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2014/10/21

夜行列車でリスボンへ

Img_8028 映画「リスボンに誘われて」を観る。原題は、「リスボンへの夜行列車」なので、かなりイメージが異なることがわかる。この映画のキーワードは、「アクシデント」である。アクシデントには、事故などの悪いイメージもあるが、それ以外に、偶然めぐり合うという、チャンスという意味もある。映画の中でも、この言葉が使われていた。日常があって、そこにアクシデントが起きることで、違った日常が立ち上がる。

Img_8034 ある日、橋の上で飛び込もうとしていた女性を助けたことで、残された私家版の古本を手にいれる。この本を返そうとして、中に挟まれていた切符を頼りに、リスボン行きの夜行列車へ行くが、その女性は見つからず、主人公ライムントが乗ってしまうことになる。これこそ、アクシデントだ。

夜行列車のなかで、この古本の小説を読む。リスボンについたライムントは、この自伝的小説の主人公アマデウの恋愛事件の中心を探ることになる。事件の関係者にひとりひとり会っていくなかで、自分の生活を振り返ることになる。素敵な眼科女医に出会い、そこからも、物語は発展し、事件以来バラバラになっていた歴史が全て結びつくことになる。それにしても、旅先で、こんなに感情移入できる相手に会うこと自体が、アクシデントなのだ。

Img_8035 旅に出るときには、自分の一部がここに残り、また戻ってきたときにはそれを思い出すというフレーズは、洒落ていると思う。この一部残っている自分とは、いったい何なのかといつも考える。自分の中が複数に分かれていて、その土地に残されている自分が、居るように思える。ある日、夜行列車に乗って、そこを訪れたとき、その自分と会うのだ。

Img_8036 最後の場面で、主人公ライムントは、眼科医マリアナからリスボンに残るように誘われる。さて、彼は果たして残ったのか、それとも、スイスのベルンの自宅へ帰ったのだろうか。

Img_8037 それにつけても、映画の冒頭のシーンは忘れられない。高校の古典文献学教師ライムントが学生たちの答案を添削している場面だ。忘れられないのは、ベルンの古い町並みの中にあって、自宅いっぱい広がる書棚だ。部屋から廊下、廊下から階段に至る開放的な書棚が並んでいて、家中が書庫なのだ。そして、最後はベランダに面した窓のそばに机があるのだ。わたしだったら、時々は外へ出てちょっと授業を行っても良いが、このアパートを決して離れることはないだろう。

Img_8027 映画のあと、野菜カレーランチを「M」にて。ここはケーキ屋さんの二階にほんの数席あるだけの喫茶店で、ランチどきには、近くの女性社員たちがグループで押し寄せる。このライスを山形にして、周りのカレー汁のなかに、野菜の断片を浮かせてあって、何となく余情があるのだ。手間をかけて、つまりは楽しみながら、カレーを作って盛り付けているシェフの姿が眼に浮かぶ。野菜カレーの中の日常についても、とうぜんアクシデントはあり得るのではないか、とふと思ったのだ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。