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2014/11/30

鎌倉の麻生三郎展を観に行く

Cimg3863 今の時期、12月に迫っている修士論文の締切を前にして、連日100ページを超える論文が届く。通信制大学の辛いところは、「添削」という手段が日常化していることだ。通常の大学では、指導は口語体で、面接中心に行われるのに対して、放送大学では文語体で添削という手段が使われる。おそらく、10倍以上の労力がかかっているのだ。口で伝えれば、すぐわかることが、全て書き言葉に直されてから、送付されるのだ。この大学では、放送文化は文字文化と並存して成り立っている、というパラドクスを維持しているのだ。

Img_8406 今年度は、8~10名ほどの学生の提出が見込まれており、早い人は2ヶ月くらい前から、初稿を送ってきており、2回、3回と赤を入れて送り返していて、遅い人でも、この時期には大体初稿を見ることになっている。それで、締切日に近づくほどに原稿が重なってくる。昨夜も3本ほど重なっていたのだが、夜明け頃にはなんとか片付け、きょうの午前中には、ほぼ8名分が終了した。いつも、2週間前にこれほどきちんと送ってくるわけではない。今年の学生はたいへん時間観念が発達していて、ずぼらな指導にもめげずきちんとしている。

Img_8411 気分がすっきりしたところで、妻と約束していた鎌倉へ午後から出かけることになった。日曜日の鎌倉行きは極力さけたい、と思っていたのだが、タイミングを考えると、今日以外に都合がつかないので、致し方ないだろう。Img_8417 今日は、県立近代美術館の鎌倉別館が目当てなので、逗子から入らずに、北鎌倉から徒歩で、坂を下って行くコースを辿ることにした。それでも、駅を降りる頃には、道いっぱいに観光客があふれていて、途中の円覚寺、東慶寺などの前は、予想どおり人でいっぱいで、なぜ屯しているのかといえば、昼時間で食事の店の前の行列が、道いっぱいにはみ出しているのだった。

Img_8415 鎌倉はすっかり「脱戦後体制」の時代に入っていて、地元の人々も観光客と密接な関係を持たざるを得ない時代を迎えているのだといえる。Img_8422 鎌倉文化人が優雅な散歩を楽しむという時代は、記憶の中にだけ存在していて、その記憶を辿って、われわれ大衆人が過去の遺産を楽しむ時代へ移っている。今日、二番目に行く鎌倉の近代美術館も、そのまま存続できず、鶴岡八幡宮に土地を返還することになっている。時代は変わる。

Img_8424 とはいえ、別館は別世界だ。前を通っていく人びとはほとんど、美術館の中までは入ってこない。静かな世界がまだまだ存在しているのが、鎌倉がいろんな人に支持される理由だろう。麻生三郎展は、意外な展開だった。松本俊介と並んで展示される油絵は、いつも暗く、背景も見えないほどに塗りたくられた抽象画なのだが、Img_8430 今日は線画が中心で、雑誌の表紙絵や挿絵なのでイラスト風の、けれども描き方が素敵な絵がたくさん展示されていた。

Img_8428 たとえば、「あつまり」という雑誌「小金井」に載ったイラストは、面白かった。集まりを絵として描くと、どうなるのか、とみると、興味の尽きない描き方が展開されるのだ。十数人が線画で描かれている。それだけで「あつまり」なのは確かなのだが、それに加えて、一人一人みんな異なっているのだ。Img_8434 それにもかかわらず、真ん中にぽっかり空いた白い空間に向かって並んでいる。さらに、一列なのだが、ズレがあることで、多重的なあつまりがそこに現出しているのだ。ちょっとした線画で、これだけの意味が込められていて、見ていて興味が尽きないのだった。もう一枚あげるなら、「日暮里駅」も見ていて時間を忘れる線画だった。

Img_8435 「帳面」という蓬莱屋印刷所の宣伝のための雑誌は、全体として、本という体裁を取りながら、全体が作品になっている。特徴があると思えたのが、線画の線に二種類あり、太い線と細い線とが書き分けられていて、この二本の線だけで、世界が描けてしまうか世界があることを知ったのだった。

Img_8440 紅葉が迫る中、本館でもコレクション展を行っていて、見ていて元気の出る絵画である、海老原喜之助やわが朝井閑右衛門は健在だった。ベランダへ出て、ベンチに座って、妻が持ってきた小岩井農場のバターたっぷりのクッキーとコーヒーを飲んで、しばしの静寂を楽しんだ。Img_8447 ここ数年使い続けてきた、コーヒーポットを手を滑らせて、落としてしまい、蓋の部分が欠けてしまったのが残念だった。丁寧に使い続けてきたものにも、最後が来るのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。