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2015/05/23

松本へ出かける

Photo_8 今年度の松本クラフトフェア(5月30日、31日)には、残念ながら、奈良学習センターの面接授業が当たってしまっていて、観ることができない。そこで、一週間前に松本を訪れた。だから、目的はそれほど考えてないのだが、それなりに来年の取材のことなど、気になることが多くあって、気持ちのほうがはやって来た次第である。娘が連日付き合ってくれた。というより、お付きとして、娘について回ったと言った方が正確なのかもしれない。

Photo_9 時間の余裕があるときに、一度ゆっくりと来訪したいと考えていたのが、「松本民芸館」だ。この辺りは、松本市の郊外で果樹園などが点在する場所になるのだが、じつはわたしの小学校時代の散歩および冒険地域であって、伯父さんが近くに住んでいたこともあって、自転車で駆け巡っていた場所なのだ。Photo_10 たとえば、地元の産業に菓子業があって、ウェハースや煎餅などの小さな工場がこの辺りにあった。こづかいの5円や10円を持って、ビニール袋いっぱいの菓子を手に入れた。このように楽しい場所に住んでいたのだけれど、ちょうど小学校6年生のときに、祖父の会社が潰れ、手伝っていた父も転職で東京へ出ることになった。その年に、この松本民芸館が開館したということを、来歴を読んで、今日知った。

Photo_11 だから、中町通りにあるT民芸店のM氏が設立して、民芸運動の方々がたびたび来訪する場所であることは、知っていたのだが、今回初めて訪れる。白かべの長屋門をくぐって、趣のある林を抜けて、広い玄関に到達する。そこから、木製の床を辿って、M氏が収集した民芸品を見て回ることになる。

Photo_12 まず目を引くのは、玄関から展示室へ入っていく、その部屋の入口に掲げられた。「美しいものが美しい」という掛け軸だ。ことばや説明が重要なのではなく、直感が大切だという意味のことが書いてある。民芸が人々のなかに定着していった、ひとつの典型をみることができる。Photo_13 民芸の良いところは、この徹底した考え方と姿勢のオープンさなのだ。この民芸館はすべての作品が写真撮影OKであるという珍しい方針をとっているのだ。欧米では、当然なのだが。

Photo_14 収集品のなかで、とくに目をひいたのは、李朝の作品を展示している棚だ。もちろん、李朝の白磁棚には定評ある均整のとれたバランスの素晴らしい陶磁器が並んでいて、甕と瓶にはほんとうに美しいものが展示させられていたのだ。Photo_15 このような典型的なものを注文通りに手に入れるためには、おそらく並大抵以上の詮索が必要であり、金額も気になるが、それ以上にどれほどの時間をかけて探したのかの方を思い描いた。

Photo_16 陶磁器を上回って素晴らしく思えたのは、この写真を載せた朝鮮の箪笥だ。その前面には、竹細工のそれぞれ異なる幾何学模様が各抽斗に施されていて、民芸的なおおらかさと同時に、細工の綿密さが飛び抜けている。

Photo_17 最後に展示されている椅子の部屋は、ショールームとしても観るべきものが多いが、居間としてむしろ使いたい部屋だ。ひとつひとつの椅子が座るのを待っている。Photo_18 中には100年を超えるような、ギシギシと音を立てながらも受け止めてくれる椅子があった。もしここにバーナードリーチや濱田庄司が集っていて、もっとも民芸だから、これらの著名な作家や批評家である必要はないのだが、Photo_19 この椅子に座りながら、冬の凍えた夜に深深と話ができたらと思える場所なのであった。博物館としてとって置くには、ほんとうに惜しい場所であり、人びとが集まるように設計されている部屋だと思う。機会があれば、放送教材で使いたいなと思ったのだ。

Photo_20 松本市内へ戻って、昼食をいつものうなぎ屋さんでとる。松本で娘と会う時には、これまでほぼ、このうなぎ屋さんで食べて歓談することにしている。その後、いつものコースを辿って、中町通りを散策する。ギャラリーCでは、奈良市の以前行ったことのある、「K」の革職人のひとが店を出していた。T店もいつもながらの砥部焼をはじめとする品揃えを見せていたが、今日行った松本民芸館のM氏の親族がここを経営している。Photo_22 そして、向かいのTでは、店主が作家の売り込みに応対していた。ここの木製カトラリーは巧みなもの・高級なものが多く、2千円から3千円のものが多く展示されているのだが、これらにまじって、Photo_23 今日は数百円の手ごろな値段のものが並んでざっくりと売られていた。曲線がきれいで、仕事は確かなものだったので、スプーンと茶匙を購入した。アジア系のものだろうか。

Photo_24 疲れた身体を休憩させるべく、いつもの味を楽しもうと、近くのオープンテラスの古書・喫茶のS堂へ入る。このところの腸炎で、ほとんどコーヒーを自制しているので、信州の100%リンゴジュースとパウンドケーキで我慢する。

Photo_25 この店の古書には、「職人技」の書物棚が用意されているので、その棚を見ながら十分な休憩をとる。このところ集めている職人インタビュー集と、宮本常一の書作集があったので、購入する。他にも、何点か読みたい本を見つけたが、自宅の書棚の容量が過重になってきていることを考え、図書館から借りることを考えることにする。Photo_27 古書店の書棚から、インスピレーションを得ることはままあって、コーヒーを飲みながらそれをじっくりと行うことができる、このような店は得難い。横浜や千葉にも、ぜひ見つけたいものだ。

Photo_26 30日のクラフトフェアには、道いっぱいに参加者たちが、溢れることを想像して、シンプルなデザインのTの前を通って、駅に出る。16時発の電車に乗った。新鮮な空気で、眠気にどっぷりと浸りながら、揺れに身を任せ、帰路に着いたのだ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。