« 鳥取での講義の2日目 | トップページ | 元町辺りを散策する »

2014/11/05

赤瀬川源平展を観る

Img_8163 この展覧会がはじまる直前10月26日に亡くなった「赤瀬川源平」の展覧会を千葉市美術館で観る。入口を入って、すぐ左の作品にキャプションが付いていて、彼が初期のアフリカ・アラブに惹かれた頃、カフカを題材にして、名前がたいへん奇妙なので覚えやすいのだが、「変な具体物」ということに興味を持ったと書いてあって、それで僭越ながら、展覧会のほぼ半分を納得してしまったのだった。

Img_8166 近代の芸術家の中には、洒落て抽象にいってしまったり、思い余って想像の世界にはいり混んでしまったりする人びとが多く、なかなか現実を直視する芸術家はいない。ここで、現実に固執するのではなく、けれども、超現実へ直ちに行ってしまうのではない方法を追求したのが、赤瀬川源平だった。「変な具体物」という中間的なものを見つけたことが、初期の成功だったのだ。彼らが設立した、ハイレッド・センター(こういう名前がよくわからない)の活動が、ネオダダの一連のものだったのだ。

でも、「ふつう」をまずは脱しないと、「変な」ということを感じられないので、ダダだということにして、「ふつう」を壊したのだが、けれどもじつは、壊してはいなかった、というところなのだろうか。

Img_8167 初期のころ、一連に繰り広げられた最後のころに、意味もなく包んでしまうという「梱包」シリーズと、彼を有名にした「千円札模写」事件があって、「ふつう」を壊す話題があるのが面白かった。この「現実」があり、想像や象徴などの「非現実」があるのだが、じつは「超現実」をさらに超えていくと、ダダ的な「現実」が待ちかまえている、という構図になっていることがわかる。

Img_8174 それでも、やはり「具体物」にこだわったところに、赤瀬川源平の特色があるのだと思われる。このあとに続く、「路上観察」や「トマソン」そして、晩期に開発した、老人のボケは現実の力なりうるとする「老人力」にまで、この痕跡が残されている。現実から排除されたものが、もっとも現実的で具体的なものだとする考え方が強く出されている。

彼の本の中で、「リアルとは何か」を書いていた。第1章でモネの「日傘をさす女」を取り上げていて、このモデルの婦人のさす日傘に、心棒の描かれてないことに気づく。しかし、心棒がなくとも、リアルなのだと続く。その筆致に勢いがあれば、その先にあるものが見る者の目に自然に浮かび上がってきて、むしろ心棒が描かれているよりも、リアルなのだ。「リアリズムというのは、すべてを描くことではない。描かないものまでも、そこに潜り込ませるということである。」これこそ、リアルの極致だ。

Img_8169_2 「変な具体物」は決して「変で」もないし、「具体物」である必要もないのだ。最初から、真にリアルなのだ。このようにみてくると、攻撃性の初期から、今日性の最後まで続く、一貫した視点があるように思われる。ひとつひとつは、奇妙にみえても、何をやったのかわからなくても、ずっと同じことを追究していて、わたしたちの日常生活の幅を広げることに貢献しているのをみることができるのだ。

Img_8170_2 近くのMBの中二階にある喫茶店で、ランチを食べる。定番のカレーだ。それから、この季節には、リンゴのタルトが出ている。写真にあるように、芸術品のごとくに、薄切りのリンゴで身を包んでいる。カレーのあとの、リンゴタルトほど、美味しいものはない。

« 鳥取での講義の2日目 | トップページ | 元町辺りを散策する »

絵画・展覧会」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/60801059

この記事へのトラックバック一覧です: 赤瀬川源平展を観る:

« 鳥取での講義の2日目 | トップページ | 元町辺りを散策する »

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。