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2015/10/31

ル・コルビュジェ展へ行く

Img_0532 湯島にある建築学資料館で、「ル・コルビュジェ」展が開催されていると、娘から誘いがあった。近くにランチの美味しい店もありそうだというので、いそいそと出かける。

Img_0527 「カツオのたたき」の前菜が出て、「シラスとねぎのトマトソース・パスタ」のランチだった。和風の食材を使っているが、味はかなりイタリアンであった。ワインを飲んで、ゆっくりとおしゃべりするような、店の雰囲気だったが、展覧会が待っている。

Img_0530 この資料館へは、コルビュジェの弟子である「坂倉準三」展覧会の時にも来ている。平日は無料で入れるのだが、土日は岩崎邸から回り込んで入るので、入場料を取られる。けれども、最近盛んに利用させてもらっているシニア料金なので、娘の半額だ。それに、この資料館は立派なカタログをいつも編んでいて、無料で配っていて、記憶を辿るのに便利なのだ。建築の設計図などは、覚えておく糸口がないので、このように写真の載ったカタログでいただけるとやはりたいへんありがたい。

Img_0529 展示の中で、目立ったのは国立西洋美術館の建築だ。日本における唯一のコルビュジェ作品だということになっている。そして、この建物をめぐるCG作品と組み合わせてみると、何度も通っている西洋美術館の成り立ちがよく理解できるようになっている。高床式の縦のラインと横のラインが直線になっていて、モダニズムの特徴を表している。さらに、ピロティがあって、それをめぐる回廊がコルビュジェの特徴となっている。ちょうど上から見ると、明り取りが四角を描いて綺麗に並んでいて、美術館の採光が効率よく考えられていることがわかる。冒頭に掲げた今回のポスターにもそれが描かれている。

Img_0540 湯島に出たついでに、千駄木まで散歩しようということになって、まずは根津神社に向かう。そこから、日本医科大のはずれにある旧夏目漱石邸(通称、猫の家)の前を通る。現在は明治村に移築されているが、ここで「吾輩は猫である」が書かれたらしい。Img_0543 そして、突き当たりの団子坂に出る。このなだらかな坂を山手から下町へ下る途中に、森鴎外の観潮楼があり、現在は文京区立の「鴎外記念館」になっている。コンクリートに薄い色のタイルを敷き詰めた、モダンで洒落た文学館だ。閉館時間までにまだ十分に見る余裕があったので、ちょうど開催されていた「ドクトル・リンタロウ 医学者としての鴎外」展を観る。これが予想外に面白かった。

Img_0544 たとえば、鴎外は軍医だったので、公衆衛生の本を書いていて、『衛生学大意』が展示されていた。脚気論争では残念ながら間違ってしまったらしいが、大掴みの原理的表現には見るべきものがある。最初のところに、衛生学とは「一言で言えば、人の健康を図る経済学のようなものである。體の外に在るものを體の中に入れ、又體の中にある物を外へ出すに當って、その釣合を取って健康と言う態度の損なわれないように努める法を研究するのである。Img_0545 たとえば、人が息をすると言うは清い空気を外から體へ入れ、その代りに汚れた空気を體から外へ出すことである」と言っており、のちの行動主義的な観点を先取りして面白い。また、『文芸の主義』も展覧会で取り上げられていて、「芸術に主義というものは本来ないと思う。芸術そのものが一の大なる主義である」と論じ始め、自由な芸術のあり方を説いている。そして、最後に「学問の自由研究と芸術の自由発展とを妨げる国は栄えるはずがない」と結んでいて、当時の時代を描写している。

Img_0546 ビデオコーナーでは、森まゆみ、加賀乙彦、安野光雅、平野啓一郎などの鴎外論も見られるのだ。夕暮れ時にもかかわらず、ノート片手にじっくりと鴎外を鑑賞する人びとで溢れていた。なぜか男性の来館者が目立ったのも、近年見ない風景だと感心したのだった。文学館と言うと、女性ばかりという印象を持っていたのだが、それを変えなければならないと思ったのだった。

Img_0547 娘が本郷に住んでいた時に、散歩でよく行った喫茶店があるというので、ちょっと早めの夕飯を食べようと連れて行ってもらう。千駄木のよみせ通りから裏道に入って、岡倉天心の旧日本美術院跡のすぐ前に出たところにある「H」荘という古民家を改装した喫茶店だ。野菜たっぷりのご飯とビールをとる。娘は休日になると、ここに陣取ってよく仕事をしたらしい。最近は、このように長居できる喫茶店が本当に少なくなってしまった。

Img_0549 という話をしていたら、それじゃ長居できる喫茶店をもう一軒行こうということになって、千駄木から千代田線に乗って、表参道に回ったのだった。今日最後の珈琲は、駅からほどない2階に、かなり昔からある喫茶店「L」にて、ガトーショコラと苦味の珈琲を一杯飲んで帰路に着いたのだった。今日の椅子として、この喫茶店の年季の入った木製の無骨な感じの椅子を写真に撮ろうとしたら、電池が消耗していて、残念ながら写真はなしだ。Img_0551 けれども、背板のバーがすり減って、いかにも使い込まれた木の肌を見せていて、テーブルの分厚い板とよく調合していたのだった。Img_0552 長居したいと思わせるモノというものがあるのだと思った。家庭の椅子が使い込まれていて、その家に付いているのと同じように。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。