« 九州の喫茶店を歩く | トップページ | 真田時代の用水を見る »

2016/03/10

「社会と産業」コースの合宿

Img_3677 毎年恒例となっている、「社会と産業」コースの先生方の合宿が行われた。群馬のみなかみ町にある、KW先生の親戚が経営なさっている湯宿温泉「湯本館」で、午後から重要な会議、その後、D先生とM先生の送別会、K先生の歓迎会となった。Img_3764 もちろん、会議などは放送大学の仕事なので、当然大学が費用を補助してくれるのだろうと、大方は思うだろうが、一切そのようなことはなく、全部私費参加であり、心置きなく楽しむことができるというシステムだ。D先生とM先生のお別れの言葉も、たいへん楽しいものだった。別れの時こそ、人が懐かしく思える。

Img_3627 また、これも恒例となった三国街道の須川宿資料館での資料見学も、待ち合わせたわけではないのだが、H先生と一緒になって、今年も学芸員の方のお話を伺うことになった。宿場の真ん中に用水が通っていたという江戸期の古地図を何枚も比較して見せていただいた。「なぜこの宿場の街道には、用水が真ん中に一本だけ通っていたのか」という謎に、ここ数年取り組んでいるのだ。

Img_3608 今年新たに加わった知識としては、じつはこの毎年話題にしていた、用水がいまNHKの大河ドラマ「真田丸」で有名になっている、沼田真田家の統治時代に作られたという事実がわかったのだ。江戸時代の初期には、このみなかみ町も沼田城主であった真田家が治めていた。第5代当主の真田伊賀守の時代に、この道の真ん中を通る用水が当時の最新技術で作られたのだそうだ。たとえば、水が山の登り坂を遡る技術が、この台地に入ってくる「押野用水」で使われているらしい。幕府あるいは真田の中に、かなりの治水技術の蓄積が進んでいたのだ。

Img_3629 なぜこのような用水の技術が発達したのかが重要なのだ。沼田藩には、河岸段丘が多くあり、その下を流れる川には豊富な水があるのだが、河岸段丘の上には当然水がないのだ。この段丘の上に灌漑用水を通すなどの治水事業がうまくいけば、農業が盛んになり豊かになるという時代を迎えていた。だから、江戸時代には、この地方にいくつかの有名な用水が作られており、須川宿の用水も、この典型例であったということになる。

Img_3612 今回の資料館の展示物のメインが、じつは当時の「検地帳」であった。学芸員の方の説明の中で、年貢の話が出てきて、ちょうどこの時代に用水ができて、収穫が増加したと考えられるのだが、同時に、年貢の元になる検地が見直され、それまでこの地域の石高は3万石だったのが、一挙に約14万石に変えられたということであり、年貢が4倍以上になったという過酷な状況が生じたことになるとのことだった。いくら用水が開通したからといって、収穫が4倍になるというのは考え難いところだ。Img_3613_2 このころ、百姓一揆や直訴が行われたという資料が数多くあるらしい。隣村である月夜野村での伝説的な「磔茂左衛門」のこともある。その後、真田が改易になった時、約6万石に評価が変更になって、統治が落ち着いたということだ。Img_3701 段丘の農地、用水の整備、生産性向上、年貢の評価などが、一直線上に並んで結びついたという面白さが、今年見られたのだ。これらのことは、KW先生からいただいた「歴史的農業用水」資料で確認されている。

Img_3734 H先生は環境から見る建築学がご専門なので、年貢のことよりも、この用水が宿場でも使われ、さらに農業用水でも使われ、地域環境全体を見る視点を与えてくれることに、興味を示していた。まだまだ、発展の可能性のある須川宿の「用水論」であることがわかったのだ。

Img_3697 ところで、今回KW先生から歴史資料を頂いたので、かえっていろいろな疑問がわいてきてしまったのだ。たとえば、須川宿と、東峯須川村と西峯須川村との間には、なんとなく齟齬があって、最初に1660年代に須川地区が主導権を持って、用水工事を進めようとしていたのだが、途中からそれが中止になって、村側からの「押野用水」が再開されたという事件も不思議なのだ。さらに謎なのは、村側からの技術者が幕府の関係する技術者であったらしい。Img_3692 すでに真田には、沼田の河岸段丘への灌漑用水建設で、1世紀以上前から用水技術が蓄積されていたのであるが、それにもかかわらず、幕府からの技術者が呼ばれている。想像でしかないのだが、真田側と幕府側の駆け引きがかなりあったのではと勘ぐってしまう。Img_3695 さらに、20年後に真田がこの地区の年貢の過酷な取り立てで、改易になることにまで、この出来事は続いているような気がするのだ。一大歴史ロマンを最大に広げてしまったのだったのだ。

« 九州の喫茶店を歩く | トップページ | 真田時代の用水を見る »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/63340358

この記事へのトラックバック一覧です: 「社会と産業」コースの合宿:

« 九州の喫茶店を歩く | トップページ | 真田時代の用水を見る »

『貨幣・勤労・代理人』(経済文明論)

  • “「貨幣・勤労・代理人」"

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。