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2015/08/08

呑み歩き街道を行く

Img_1082 午前中、学習センターでの授業で学生から集めたレポートを宿舎でまとめる。面接授業の中では、それぞれのレポート内容を個々に発表してもらったが、それら全員の傾向をまとめ、何らかの形で伝えたいと考えている。

Photo すこし詳細な話になるのだが、授業ではいつもは、厚生労働省のデータを使って、「集団の中でどれくらいの人びとが経済目的で働いているのか」、という集団の問題として扱うことにしている。Photo_2 けれども、やはりデータとしては、個人が自分の中で、「どのくらいの比重で働く目的を設定しているのか」を知りたいと思うのだ。それで、今回は主観的であるという制約はあるものの、「自分にとって、働く目的はどのような比率で生じているのか」ということについて、年代ごとに答えてもらった。Photo_3 若い人の将来の労働目的については、予想という形で問うたのだった。その結果は、以下のとおりであった。労働の経済目的は若い時には高いが次第に低下する。技能目的も若い時には意欲的だが、次第に低下する。これらに対して、出世や社会貢献などの功績目的は次第に高まり、さらに、生きがい目的は老年層になって、うなぎ登り上昇することがわかった。Photo_4 これは、ほぼ集団の示す年代ごとの結果と同じであり、今回少人数のデータであるが、行ってみてすっきりしたのだった。

Img_1085 さて、3年前まで面接授業が終わる夜には、諏訪に住んでいた伯父さんといつも一緒に、鰻屋Fへ行っていたのだが、伯父さんが亡くなってからは寂しい状態が続いていた。今回は、午後には、横浜から来る娘と落ち合って、この鰻屋へ久しぶりに入ることにした。今日も日差しが強く、肌がじりじりと焼けてくる。鰻屋へ入るまえにちょっと散歩というわけでもないのだが、諏訪湖畔をゆったりと歩く。昨日までの夕暮れの湖畔とは、かなり趣が違っている。

Img_1086 土曜日であることと、夏休みの子供たちが多いことも相まって、鰻屋さんも満員で、わたしたちが入ったすぐあとからは、待つ人が出るほどだった。通常は、1階の大広間でいただくのだが、そんな事情で、今日は二階席となった。そして、奥の座敷へ上がろうとしたら、こちらへお願いしますと言われ、その奥の席には、2歳ぐらいの活発な女の子連れの家族が入った。Img_1088 しばらくすると、走り回る女の子が見え、なぜ奥の部屋へ入ったのかがわかった次第である。ゴチンとテーブルに身体をぶつける音がして、一瞬の沈黙のあと、猛烈な泣き声が聞こえてきたのだった。辛い日々かもしれないが、世間から見れば、夏の風物詩のひとつかもしれない。

Img_1099 お吸い物付きのうな重だ。お葉漬けが小皿についてくるだけの、信州のうな重だ。細かい山椒をちょっと振りかけて、さっそく口に入れる。外は、暑気がうなぎ上りなのだが、これを頬張れば、昨日までの体力の消耗を十分に補うことができる。じつはこのあと、近所で見つけたスイーツの店へ行こうと計画していたのだが、娘によれば、このあと甘い物よりも、すこし辛い物の方がぴったり合うのでないかということになり、急遽予定を変更して、諏訪の街を北東へ進んだ街道沿いにある、酒蔵を目指すことにする。Img_1094 300mくらいの間に、5つくらいの醸造所が並んでいて、それぞれ独特の試飲をさせてくれるのだ。これは、わたしの研究分野に関係ないことはないので、その点でもたいへん興味深いところなのだ。

Img_1098 訪れたのは、わたしの父が生まれたところから、すぐのところにある、M酒造だ。ここには洒落た販売所が設けられていて、たくさんの観光客を静かに、視覚的に呼び込んでいる。それで人びとの喉を刺激して、ひっきりなしに、人びとが訪れる。呑んべえにとっては、ひとつの聖地なのだ。Img_1136 のれんをくぐると受付があって、ここで試飲を申し込む。右側のホールで、説明を受けながらすこしずつ注がれた清酒をいただく。写真のような、厚いガラスでできた素敵なお猪口が用意されている。もちろん、試飲が終われば、このグラスは持ち帰ってよいことになっている。このグラスをもらうだけでも、十分に試飲代を上回る効用がある。

Img_1095 まずは、季節のものだということで、生酒が注がれる。M特有の芳香をもった甘さが際立って、口の中に広がる。なぜ試飲という習慣が定着したのかは、このちょっとした一口に隠されているのだ。一度体験したものは、Img_1097 それの印象が強ければ強いほど、もう一度体験したくなるのが常であり、試飲が試飲だけで終わらないということが、なぜこんなに安価で試飲ができるのかということの、秘密なのだ。

Img_1096 次に注がれたのは、原酒に近いところで出荷するという「あらばしり」だ。11月以降の寒い時期に、諏訪の伯父さんが送ってくださった味だ。濾過されない、いろいろの複雑な味を含んでいる。現在出回るのは、2月以降のものなのだそうだ。いつ頃仕込まれて、いつごろ出荷するのか、このサイクルが工場にはあるらしいことがわかった。その時その時の需要に合わせて、切れ目がないように、常時仕込みを行うようになったのが、近年の醸造の革新なのだそうだ。ここにおいて、大手の醸造会社と中小の醸造会社との生産体制の違いがでてくるところだ。

最後に出てきたのが、大吟醸と、そしてさらに、最近のさっぱりしたドライ系統の清酒だ。このメーカーは甘口で有名なのだが、やはり最近の需要動向は辛口系が求められるために、それらに力がはいるらしい。試飲をしている時にも、もっとも辛口はどれですか、という声が飛んできていて、衒学的にいうならば、このメーカーが甘口を得意とするメーカーであることを知らない人もいることがわかる。しかしながら、わたしはやはり、清酒は甘口が好きなのだ。燗をして、コタツで一杯というところが、清酒のよいところだと勝手に思っているのだ。それには、程よい甘口が合っていると思う。

この専用ショップには、ずらっと清酒のラインアップがされているだけでなく、ショップの左半分には、清酒に関係する酒器・陶器・オツマミ・醸造酢などなど多くの日用品を扱っているコーナーがあって、楽しい。その中で、この清酒Mの酒粕から作ったアイスクリームがあり、清酒のあとのスイーツとして最適だった。ベンチにゆっくりと腰掛け、清酒を見比べながら、食べた。

Img_1102 M酒造をでて、駅までの帰り道、4軒の酒屋さんが並んでいて、ここで一軒も入らないのは失礼に当たると娘も言うので、辛口「T」で有名なH酒造へ入る。チョークで書かれた外の看板には、新発売で「雨上がりの空と」という文字が書かれていて、なにやら新清酒があるらしい。店に入ると、ご主人と奥様の二人がいらっしゃって、ご主人が客の応対をなさっていた。おしゃべりの上手な方で、盛んに、5軒の業態が違うことを強調なさっていて、小さな酒造にはそれ特有の持ち味があって、その時々の多品種少量生産ができるメリットがあるのだと言っていた。清酒が当たるか当たらないかは「バクチ」だと称する。Img_1127 ここの季節の清酒「雨上がりの空と」は、フルーティで爽やかな清酒だった。当たりだとわたしは思う。梅雨のあと、これをちょっとひっかけて、街に出たいと思うような味だ。さらに、一本一本楽しいお話と一緒に、ついには、5種類の清酒を試飲することになってしまった。ゆったりしたところで、街道を下って、夢見心地のままで、あずさ号に乗って、上諏訪をあとにしたのだった。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。