« 映画「ディオールと私」を観る | トップページ | 蒲田で春カフェ »

2015/03/25

「海老原喜之助」展へいく

Img_9358 春の陽が射している。でも、風は冷たい。妻が展覧会はどうかと誘ってきた。ちょうど気分を転換させたいと願っていたので、午後も少したってから出かけることにする。午後2時に出かければ、帰り道の途中で、ちょうど夕日が沈む頃、走水の崖から富士山の方向に夕焼けがみえるかもしれない。

Img_9344 横須賀美術館では、海老原喜之助の生誕110年記念展が開かれている。フランスで藤田嗣治に師事して、西洋の画法を的確に身につけており、方法に無理がなく、どの描法を取っても、安定した描き方をする。Img_9377 そのため、観ていて、その通りだと納得させられる感覚を与えてくれる絵画だ。藤田嗣治の白と同様にして、「エビハラ・ブルー」としてプロモートされている。けれども、それは1930年頃のことで、それ以降、必ずしも青が目立つわけではない。

Img_9431_2 代表作となると、やはり「青の時代」には多くの作品が集中していることは確かである。たとえば、作品「スケート」に見られるような、白色の雪と、うす青色の森(なぜわたしたちが森はグリーンだと思っているかが不思議だと思わせるような)の描写は、素晴らしい。さらにポスターにもなっている、やはり1930年頃の「曲馬」は空の青と、補色の馬の茶色が綺麗だ。それだけでなく、馬と乗り手とが、ぷかっと浮かんでいて、地上の親方のもつ綱につながり、全体として、余裕のあるユーモアを感じさせる構図となっている。ここで現実以上の何物かが生じたことがよく分かる絵だ。

Img_9372 Img_9346 Img_9351 Img_9361













絵画の「リアリティ」を一山超えたと思える「遊戯」形式というものがよく出ているのは、1954年ごろからデッサンで準備され、58年に描かれた「人形使い」だ。複数の人形使いが一様に両方の手に一つずつの人形をはめて、両手を挙げて、人形芝居を行っている図だ。二つの動作を同時に行わなければならず、二つのそれぞれの相互作用が一人の人形使いによって統御されている。二つの人形を使うのは至難の技で、デッサンに現れる現実の人形師たちは真剣な眼差しを崩すことはない。

けれども、多くの「デッサン」を経て、最終的に描かれた「油絵」をみると、人形使いが笑っている。二つの人形に魂を奪われていた時期を脱して、人形使いの自在な様子が、ピエロ的な自由な動きに摸して描かれている。海老原喜之助は、上記の「曲馬」のぽかっと浮かんだ状態や、ピエロ風の笑いなどの余裕ある遊戯を捉えている点で、ひと首抜け出た画家であった。

Img_9364 Img_9335 Img_9342 Img_9363








もうひとつ、わたしにとって特筆すべき発見があったのだ。昨年から、感性に注目して経済を眺めているのだが、いくつかの対象物がある。その一つに「椅子」があって、何回かの取材を重ねている。今回の海老原喜之助の描いた中に作品の「靴屋」があり、その中に描かれているものとして、ついに「一本足の椅子」を見つけたのだ。椅子の系譜には、いくつかの系統があるが、そのひとつは有名な「シューメーカー」椅子という系統がある。一応それらは、「三本足」の椅子ということになっていて、「一本足」椅子は、理論的には可能であっても、実際に見ることは初めてだった。絵画の中であるとはいえ、すっかり喜んでしまったのだった。究極の椅子として、この「一本足」椅子を「海老原の椅子」として記憶にとどめておきたい。絵の中では、安定した座りを見せていたのだが、ほんとうにあの椅子には座ることはできるのだろうか。

Img_9380 Img_9384 Img_9385

Img_9383

   







すっかり豊かな遊戯を行い終えた気分で、予想どおり、綺麗な夕日のなかの走水を通って、家路に着いたのだ。

« 映画「ディオールと私」を観る | トップページ | 蒲田で春カフェ »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/61343030

この記事へのトラックバック一覧です: 「海老原喜之助」展へいく:

« 映画「ディオールと私」を観る | トップページ | 蒲田で春カフェ »

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。