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2015/07/02

映画「海街diary」と母の葬儀について

Photo 映画「海街diary」を観る。鎌倉に住む三姉妹に、15年前に家族を捨てて出て行った「父の葬儀」の知らせがもたらされる。そこで腹違いの妹「すず」と三人は出会う。そして、長女が鎌倉で暮らさないかと、すずを誘うのだ。ふつうの家族では、夫婦がいて、そこから娘たちが他の家族の元へ嫁いで出て行くのに、今回の物語では、それが逆になっていることが見所だ。娘4人の家族という虚構が成立するか否か、という映画である。

わたしの母が6月下旬に亡くなって、今日葬儀を営んだ。家族がひとり抜けることの重大さに、改めて思っていた。それに比べれば、この映画が描くように、もうひとりの家族が加わるということがうまくいくならば、そこにたとえ父や母がいなくても、比類ない楽しさがつけ加わるであろう。

Img_0209 「家族葬」という形式があって、わたしの母の葬儀もそれで行わせてもらった。花だけは式場に溢れるほど贈られてあったが、ほかは極めてシンプルで、葬儀場では、この日一つしか葬儀がなかったこともあって、静かでしめやかな、喪主のわたし自身が言うのも変だが、たいへん良い会だったと思う。いとこのM兄さんとMさん、そして妹夫婦と、わたしの家族だけだった。葬儀社や納棺師(おくりびと)、霊柩車や斎場の人びとをすべて足すと、そちらの人数のほうが圧倒した。

母の子供時代から、青春時代、そして結婚して、子育てを行い、さらに仕事に連なる時代があって、みんなで回想した。このように少人数で偲べば偲ぶほど、故人の社交性の様子が思い出されてくるのだった。

この映画に返って考えると、一番印象に残っているのは、「母と長女」との関係なのだ。「大竹しのぶ」が演じる母と、「綾瀬はるか」が演じる長女という点でも興味津々なのだが、何やらそれだけで終わらない、普遍性の匂いがするのだ。

ふつう、母が家を守り、家から娘が出ることで、家族が保たれる。つまり、一つの家族が二つの家族を生み出す。けれども、この映画ではちょうど逆に、娘が家を守り、母が家を出て、四姉妹の家と母の家が保たれるのだ。これは、特殊な例かもしれないが、必ずしも特殊だと断定できない点があるのだ。それは、「母と娘」と特定して考えなければ良いのだ。家族というものは、普遍的に、「誰かを家族から外へ出すことで、家族を保っている」という構造主義的な法則性がここでも貫徹している、と考えれば良いのではないか。

Img_0662 ということは、やはり家には、送り出す人が必須であり、最後は家に一人は残らなければならないということだろう。映画では、看護師を勤める長女は長い付き合いの医師と別れて、家に残る決心をするのだ。翻って、わたしの母は、父が逝き、わたしが去り、妹が嫁いで、その後はずっと一人暮らしだった。最後の頃に、ひとりで寂しかったと、ちらっと病床で言ったのを、妹は聞き逃さなかった。けれども、それは普遍性のあることで、母はそれを十分にわかっていたと思う。最後まで送り出す役をずっと演じてきて、今回だけ送り出される側に回ったのだ。

千葉での葬儀が終わって、横浜へ帰った妻から、体調悪く葬儀に参列できなかった「諏訪の伯母様」から手紙が届いていたことを知らされた。その中に、母への詩が詠まれていた。

浄土では 時々 母のふところに

  抱かれて寝るよ 子守歌 聴き

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。