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2014/10/29

写真と言葉のミックスについて

Img_8040 日比谷図書館へ久しぶりに来ている。千代田区の図書館はどこも充実しているので、都心に出た時に、ちょっと1時間ぐらい籠って仕事をするのに最適である。それで、会員となって、図書カードも作っている。

Img_8052 今日は、これまでも何度となく特集されてきている林忠彦の「日本の作家」シリーズがまとまって展示されているというので、エッセイ集を片手に、写真を確かめに来たのだ。写真もさることながら、人物像をスパッと切り出す手並みを拝見しにきたのだ。

Img_8054 展覧会の最初の一枚が、川端康成で、「寄って撮る」方式の典型例として、展示されている。他の機会に取られた川端康成写真は、いつも遠くから、望遠レンズで撮られているが、この写真だけは珍しく、かなり接近した顔写真が成立している。そのため、鋭利な目つきと、やせ細った顔付きを見事に捉えている。エッセイには、目の鋭さに注目したとあり、写真の作為というものを強く押し出している。林が撮っているうちに、これが川端だという写真を撮り出したと言える。

Img_8276 写真よりも切り取った言葉が面白かったのは、石川達三の写真に付された言葉だ。批評家然とした顔の隣に、「便利なものは不便だ。飛行機を途中で降りることはできない」とあった。林には、二つの目があって、一つはレンズの目で、もう一つは人物を見る目だ、と井上靖が原稿に書いていた。つまり、いつもは、カメラを持っていないらしいのだ。それで、人物を見る目を大切にしていて、被写体から恐れられていたらしい。

Img_8279 写真展のメインは、織田作と太宰と安吾で、みんなが一度は見たことのある写真だ。エッセイでは、織田作を撮りにいったら、銀座のルパンで、「自分を撮れ」という若い作家がいて、それが売り出し中の太宰だった、という有名なエピソードを紹介している。織田作の座っているカウンター椅子は作り付けのごっついものだが、太宰の座っているのは、カウンターの端だったので、可動式のハイチェアーなのだ。Img_8274 ここで林が引き出している教訓が素晴らしい。写真の成立は、撮る方よりも、撮られる方に寄って決定される、と言っていて、なるほど具体的な事例だな、と感心したものだ。

極め付きは、安吾の座卓写真だ。座っているまわりのゴミの山やうず高い埃は、単純な作為であったとしても、注目したのは、蚊取り線香だ。線香の灰がそのまま残っているのは、もちろん認められるとしても、形が残ったままで、5重層くらいに積み重なって残っている。Img_8278_4 これは、すくなくとも5日くらいは徹夜して、夜通し原稿を書いたことを見せようということだろうか。「作為以上の作為」的写真と言わなければならない。

食事は、地下の食堂も美味しいのだが、きょうはすこし整理したい仕事を持ってきていたので、1階の奥にある書店付き喫茶店へ陣取ることにした。ふつうの喫茶席だけでなく、仕事をする人用に電気コンセント付きのテーブルがゆったりと用意されている。Img_8056 一応、長時間を抑制している言葉書きがついてはいるものの、かなりの時間占めていても大丈夫なのだ。豪のものがいて、テーブルの端にプリンターまで持ち込んで、Img_8060 電話を片手に、書類を作っている女性もいた。さすが、日比谷だ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。