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2016/05/12

子供椅子とウィンザーチェアを観る

Img_3636 「松本民芸生活館」を観せていただく。この施設は故池田三四郎氏が、昭和40年代に富山からの建物を二棟合築して建てられたものだ。職人修行の場として造られたものであって、家の梁が大きく、いかにも豊かな富山の名家の建物だというもので、信州にはこのような大きな古民家はあまりない。現在は、道場としての使用もなく、非公開の施設となっている。

Img_3633 この非公開の椅子には「椅子とは何か」ということを考えさせられる名品が詰まっている。このことについては、三四郎氏の著書「三四郎の椅子」にまとめられている。今回は、松本民芸家具の社長であり、館長のI氏(三四郎氏の孫にあたる)の案内で訪れたのだ。そして、いつもお世話になっている、グレイン・ノートのS氏と、当授業科目の主任講師であるS先生、それからビデオ収録のチーム(放送大学とNHKエデュケーショナルの、さらにカメラマンと録音技師)の方々が同行してくださった。松本市の神田にある。

この辺はじつはこの施設が移築されてくる前は、まだ田んぼと電気工場だけの場所だったところで、わたしは小学校時代によく友達と共に、自転車で駆け巡っていたところだ。この北へ行ったところに、千鹿頭という池があって、ちょっとお弁当を持ってハイキングを行うには最適な場所だったところだ。その頃には、まだこの施設はなかった。

Img_3599_2 一つ一つ椅子を見ていきたい気分だったのだが、目的は椅子の「色と形」に集中しなければならない。思いの外、緊張していたらしく、それは珍しくはないのだが、NGを何回も出してしまった。二つ目的があって、一つは子ども椅子の回についての収録と、もう一つはウィンザーチェアの「色と形」についての取材収録だった。

Img_3600 あまりに多くの名品揃いで、全部お話できないのが残念なくらいだ。収録し残した椅子たちに、今後生きているうちに、もう一度会うことはできるだろうか。収録した中でも幾つかの印象に残っている椅子がある。例えば、カナダの子ども椅子は、子ども椅子としての始原性を残しているばかりでなく、ウィンザーチェアとしての始原性を表していて、たいへん興味深いものだった。

Img_3598_2 この子ども椅子の基本は座面にあった。分厚い座板がゴロンと存在していて、そこに脚がついたり、背板がついたりするのだった。この椅子を見ていると、椅子の一つの始原が地面からちょっと隔てた座板にあることがわかる。椅子というものは、つまり座るということは、地面と人間との関係性だということだ。なぜこの座板が分厚いのか、ということは、地面から浮遊させる必要があったというばかりでなく、脚を支えるだけの厚さが必要だったということであったのだ。制作上の必要がのちのち加わってくるのだが、その必然性を象徴している。

Img_3605_2 グレイン・ノートのSさんは、英国の古いウィンザー調の子ども椅子を特に注目し取り上げていた。ウィンザーチェアの特徴は、やはり座面がしっかりしていて、それに脚とスピンドルがついたという構造を示している。したがって、やはり座面の分厚い子ども椅子を発達させているのだというのだ。けれども、英国の子ども椅子では、細心の注意が行われていて、この分厚さをさりげなく隠すために、座面の前部が斜めに切り取られて、厚さを感じさせない工夫がなされている。このような細かいところの配慮は、Sさんのように常に椅子を作っている方にとっては、制作者としては気になるところらしい。

もう一つだけ紹介すると、この生活館には、ウィンザーチェアのプロトタイプ(原型)がある。館長のI氏による詳細な説明が行われた。この模様は、来年から始まる放送大学総合科目「色と形を探究する」で放映するので、ぜひご覧になっていただいきたい。まだ、だいぶ後の話で恐縮だが。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。