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2014/12/30

映画「ゴーンガール」をみる

Img_8598 歳末になって、今年最後の映画をどれにしようかと考え、一人で見るならと思い、この映画にした。もしこの映画を夫婦で見に行ったら、互いにどのような顔をして出てくるのだろうか。終了した時にお互いに顔を見合わせて、笑っていることができたなら、相当な夫婦だと思う。わたしにはとてもその勇気はないのだが。

Img_8590 もちろん、この映画は米国のように個人主義的な風土で生まれたもので、日本ではこのような、「自律」した夫婦関係は、・・・と言ってしまえば、それまでなのだが。途中までは、その解釈が成り立つだろう。しかしながら、結末に至るまで待っても、そう言えるかは微妙だ。

この映画の最大の特色は、終わり方にある。だから、ここで結末を言ってしまうわけにはいかない。オブラートに包んで言うのなら、「夫婦関係はそれでも続く」ということだが、このことは人間にとってかなりの真実を含んでおり、「映画の帰結」としては、最良のものであったと言えるだろう。それにしても、これだから、サスペンスは面白いのだとも言える。

Img_8596 さて、ある日パーティで、ハーバードを出た才媛の「エイミー」と出会ったさえない主人公との間に、夫婦生活が5年間存在することになる。その間に、事件が次第に進行することになる。完璧な「邪悪さ」が信頼関係を利用していく、スリラーだ。そして、エイミーがある日、家から居なくなり、事件の匂いだけが残される。残されたものたちのドラマが幕を開けることになる。

Img_8594_2 ここがいつも謎なのだが、米国人にとっては、信頼関係は増えたり減ったりするもので、量的なものであるという、了解があるようなのだ。だから、少しぐらい信頼関係が減っても、大方は変わらないらしいのだ。つまり、裏切られた後であっても、まだまだこの信頼関係を利用して、最終的な結果の訪れるのを「計画する」という、じつは有りえない設定を鑑賞者に強いるのだ。今回、この強制に鑑賞者は、なぜかやすやすと乗ってしまう。なぜこんなに異常な設定を納得して、鑑賞者たちは受け入れてしまうのだろうか。それは、物語の重要な部分が隠されているという、サスペンスの構造を保持しているからである。

Img_8591 重要な部分は何かといえば、それは「妻が夫を信用していない」という、部分が隠されているからである。常識的には、妻が夫を信用していて、その夫によっては決して加害されることがないという想定のもとに、ふつうのサスペンスは企てられる。だから、この常識たる「妻が夫を信用している」ということ自体が、疑われるに至ると、そもそもの信頼関係が崩れてしまうのだ。つまり、この映画の構造は、まさに人々の常識の構造をひっくり返すことで、ギョッとする展開を可能にして、そのために面白さが出てきているのだ。


この映画を観ると、たとえ夫婦関係の相手が自分を殺すかもしれないと自分が疑っていたとしても、つまり「相手を疑っていても、夫婦関係は成立するのだ」という、人間のひとつの真理がわかってしまうのだ。これは、人間関係の見方としては、180度の転換ではないかと思われるのだが、さて自分に引き寄せてみて、ここで「互いに疑っているから成立している夫婦関係」なのか、「互いに疑いを持たない夫婦関係」なのか、どちらが本当に存在する夫婦関係のか、本当のところ、自分の妻に対しては訊く勇気は全くないのだ。


Img_8579 例年の研究室での「大納会」は、31日と決めているのだが、明日はいろいろと忙しそうなので、今日行った。最後に、研究室からの眺めを写真に収めたが、この写真の左側に写っているビル群は、「幕張ファミールハイツ」である。故後藤明生氏が、関西へ行く前に住んでいて、ここからの眺めにヒントを得て、小説『首塚の上のアドバルーン』が書かれたのだ。


Img_8587 さて、放送大学の研究棟を出るときに、先生方が何人いるのかを見ることにしているが、今年は二人の先生方の明かりが点いていた。ご苦労様です。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。