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2014/08/03

試験監督の最終日

試験期間も、そして試験監督も、今日が最終日だ。けれども、今日が日曜日だけに受験生たちの人数は、試験期間中で最高の数に登っている。神奈川学習センターだけで約5千人弱の人びとが一日で押し寄せる。だから、学習センターの廊下は試験時間を待つ人びとでいっぱいだ。日本全国でも、神奈川学習センターの約10倍の受験生がいると概算できるので、ちょっとした祭りイベント並みの人数が動員されていることになる。ご苦労様です。

試験監督時間には、試験会場に一度入ってしまえば、ときどき見回る以外には、とても暇な時間を過ごさなければならない。受験している方がたは、必死の形相で取り組んでいるので、こちらも心して、真剣な態度は絶やさないことにしている。いつも監督を手伝ってくださる、横浜国立大学の大学院生たちのように若い人びとには、たいへん退屈で厳粛な時間をお付き合い願うことになる。かつては、試験監督を行っている間に、論文が2本書けるとか、3本書けるとか豪語していたけれども、近年は監督に没頭しなければならない規則になってしまって、退屈さを回避するのは並大抵のことではない。とはいえ、頭の中までは試験規則に統制されることは無いので、文献もメモもまったくない状態で、頭の中だけで論文の構想を練るという、たいへん楽しい作業を行っている。もちろん、外見から察知されないように心がけつつも行うところが、たいへん難しいのであるが。

それでかえって、何も見てはいけないという制約があることで、想像力のほうが発達することも、もしかしたらあるのでは、と淡い期待を持ちながら、1時間、1時間を過ごしていく。そうすると、作業の進むことこの上ないのだ。錆び付いた頭をいかにリフレッシュできるか、年取った者だけの楽しみなのかもしれない。

休憩時間にセンターの試験実施本部へ戻ると、センター所長のI先生がいらっしゃって、S君の出版した『喫茶店の伯父さん』という詩集を持って、職員の間に回覧していた。S君は、わたしがこのセンターで学習相談を行っていた当時からの常連で、統合失調症を抱えながら、作業所の仕事に通っていた。もう潰れてしまったが、横浜の古いホテル「バンドホテル」にかつては勤めていた、という話も聞いたこともある。当時から、自分を詠った詩を原稿用紙に鉛筆で書いて、センターへ持ってきていた。わたしが『神奈川学習センターだより』の係を受け持っていたので、数回に渡って、載せさせてもらった。この本のページを捲っていたら、当時作られた詩もこの本に転載されていて懐かしかった。突然居なくなってしまった友人や、過去や将来の自分を詠んだ詩には、真実が宿っていた。アマゾンでも購入できるそうなのだ。


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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。