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2015/04/11

映画「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を観る

Photo_10 率直に言って、なぜ「バードマン」なのか。この映画については、上記の副題のほうが、内容を言い当てている。2014年度アカデミー作品賞をはじめ、数々の賞を獲得した作品だ。現代のアメリカを代表する映画だということになる。

第1に、最初のシーンから最後まで、共通したカメラワークがあって、常にクローズアップされた人物と映像が大写しされ、存在が強調されるような写真となっている。しかしじつは、この映画には、これらの人物以上にクローズアップされている対象がある。それは、アメリカという国そのものだ。マイケル・キートンが演じる主人公のリーガンは、一度はバードマンという最絶頂期を経験するが、それからは落ち目一直線で、苦悩しているのだ。これがアメリカでなくて、何なのだろう。バードマンは、米国のスーパーマンなのだと思われる。つまり挫折のスーパーマンを描いている。

Photo_11 それから、第2に印象的なのは、ニューヨーク的な雰囲気だ。もちろん、舞台芸術が背景にあるから、ブロードウェイの物語であるという点は随所に現れており、特有のニューヨーク的雰囲気を借景にしている。そしてそれ以上に、ジャズのドラムを至る所に配置して、聴覚的にも視覚的にも、ニューヨークを前面に出している。これこそ、現代のアメリカなのだと誇示している。現代アメリカにはメロディではなく、リズムだけが駆動していると、この監督は描いたのだと思われる。

第3の極め付けは、人びとの自然な一致ではなく、どちらかといえば、無理やりの、社会的一致がアメリカには必要だという点をうまく描いている。奇跡的な一致をアメリカ人民は求めているかのようだ。

Photo_12 劇中劇で採用されているのが、レイモンド・カーヴァーの短編「愛について語るときに我々の語ること」であり、この映画全体へ影響を与えており、決定的な奇跡も、この劇中劇の事故?から生まれるのだった。ここの部分は、カーヴァーの一部が乗り移ったような趣がちょっとだけした。この映画は、「いわば、複数のディメンションを組み合わせてものを書くことによって、寓話と、「現実」という名で通っているあの捉えがたい表層とを結び付け、その結果まったく新しい存在を創り出していた」のだった。アメリカほど、このような異なる複数のディメンションに分かれている社会はないほどだ。だから、一度ばらばらになってしまうと収拾がつかなくなってしまう。だから、それを避けるために、「現実」と結び付け、新たな社会的一致を見出していかなければならなかったのである。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。