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2015/11/12

若林奮展を観に、葉山へいく

Img_2204 彫刻の「若林奮」展が、葉山の県立近代美術館で開催されているというので、午後2時頃には仕事を閉じて、雨が降り出しそうな中を歩いて、京浜急行電車へ乗る。逗子駅からのバスが、10秒も待たずに来たので、家から30分くらいで葉山海岸の三ヶ丘にある美術館へ着いた。Img_2164 横須賀美術館とこの葉山の美術館は、家からも近いし、さらにちょっと離れたところに来たという感覚を満足させてくれるので、最も多く来ている美術館だ。

Img_2172 若林奮の作品は、2年前に横須賀美術館で開かれていた「父、若林奮」展で知った。このときも娘のために、というよりは、娘との距離を測るために、といった方が適当かもしれないが、ドールハウスや、童話を題材にした親しみやすい作品が並んでいた。けれども、今回の展覧会とは、全く印象が異なった。

Img_2211 今回のテーマは、「飛葉と振動」ということになっていて、人と自然の中間にある「尺」というものを問題にする展覧会となっている。本来の鉄の彫刻を中心として、小さなものから大きなものまで、ざっと4部屋にわたって展開されていた。一つのテーマが設定されると、1、2から数年は同じテーマが追求されるらしい。それで、そのテーマをめぐって、様々な作品群が生み出されていくから、一つのテーマ全体を見るのもたいへんな量の作品を見なければならない。

Img_2183 中心となる「振動尺」シリーズ、社会を考える者には刺激的な「所有・雰囲気・振動」シリーズ、「大気の中の緑色に属するもの」シリーズ、「クロバエ」シリーズ、「100線」シリーズ、庭シリーズ、「緑の森の一角獣」シリーズ、「Daisy」シリーズ、「4個の鉄に囲まれた優雅な樹々」、「多すぎるか、少なすぎるか?」シリーズ、「飛葉と振動」シリーズなどなどが並ぶ。

Img_2180 見なければならない、とは言ったものの、じつは表に現れない事象を実際のテーマにしているから、見えないものの方を見なければならないという展覧会なのだ。入館して、最初に出会うのが、初期に有名になった「泳ぐ犬」である。木片から、顔だけを出した、埋もれた犬が見える。そして、その前には、なぜか窪みが作られている。この作品を見れば、この見えない部分が重要で、なぜ見えないのかを制作者も観覧者の意識してしまうことになる。同じような作品「犬から出る水蒸気」なども、蒸気となったものが、何と鉄で表現されているというイメージの逆転が生じている。制作者と相手との間にある中間のものが、鉄という、表現するには使いにくい素材で表現されているところが面白いのだ。若林にとって、鉄は、目には見えないものを表現出来る、重要な言葉なのだ。

Img_2209 ドローイングも数多く出品されていた。とりわけ、ブルーのぼんやりした、曖昧なもの、それは葉っぱであったり、ドアであったりなどの「Blue Daisy」シリーズは綺麗だった。水などの「ブルー」ということに、特別な感性を示す人なのだと思った。水を使った幾つかの庭などの野外彫刻が意外にシンプルなので、自然に対する作者の考え方が現れていた。自然は対立するものでなく、相手なのだ、というところが興味深かった。

Img_2192 後期の「雰囲気」が印象に残った。「所有・雰囲気・振動」シリーズですでに追求された「自分・相手・鉄」がより内面深く、表現されていた。振動部分が四角い囲いで覆われていて、相手の振動部分には黒い穴が描かれており、理解不能な部分として表わされていた。さらに、「振動する飛葉」が自分と相手を媒介するという、素敵な空間を表現していた。

Img_2182 展覧会を出て、正面玄関の脇にやはり野外彫刻の「地表面の耐久性について」が埋め込まれていた。これも「見えない」シリーズなのだろう。表面に現れているものだけからは、およそ想像できないものが、きっと埋められているのだろう、と想像させられる彫刻だ。

Img_2171 今日の椅子は、美術館のベンチだ。一つはガラスで覆われた部屋に置かれた白いソファーで、観覧者が展覧会をめぐって疲れ、ここですっぽりと包み込まれるように休息するものだ。Img_2184 もう一つは、野外に置かれていて、ここでずっと本でも読んでいたいと思わせるベンチだ。

 

Img_2189 このベンチの前を通って、いつもの小道を抜けると、目の前にもう冬に突入した白い海岸が現れた。マフラーを持ってこなかったことを後悔させるような風を、潮騒が運んできた。Img_2174_2

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。