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2016/02/02

映画「眺めのいい部屋売ります」を観る

Img_0663 映画「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります(原題:Heroic Measures)」を観る。原題のHeroic Measuresは、大胆な手段という意味だ。どのような大胆な手段なのか、といえば、結婚以降の人生40年にして、初めてこれまで住んできた「眺めのいい部屋を売り出す」という決断だ。この映画の冒頭で、名老優モーガン・フリーマン演じる画家のアレクッスと、これも名女優のダイアン・キートン演じる元教師のルースが、この決断を行うところから、この物語が始まる。

この映画には見せ場がある。ニューヨークという世界の中心たるところのマンションがどのように売りに出され、どのようなシステムで取引が実際に行われるのかという興味津々なテーマが展開されるところだ。9千万円から1億円くらいの部屋の話だが、仲介にブローカーが入って、入札が行われ、内覧会が開催され、そして値段がつりあがっていく。そこに「普通の人」である主人公アレックスがあたかも「悪魔の碾き臼」へハマったがごとくに日常が失われることになるのだ。

Img_0661 じつを言えば、わたし自身が現在同様な状況にあるので、すっかり思い入れをしてしまったのだ。もっとも、ニューヨークの場合と違って、わたしの受け継いだ母のマンションはずっと価格は低いので、気が狂うほどでないのはなんとも寂しいところであるのだが。

問題は歳をとると、エレベーターのない部屋から移らなければならないために、いつもこのような状況に投げ込まれ、「眺めのいい部屋」という好ましい状況を手放さなければならないことが、ニューヨークでは起こってきてしまうということである。古ければ古いほどなお良いというヨーロッパ的な価値観がなかなか貫けないところがアメリカ的であるというところなのかもしれない。もちろん、ニューヨークだけが特別なのではなく、どこででも起こっていることであって、現在のわたしの状況からも見えてくるのであるのだが。わたしが巻き込まれている街にも、エレベーターのない旧住宅公団の団地があって、かなりの中古であるにもかかわらず、エレベーターのある母のマンションへの引越し願望と需要とが結構あるのだそうだ。

Img_0660 それで考えたのであるが、結局のところ、自分にとって「最後に住みたいと思う街」はどのような街なのか、ということが日常生活では大切なことなのだ。人間は歳をとると保守的になると言われるが、まさに住む場所こそ、保守的な態度の発揮されるところに違いないのだ。少なくとも、この映画はそう主張しているように思えた。ニューヨークの真ん中でも可能ならば、日本のこちらの街でもきっとこの思いは可能だと思われるのだ。ニューヨークはやはり金融中心の資本主義の権化とみなされてしまう街なのだが、この映画に見るように、必ずしもそれが貫徹できるわけではないのだというところで救われる。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。