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2014/08/06

協力の記憶

4 今日から二日間約11時間かけて、長野学習センターで面接授業を行う。この学習センターでは、毎年授業を受け持っているので、昨年と異なる授業を心がけている。今回は今年の継続したテーマである「協力論」を取り上げた。6月に愛知学習センターの授業でこのテーマを取り上げたが、後半になってから時間が足りなくなってきてしまったので、このときの授業とは後半ちょっと違う構成を考えてみた。

まずは、学生の全員の方々に、協力活動を行った「記憶」を掘り起こしてもらった。ここは前回の愛知と同じだが、内容で異なる、いくつかの面白い例が挙げられた。直接、そのままを述べるわけにはいかないのだが、差し障りの無い範囲で言うと、たとえばこのような記憶はたいへん興味深い。

ある学生の例だ。小学校の図工の時間に、グループで大きな絵を描いた経験があったそうだ。分担して書くのだが、それぞれ個性があって、一つの絵を別々の部分に分けて描くのだそうだ。それで、全体を統一しているのは、背景の色であるということになるのだが、たまたま絵の具に手が届かなくて、また取ってくれと言えなくて、異なる背景の色になってしまったのだそうだ。それで、この大きな絵を皆で観たときに、自分の描いたところだけ、違っていて、「協力」出来なかった、と思ったそうである。

面白いな、と思う。つまり、協力は多くの場合に、このように暗黙の作業プロセスとして存在していて、最後になって、急に協力が現れるのだ。本人は、これは失敗だ、と思い込んだのだそうだ。けれども、ほんとうにこれは失敗だったのか、とわたしは思う。

5 じつは、わたしも幼稚園時代に絵画教室に通っていて、「深海の絵」を皆で描いたことがある。この時の背景のことを考えると、深海の藍色には様々な色があって、部分的には桃色を描いた人も居た。けれども、そのおかげで絵が多様に輝いて、大きな絵のなかでは、それはそれなりに色の組み合わせとしては、モザイクみたいで大成功であったと、わたしは思ったのだ。

6 何が、協力の成功で、あるいは失敗かは、極めて微妙な問題なのだ。もしその学生が失敗だと思っていて、何十年か経って、今でもそれが記憶に残っているのならば、それは、そのときに言葉に出すことが出来なかったという点に尽きるのではないかと、思われる。ちょっと使わない論理だが、その学生が改めて、今回の授業のなかで、そのことが記憶に残っていたことを言葉に出して、皆に知らしめたことで、この時の「失敗」は、十分に「成功」に転換されたのではないかと、わたしは思っている。

8 以上の例は、極めて内省的な例なのだが、これ以外に積極的と思われる例もたくさんあった。スキューバーダイビングを若いころから行っていた学生の方がいた。結婚して、子どもができると、なかなか子どもを連れて潜るわけには行かなくなったらしい。それで、ネットで仲間を呼びかけ募ると、ネットワークができて、持ち回りで子どもの面倒をみてくださることになったそうである。これなどは、十分に「弱い絆の強さ」の事例であって、「協力」の授業を展開するには、好都合の事例となった。

時代を反映して、介護にかかわる協力活動は、これも多くの事例が挙った。わたしのラジオ講座でも、板橋区で活動している介護チームを取り上げたのだが、今回長野の介護チームを形成しているケア・マネジャーの方も参加してくださった。実例を聞きながら、授業を進めることができるのは、放送大学の魅力のひとつだと思う。

7 さて、昼食となって、今回は水曜日に当たっているために、いつもの一軒家の喫茶店「I」には、ゆうゆうと行くことができた。いつもは、日曜日の定休日などが挟まれるため、なかなか毎日通うことは出来ないのだ。きょうのランチは、焼き豚だった。

Img_6909 喫茶店といえば、今日の授業が終わって、昨年見つけた静かな、蔦の絡まる喫茶店「J」へいくと、蔦が取り払われていて、コーヒーの香りの少しも残って居なかった。どこかへ移転してしまったらしい。昨年の写真も取り出してみた。0806 ビル・エバンズの「デビィのワルツ」が掛かっていて、落ち着ける雰囲気のところだっただけに、ほんとうに残念だ。街の衰退は、このようなところから、ぼろぼろと始まっていくのだ。

Img_6947 夕飯は、信州の野菜ときのこをたっぷり使った洋食屋さんへ行った。マッシュルームのバターとニンニクを効かせた鍋焼きがおいしかった。Img_6948 魚や肉よりも野菜の味に感動した。

Img_6952

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。