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2014/11/07

元町辺りを散策する

Img_8177 昨日、雨が降るというので、雲が心の中を見透かすように垂れ込めてきていた。それで、外出を控えて、「社会経営研究」の校正に精を出す。現在、再校から三校の段階で、Img_8182 すでに9割がた出来上がっているので、少しずつ届く校正稿に従って、修正を行っている。いつもながら、校正というのは、時間をかければかけるほど、いろいろなことが出てきてキリがない。

Img_8186 それで今日は朝から、かねてより、妻と一緒にいくことになっていた展覧会「須賀敦子展」へ出かけることにする。家の近くのバス停から、山下町経由の日赤病院行きのバスが出ていて、機会があったら乗りたいと思っていた。それで、直通でフランス山の麓まで着いてしまう。Img_8195 このバスが面白いといっては失礼なのだが、幹線通りを通ってくるバスにもかかわらず、そこを避けて通りたい病人や老人(われわれもそうなのだが)などで、満員状態なところだ。この奇妙な感覚は、このバスに乗った人にしかわからないだろう。

Img_8202 「フランス山」から「港の見える丘」公園も、休日にくると、人とぶつかってしまうほどに混雑しているのだが、きょうは人の顔を見ながらでも、ゆったりと坂道を登ることができるのだった。大仏次郎記念館から近代文学館へ渡る橋があって、港の眺望が良いばかりか、Img_8206 緑が豊かで、散歩コースにはかならず組み込みたい場所となっている。開館までに時間があったので、散歩者たちに混じって、ベンチでコーヒーを飲んで港の自由な空気を吸い込んだ。

Img_8211 「須賀敦子」については、妻と娘が好きで、それぞれが全集や単行本を持っている。それに誘われて、本を手に取るようになったのだが、わたしなりの読む動機が別にあることに次第に気がつくようになった。Img_8213 それは、彼女の中に、よくわからないのだが、「何かを超えていく」という、不思議な感覚を持っていて、行動にも評論にも、それがひょっと現れるからだ、ということに思い至ったのだ。

Img_8216 須賀敦子は、早くから、父親が若い時の世界一周旅行の話をしていて、外国へ出る機会を狙っていたこともあって、フランス留学からイタリア遍歴へと続くことになるのだが、それ以外に、日本を離れて、イタリア人と結婚して所帯を持つに至るのだ。このような有り様は、人間の存在が女性の交換によって成り立つとする、じつは「構造主義の原理」そのままだと思えたのだった。Img_8222_2 原理的な行動が、率直にかつ具体的な人物となって現れてきたのは、わたしにとっては二度目だった。ちなみに、女性が外国へ出て行く契機として感動的だったのは、わたしの学生時代に、教生教練を横浜の女子高校で行ったときに、「卒業したら船乗りになって外国を回るのだ」という生徒がいて、なるほどと思ったのだ。これ以来だ。

Img_8280 今日の須賀敦子展のなかの展示物で、シモーヌ・ヴェイユについての須賀敦子の評論に「横につながる思想」という考え方があって、それが展示されていた。この表現が的確に彼女の潜在的な思想を表しているように、わたしには感じられたのだった。

Img_8228 散歩道を辿って、元町へ出る。なぜか、まだバラが咲いている。途中、外国人邸跡を迂回して、人影がない道。そこから、急に元町の人ごみへ入っていく。ここではちょっと、コーヒーと休憩が必要だ。Img_8229

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。