« 温泉尽くしの旅 | トップページ | 「社会と産業」コースの合宿 »

2016/03/05

九州の喫茶店を歩く

Img_0670 妻の申し込んだ今回の九州温泉ツアーには、オプションと称する追加旅行がたくさん付いている。それは、参加者の満足と利便性を高めるために付いているのだが、怠け者を自認するわたしのようなものにとっては、このようなオプション旅行が多ければ多いほど、その時間を利用しての自由時間の余裕がそれぞれ1時間ほど増えて、たいへん喜ばしいのだ。Img_3276 大ツアーに応じておいて、小ツアーを避けるというのは、たいへん矛盾しているのだが、今回はそれが良い方へ転回したのだった。自由時間の主たる狙いと定めたのは、喫茶店巡りだ。

三つの喫茶店へ寄ることができた。とりわけ、シリーズとなっている椅子の採集にはたいへん役立ったのだった。Img_3364 初めての土地で、しかも初見で良い喫茶店かどうかを見分けるのは、かなり難しいのだが、今回はハズレがなかったということでも良い旅行に行ってきたと思うのだった。

Img_3431 このところ探っているのが、喫茶店の「部屋を先に作ったのか、それとも、椅子を先に作ったのか」論争であるのだが、いくつかの結論に近いものが出てきそうになりつつある。一つ目の喫茶店では部屋が先だった。二つ目の喫茶店では椅子が先だった。三つ目は以前からのものを受け継いだ喫茶店だった。これらに共通していることは、どのようなことだろうか。

Img_0680 旅行の1日目には、泊まりは別府だったのだが、そこへ行く前に福岡空港から湯布院の街へ回った。この湯布院という観光地にはランドマークとなるような、有名な金鱗湖という湖があって、その周りに喫茶店が集中している。Img_0681_2 みやげ物屋から少し離れてゆったりとした地域なのだろうか。湖水に面した喫茶店で、観光客が吸い込まれるように入っていく「S」という店があって、絵画なども展示していて、見るからにリゾート地の喫茶店風をしていたが、当然のようにして、その前をパスした。このようなところでは、地元客が行くような、目立たなくしかし自信を持ってずっと続いているような店を探すことにしている。「S」を出て、さらに寂しい道を一本入ったところに喫茶店「キャラバン」を見つけた。

Img_0682 二軒が横に並んでいて、どちらかにたくさんの客が入るのであれば、それなりの理由があるのだ。けれども、二軒が前後に並んでいて、前にたくさん入るのは当然で、むしろ後ろにあってずっと店を継続している方に、敬意を持つことにしている。

Img_0686 キャラバンのご主人は、数年前に博多の店をたたんで、湯布院へ移ってきたそうだ。その時に、この店を建具大工ではなく、建築大工屋に任せたそうなのだ。そこで出来上がったのが、そば屋さん風のカウンターであったと嘆いていらっしゃった。その大工さんはそば屋を作ったことがあるのだが、喫茶店を作ったことがなかったのだそうだ。なるほどなるほど、カウンターの板を見ると、縦に細い板が隙間をとって並べられている。一枚板のカウンターという喫茶店の常識から逸脱しているのがわかる。Img_0683 さらに、このカウンターを眺めた目で見ると、その脇の作り付けのテーブルとベンチも、なんとなく居酒屋さん風に見えてくるから不思議だ。木造りが良いと注文したらしいのだが、その木造りが和風であったのを知るのは、できた後だったらしい。

Img_3405 それで、ご主人は急遽テーブルと椅子をカナダから取り寄せたり、コーヒーカップをたくさん並べたりして、現在の喫茶店のインテリアを調整したのだ、とのことだった。最初の和風を消すことに、かなりの労力をつぎ込んだことがわかる作りの喫茶店だった。つまりは、部屋が出来て、それに合わせて普通は椅子とテーブルが選ばれるのだが、そうではなく、部屋の趣向を打ち消すために椅子とテーブルが選ばれたという、たいへん面白い事例だったのだ。

Img_3380 時間がなかったので、コーヒーを淹れながら、お話を聞いたのだが、深煎りのコロンビア・グアテマラ・浅煎りのモカなどのブレンドで、旅行にあっても、時々このような美味しいコーヒーに出会えるならば本当に言うことはない。

Img_3389 二つ目の喫茶店は、「雲仙温泉」へ移動する最中に立ち寄った長崎駅近くの「ROUTE」だ。これもオプション旅行に加わらず、余裕ができたために可能になった喫茶店訪問だ。妻が舟越保武の「二十六聖人殉教碑」を見たいということで、西坂公園に行ったのだ。Img_3394 そこで公園のベンチに座って、ゆったりと碑を眺めたのだった。戦国時代から江戸時代、さらに昭和時代から平成時代へ、と空の青さがつないでいたのだった。

妻が買い物へ行ったので、公園から街を見下ろしていたら、近くのビルに、「ROUTE」の看板が見えた。Img_3403 2年ほど前にできた喫茶店で、さらに近年には3階に宿泊所と1階にレンタル自転車の店が併設されている、複合的喫茶店だ。気安く入りやすい雰囲気が素敵だった。

木の椅子やテーブルやさらに内装が良かったので褒めると、店主がこのビルの内装を請け負った工務店の絵葉書のような、パンフレットを持ってきてくださった。Img_3400 そこには、この店の改装の様子が載っていたのだが、さらに目を惹いたのが、フィンランドの建築家アアルトのサマーハウスの記事だった。建築家が椅子作りの名手である例には、後を絶たないほどたくさんあるのだが、中でも、アアルトの合板作りの椅子は有名で、今回のわたしのテキストでも取り上げさせてもらっていた。Img_3595 このパンフレットのサマーハウスの中にも、それらの椅子を見ることができたのだった。つまりは、家に合わせて、椅子が作られ、椅子に合わせて家が作られたのが、アアルトのサマーハウスなのだ。

 

Img_3408 もちろん、喫茶店「ROUTE」の椅子も素敵で、窓際の二つの個性的な家庭椅子がまずあって、それに合わせるようにして、部屋が作られ、さらにテーブルと他の椅子が加えられて行ったのだとおっしゃった。この居心地の良さは、これらの椅子への気遣いに現れていると思われる。Img_3409 この喫茶店には、いろいろの種類の椅子が配置されていて、カウンターには高いスツール、窓際にはスペイン風の椅子で座面を張り替えられたもの、さらにわたしの座った曲木の椅子、そして奥には大勢座れるソファと大きなテーブルがある。多様な座り方ができ、どのような組み合わせでもできるように配置されていたのだった。

Img_3410 Img_3412

Img_3414

Img_3407 Img_3404 Img_3401

Img_3532

 

Img_3411_2

三つ目の喫茶店は、最終日の佐賀空港へ向かう途中に立ち寄った太宰府の街の喫茶店だった。ツアーなので、太宰府天満宮まではみんなと一緒に行かねばならない。けれども、その後の昼食は各自とることになっていたので、九州国立博物館から公園を降りて、賑やかな山門通りから少し離れた光明禅寺の裏通りに、木工の喫茶店があったのを思い出して行ってみた。出張で一度来たことがあるのだ。けれども、この喫茶店はコーヒーだけだったので、子ども椅子など見学させてもらって、すぐに退散した。そして表へ出ると、すぐに三つ目の喫茶店「GOKAKU」が見えた。

Img_3580 GOKAKUには、太宰府の「合格」祈願の意味と、太宰府にちなんだ梅の花の「五角」の意味とがあるとのことだった。ここの野菜カレーを注文したのだった。カレー・ルーにはたくさんのスパイスが入っていてコクがあった。野菜がそれぞれ姿のわかるように大きく裁断されていて、それをオリーブオイルでさっと揚げてある。Img_3581 野菜の好きな人であれば、きっと来たくなるような喫茶店だ。山門の方は観光客であふれかえっている。とりわけ、近年は中国や韓国からの観光客が多く、道が混雑で歩けないほどだ。それに比べて、こちらの博物館へ通ずる道は静かで穏やかな住宅街を通っていて、散歩コースとしてオススメだ。

Img_3582 この喫茶店の椅子は、カリモク系のシンプルなものだ。けれども、それらは部屋にあっている。部屋自体が白い壁に、明るい木製の床だからだ。奥の大きなテーブルだけは、家から持ってきたとおっしゃっていたが、この辺が全体の調和とはちょっと違っていて、オーナーからの受け継ぎがあって、その後の自分の調整が始まろうとなさっているのかな、ということを感じさせたのだった。

Img_3310 さて、今日の椅子はどれにしようかな。たくさん候補がある中で、阿蘇の温泉場で、客との間で裸の付き合いを長らく行ってきた木製スツールを取り上げることにしよう。真ん中に穴が空いている特徴を持っていて、温泉から上がっても、濡れたままでこの椅子に座ることを想定しており、しっかりした作りを見せている。いままで何人の温泉客が、濡れたお尻でこの椅子に腰掛けたことだろうか。

Img_3319

« 温泉尽くしの旅 | トップページ | 「社会と産業」コースの合宿 »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/63314143

この記事へのトラックバック一覧です: 九州の喫茶店を歩く:

« 温泉尽くしの旅 | トップページ | 「社会と産業」コースの合宿 »

『貨幣・勤労・代理人』(経済文明論)

  • “「貨幣・勤労・代理人」"

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。