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2015/10/18

「クラフトピクニック」で椅子を作る

Img_2757_2 クラフトピクニックの第2日目。朝、大糸線が遅れた。ゆっくりと珈琲を飲んでから、会場の「あがたの森」へ向かうつもりだったのだが、約束の10時にギリギリだったので、子どもの頃通った道を駆けるようにして、公園に入る。すると、中央の芝生を挟んで、抜けるような青空が広がっていた。昔、やはりここで見た風景だ。ただ無限の縮尺がちょっと縮まっただけだ。

20151025_204920 早速、S氏のテント「スツールをつくろう!」を目指す。ピクニックの醍醐味は、子どものように溢れる好奇心を持って、「作る」ことに徹することだ。20151025_205028 それで、S氏に頼んで、予約の入っていない時間を狙って、つまりは朝一番に、わたしの椅子を一緒に作ってもらうことにしたのだった。中学校以来の図工の時間が到来した。

20151025_204611 まず、S氏がすでに素材加工した、組み立てのための座板と3本の脚を選ぶ。今回、S氏は3種類のキットを用意していた。脚の長い丸い3本脚スツール。おむすび型した低いスツール。そして、楕円形の4本脚の低いスツールだ。20151025_204135 このおむすび型には、歴史があって、S氏の説明によれば、シェーカータイプのミルキング・スツールという伝統的な形を継承しているスツールだ。米国のシェーカー教徒が使っていたのは、取っ手のついた三角スツールだった。20151025_204203 それでは、スタッキング(積み重ね)できないので、S氏が穴を開けて取っ手の代わりの穴あきスツールを作った。写真の端に映っているものだ。ところが、穴を開けるのには、かなりの手間がかかってしまうので、半分まで穴を掘った、この「おむすび型スツール」が登場したのだった。

20151025_202818 座板は、色を意識して選んだ。後で赤い色が浮かんでくるようなサクラ材だ。そして、脚は白い素材のクリ材だ。まず、座板に開けられた穴に、ボンドを注入する。20151025_202922 よく見ると、穴は簡単に開いているように見えるが、この穴の方向が重要で、結局は座板と脚とをほどよく結んでいる。このような素人の手の入らないところに、S氏たち玄人の苦労が詰まっているのを感じるのだった。もちろん、ボンドの液を使いすぎてしまうところにも、注意が必要だ。このようなところでうまく節約できるかが、職人技という本能的な部分なのだと思った。

20151025_203311_2 脚が簡単に抜けてしまわないように、座板に突き刺した脚の先を割って、そこに楔を打ち込む。ローズナット材の硬い素材でできている。これを玄能で打つのだが、この時の思い切りがどの程度なのか、さらにどのような音を木が発するのか、確かめながら進む。ドン、タン、キーンと、椅子が答える音がする。音が変わったら、打ち止め。


20151025_203417 そして、座板から出ている、楔付きの脚の根元を、座板に平らになるようにノコギリで切る。さて、この感触も懐かしい。無理に力を入れない、入れないと念じているのだが、手は言うことを聞かない。20151025_203523 座板を傷つけてしまうと、S氏が特別製の鉋で修正してくださるが、幸いなことにわたしの場合には、サンドペーパーで十分だった。

20151025_203630_2 昨日、他の方が実習するのをじっくりと見ていたので、頭ではなんとかイメージできるのだが、文章と同じように、なかなか手が頭の命令に素直には応じないのだ。最後に、難関が待っていた。昨日は難しいところは、S氏が「やりましょう」、と言って、やってくださっていた。20151025_203740_3 それはもしかしたら、女性だったから親切だったのかもしれない。最後のノコギリの工程は、3本の脚を揃える作業だった。ここで間違えると、椅子なので、ガタツキの原因になってしまう。この脚をいかに揃えるのか、と頭で考えていても、わからない。結局は、目と手とノコギリを合わせるより仕方ないのだった。

20151025_203842 仕上げは、自然素材でできた油を脚と座板に塗った。すると、魔法のように、素材の木そのものだったものが、急に椅子に変換されたのだった。20151025_203953 目の前で塗るごとに生き返る木の色の変化に感動したのだった。完成!みんな拍手。ボンドを塗るごとに、木を差し込むたびごとに、玄能を振りかざすたびごとに、ノコギリを引くごとに、ヤスリで表面を撫でるごとに、油を塗るごとに、形が整えられていく。20151025_204038_2 手を加えることが、自分のものであることの確証だ、と言った啓蒙思想家の言葉に共感するのだった。

Img_2769 S氏と別れて、道なりに進むと橋のそばに、松本へ来るたびにいつも寄るコンフィチュール屋さんのM氏が安楽椅子にどっかりと座っていた。Img_2771 自分用のジャムがちょうど欲しかったので、コンフィチュール作りの実習を受けることにする。ギャラリーも集まってきて、楽しめる実習になりそうだった。


好きな果物を2、3種類選ぶことになっていた。Img_2774_2 りんごの季節なので、紅玉。松本の友人の家になっていたな、と昔を思い出し、イチジク。約200グラムを形あるくらいに切り刻む。

Img_2777 そして、ちょうど半分くらいの砂糖を入れ、強火にかける。程なくして、ふつふつとシロップが泡を吹き出す。火を消すタイミングが大事なのだ、とM氏は言って、「どうです」と、頃合いを見定めて、出来上がりだ。容器に入れて、洒落たラベルと蓋を油紙で包んで渡してくれた。Img_2779 ここには、170グラムが入って、残りはどうしたのか。ギャラリーに大学生たちがいて、目が輝いていたので、それをほっておくほど野暮ではない。 M氏がパンをとりだして、みんなに残りを振舞ってくれた。Img_2778_2 自分で作ったものほど、美味しいものはない。甘いものが口から喉へ達するのを感じ、思いがけず自分の中に沸いた製作者本能を鎮めながら、「あがたの森」から退散したのだった。Img_2763_2 Img_2714

 

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。