれて、類焼しない工夫がなされている。

Img_0836 これは、都会では、心強い仕組みということになるだろう。なぜ都市の建築物がコンクリートと鉄鋼で作られ、味気ない街になってしまったのだろうか。やはり、都市の火事は、相当に恐れられていたことの一つだと考えられる。それは、江戸時代の火消しの活躍に象徴されている。この災害対策として、わたしたちは次第に、木造建築物を排斥してきてしまったのだと考えられる。けれども、この木材仲買会館のような木造が増えていけば、解決されるだろう。心配なのは、コンクリートと比べると、極端にコストがかかっている感じのところだ。木材にこだわった結果、費用が極端に高くなってしまったのだろう。けれども、長期的に見れば、木材を生かすことの事例として、かなり意味が出てくるのだろう。

Img_0841_2 昼をとうに過ぎてしまったので、美術館のカフェで軽い昼食をとる。公園から、一段下がった、中庭がテラスになっていて、水が流れている、今日のような夏日には、見た目で涼しい。

今日の椅子は、これまで何回も取り上げようとして、うまくいかなかったウェグナーのYチェアだ。柱と笠木の曲木が綺麗で、全体として、ぷっくりとまとまっているところが、自然さを示している。Img_0844 けれども、ほとんどの部材がかなりのロット生産で作られており、大量とまではいかないが、量産可能な椅子として、しかしながら、手作りの趣を残している木製椅子の代名詞的な椅子だ。

座ってみると、ペーパーコードの座面が心地よく、左右への身体の揺れに自由度があるところがたいへん良いのだ。Img_0845 今回の世田谷美術館のレストランの常備椅子として、数十のYチェアが使われていて、Yチェアがパレードを行っているようだ。待合の廊下にも、長椅子とともに使われており、ちょっと休憩というときに良いのだ。ガラスが大きく取ってある廊下でYチェアに座って、庭に置かれた不思議な彫刻を眺めながら、しばし展覧会を思い出していたのだった。Img_0842

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。