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2015/03/29

孤独という社交性

Fullsizerender 社交理論を形成したジンメル以来、「孤独も社交のひとつだ」とよく言われてきた。けれども、一人でどうやって、社交ができるのか、とちょっと疑問に思ってしまうかもしれない。社会が形成されるには、最小限2名ないし3名が必要であるというのが常識だとされている。孤独であって、なおかつ社会を形成することが果たしてできるのであろうか。

映画「イミテーション・ゲーム」を観る。先日観た映画「博士と彼女のセオリー」と同様に、ケンブリッジ大学教授を主人公とした映画だ。第2次世界大戦中、ドイツが使っていた暗号「エニグマ」に対して、このエニグマを解読するチームが、英国内務省内に作られ、それを率いたのが、主人公のアラン・チューニングだ。亡くなったのちにようやく、コンピュータの基礎を作った人として、王室からも名誉を与えられた人物だ。アランは、小学校の頃から「変わり者」として虐められ、教室の床下に埋められたこともあった。解読チームを築いてからも、浮いた存在となった。この彼の「孤独な人生」が、この映画の見所だ。

なぜ孤独が社交的なりうるのか。孤独にも、二種類あると考えれば、よく分かると思う。つまり、ジンメル的に言えば、「近接的な関係からの孤独」と、「遠隔的な関係からの孤独」があるのだ。じつは、人間関係が強くなればなるほど、近接的な関係が失われた時の喪失感、そして孤独感は強く感じるものだ。このときに、遠隔的な人間関係が有効であり、遠くの人と結びつくことによって、緩い人間関係で孤独感を緩和することができる。「弱い絆は強い」というM・グラノヴェッターの文脈は、このようなときに生ずるのだと思う。

「近接からの孤独」という状況に対して、「遠隔的な結合」を発揮することで、孤独は十分に社交的なのである。映画の中で、いくつかの例が示されていた。一つは、普通の孤独であって、「遠隔的な孤独」に対して、近接する友人が現れ、孤独が癒される例だ。チューリングの小学校時代の経験がこれに当たるだろう。問題は2番目だ。暗号解読チームを結成するのだが、この中でもチューリングはうまく立ち回れない。ところが、のちに結婚することになるショーンが素晴らしいのだ。外からやってきたにもかかわらず、チューリングの内側へぐっと入って、孤独でありながら、チームとの調整が次第にうまくいくことになるのだ。

そして、3番目の例として、チューリングがショーンとの婚約をホモセクシャルの性格を理由にして解消しようとする場面がある。ところが、ショーンは頑としてそれを受け入れないで、かつて自分がチューリングから受けた言葉でやり返すのだ。この場面において、チューリングの孤独に対して、ショーンの孤独がぶつかり、社交的な関係が生ずる瞬間なのだ。互いに「変わり者で孤独な者同士」の付き合いだからこそ、そこに社交が生ずるのだ、というのがショーンの論理だ。

そのときのセリフがふるっているのだ。この映画では3度ほど出てきて、制作者たちはかなり気に入っていたことがわかる。「ときに想像し得ない人物が、想像もできないような偉業を成し遂げることがある」というものだ。このこと自体は、チューリングの天才ぶりを強調するセリフなのだが、ちょっと曲解してしまえば、「孤独が社会に貢献することがある」、つまりは、孤独は社交的なのだと言っているようにも解釈できないだろうか。

事例として強烈なのは、チューリングがホモセクシャルな性格を持っていたことである。つまり、孤独を解決させたのは、男女関係ではなく、むしろ男性関係であったところに、孤独特有の、「遠隔的な社交」というものの性質がよく現れている。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。