« K先生の「大庄屋」宅を訪問する | トップページ | 小説「不如帰」の冒頭に出てくる宿の喫茶店で、珈琲を飲む »

2014/03/14

なぜ宿場町の用水路は一本なのか?

0314 昨夜は、わたしが頓珍漢なテーマを発して混乱させる以外は、濃密な議論が数時間にわたり、たいへん生産的な合宿となった。そして、インフォーマルな会合にも適度な話題が加わり、合宿の醍醐味を味わったのだった。

0314_2 今日の予定として考えられていた場所が、先日の大雪で駄目になったので、群馬県沼田市に広がる真田家の城を巡りながら、一路昼食の場所である、伊香保の観音、温泉地を目指したのだが、じつは途中で寄った「白井宿」が問題となった。マイクロバスでは、隣りの席に昨日の建築学のH先生が座っていて、何気なく昨年の議論を思い出していた。それは、昨日の須川宿資料館で見た地図がきっかけであった。写真の地図には、たしかに用水路が道の真ん中を通っている。

0313_11 昨年、H先生から江戸時代の宿場町では、このようにメインストリートの真ん中を用水路が通っている街がいくつかあることを教えられていた。昨年の話を復習するならば、ひとつの理由として、中世特有の理由、つまり馬を使用することから、衛生上の理由、つまり馬糞を処理するのに使ったのではないか、という説を紹介した。ところが、H先生によると、それ以外にも異なる説がいくつかあるというのだった。

0314_3 それで、この白井宿の復元された町並みには、じつはこのメインストリートでの一本の用水路が見事に復元されていたのを現物としてみることができたのだった。0314_5 これは予想外の出来事で、すっかりH先生とわたしとは盛り上がってしまった。それで、昨年の議論が再燃したというわけである。

0314_4 なぜ江戸時代の宿場町では、真ん中一本の用水路が見られるのだろうか。ここ数年研究して来ている、H先生からのヒアリング結果は、次の通りだ。この内容のプライオリティは、もちろんH先生にあることをお断りしておく。

0314_6 第一の理由は、物理的な理由だ。三国街道は昔から雪が多かった。この雪をこのような共同溝に捨てるというのは、合理的な考え方だと思われる。道の両側が共同で雪を処理できることができるからだ。前述の馬糞の処理も同様に考えることができる。気象上の理由なのか、衛生上の理由なのかという違いがあるが。

0314_7 第二の理由は、須川宿資料館の方の考えだということだ。三国街道では大名行列が頻繁に行われていたらしいのだが、それで行列が追い越したりすれ違ったりするには、「二車線」の方がよかったのだ。真ん中で道を切断して、両側を通るようにしたのだという説である。これは社会ルールとして秀逸な考えであるといえる。もしこれを裏付けるような文書があれば、かなり有力な説となろう。

0314_8 第三の理由は、共同組織的な考え方である。宿場というのは、かなり発達した自治組織で運営されていたらしい。これらの決定で、用水路の構築がなされたとすれば、それぞれ個人宅の前を両側に通る側溝よりも、真ん中に一本とおる共同溝の方が共同体的である。それに、それぞれ道の両側に側溝が二本作られるよりも、真ん中一本の方が財政・経済的に安価であったといってよいのではないかと思われる。そういえば、白井宿の用水路の脇には、井戸があって、この井戸掘削には、「井戸無尽」のような共同の企てが成立したと、標識には書かれていた。

0314_9 まだまだ、どの説も文献の裏付けがなされていない。だから、謎が謎を呼んで、たいへん楽しい議論状態が今回の合宿で現出したのだ。昨年も述べたような気もするが、H先生にはぜひ論文・著書を発表して、これらの点を明らかにしていただきたいと考えるのだった。それとも、もうすこしテーマを拡大させて、シンポジウムにしてしまえば、来年の合宿は研究のための合宿になるのだから、今年よりもOKになる可能性が高くなるかもしれない。

« K先生の「大庄屋」宅を訪問する | トップページ | 小説「不如帰」の冒頭に出てくる宿の喫茶店で、珈琲を飲む »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/59339388

この記事へのトラックバック一覧です: なぜ宿場町の用水路は一本なのか?:

« K先生の「大庄屋」宅を訪問する | トップページ | 小説「不如帰」の冒頭に出てくる宿の喫茶店で、珈琲を飲む »

『貨幣・勤労・代理人』(経済文明論)

  • “「貨幣・勤労・代理人」"

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。