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2015/03/26

蒲田で春カフェ

Img_9386_2 早咲きの桜はもう散ってしまい、本格的な桜にはまだ間がある。コーヒーを楽しむにはちょうど良い時期だ。O先生から「春カフェしませんか?」という魅力的なお誘いがあり、すぐに乗ってしまった。

Img_9389 このところの彼のカフェ巡りのパートナーたちを眺めるに、20代から30代までの美女たちで、ネットワークを築いてきている。突如として、そのネットワークに老人男性の二人組のイメージが割り込むのは気が引けたが、ネットワークというものは多様性を混在させることで、ずっと発達することもあるので、生来の楽観主義を発揮することにして、いそいそと蒲田の街へ向かったのだ。

Img_9390 考えてみれば、蒲田へ下車するのは、生まれて初めてである。京浜東北線沿線の東京駅以南でこれまで降りたことがないのは、ここ蒲田だけで、首都圏の私鉄沿線ほぼすべてに住んだことがある、わたしにとっては珍しい場所なのだ。Img_9391 さっそく、O先生に駅周辺を案内していただく。NHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」を見ていた人には、わかりやすい場所なのだろう。駅前が焼け跡の闇市になっていたところで、すこし離れて、戦前からの松竹撮影所のあったところです、との説明があった。Img_9398 そして、その闇市跡が、駅前のロータリーになったとO先生は教えてくださった。駅の両側の西口と東口にも、バスも発着できる立派なロータリーと広場がある。いつも電車の窓から、西口にある趣味雑貨の店「Y」だけは目立つので眺めていた。

Img_9394 広場からアーケードが伸びていて、カーテン屋さんなど、古くからの商店が軒を連ねる。人口の横溢さが目立つのは、アーケード街に沿って、二重、三重の商店街が発達していて、人通りが絶えないところだ。周辺部にこそ発展の中心があるという都市の核心を、未だなお、蒲田は維持していて、地方のシャッター街のあることなど、ここでは感じさせない。Img_9395 もちろん、新陳代謝はあるだろうが、まだまだ勢いがある。その勢いのひとつは、常連客の定着がある点に現れている。その典型的な店が1軒目の「春カフェ」だった。

Img_9397 商店街が輻輳している、ちょうど辻から二本目を入った通りの真ん中に、「カフェD」があった。古典的な喫茶店の構えをしており、茶色の建物の輪郭に、白い壁、そして大きなガラス窓が目立つ、中にはいると、地元の常連客がランチを食べに来ていた。印象として、オールランドな常連カフェだ。コーヒーにも力を相当注いでいるし、定食にもバラエティがあり、かつ美味しい。わたしが選んだのは、写真のハンバーグ定食で、見た目も味も洒落ていると思う。O先生はエスニック風の炒めご飯を注文した。このようにいつも常連を引きつけるものを持っており、幅広い集客能力を備えている。Img_9396 喫茶店が都市で生き残る条件は、チェーン店と伍して競争できることにあるのだが、そのためには、コーヒー店の専門性と、あとプラスαが必要なのだということだ。この店の場合、食事がそのプラスαということになるのだろう。年季の入った茶色のテーブルには、常連客たちの会話が染み込んでいた。もちろん、今日のO先生との歓談も見事に刻み込まれたことだろう。

Img_9399 2軒目の春カフェは、O先生の卒業生たちを惹きつけてやまない、スイーツ専門店の「M」だ。西口側から、環状7号線の跨線橋を通って、東口の商店街に入って行った。そして、警備員が常駐している、普通なら入るのをやめてしまうような、マンションの2階に「M」があった。Img_9402 O先生のブログで一応の想像はしていたものの、さらに上回る「隠れ家」ぶりで、一度来ただけでは到底場所がわからない。クリエイティビティ(あるいはスイーツの創造性)というものが、どのようなところで育まれるのかといえば、それは表の陽の当たる場所ではなく、陰の隠れ家で発生するのだ、という典型的な例である。隠れたところで考えられ、口コミで広がったらしい。「M」の印象は、隠れ家的だということも含めて、クリエイティブ系喫茶店であるというところだ。Img_9404 すっかり話に夢中になって、うっかりして肝心なことを聞き漏らしたが、O先生はどのように考えているのだろうか。カフェ文化論を地元紙に連載されているので、「M」について書くときに注目しよう。

Img_9403 メニューが季節ごとに変わるらしい。もちろん、定番はあるのだが、出て来る紅茶がそうであるように、初摘み、二番摘みとその時期の味を大切にしていることがわかる。イチゴやイチジクなどの果物とスイーツの仕合せな組み合わせは、この店の創造性がなせる技だ。O先生は、蒲田モダンロールを取って、わたしは、イチジクのケーキをいただく。それぞれ似合った紅茶を選ぶ。2時間ぐらい居たと思うが、次第に玄関で待つ客が増えてきたので、女性店長に挨拶してお暇することにする。Img_9408 ここの経営は、週の半分がこの喫茶店なのだが、この人気に頼るだけでなく、もう半分はスイーツの料理教室で成り立っているとのことだ。二つのマーケットの相乗効果を狙っているところも、極めてクリエイティブなところだ。いわば、大学経営で、講義だけでは成り立たなくて、必ずチュートリアルあるいはゼミナール的な授業が組み合わされているのと同じだ。

Img_9412 時間が経つのは早い。もう1軒行こうということになって、大井町へ足を延ばす。3軒目の春カフェは、線路沿いにすこし歩いて、土手からの桜並木が綺麗に続くのだが、その先にある喫茶店「P」だ。ここもO先生の馴染みの店で、温かく迎え入れられる。お気に入りの、半分の形をしたテーブル席で、外がぐるっと見渡せる、眺めのよい場所を占める。Img_9411_2 コーヒー茶碗に凝っていて、このときはウェッジウッドで出てきた。そして、途中から、ここの女性主人の方も会話に入ってきて、喫茶店談義をする。たぶん、この喫茶店の客は、スタンドの奥にずらっと並んでいる、素敵なコーヒー茶碗で静かにコーヒーを堪能することもさることながら、この女性主人の方との会話を楽しみに来る人びとが多いに違いないと思ったのだった。

Img_9409 春カフェがあるなら、夏カフェ、秋カフェ、冬カフェもきっとあるだろう。O先生と会うのは、詰まるところ、「社交」を実践するところにあるのだ。だから、何か必要に迫られて会うのだが、実際に会ってみると、実は必要はそっちのけで、会うこと自体を楽しんでしまう。次の夏カフェも会う機会を探っていて、今からどうしようかと思案しているのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。