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2014/03/18

神楽坂で会食

0318 半年振りの早稲田である。昨年の前期まで講義を受け持っていたのが、もう何年も前のことのように思えるのだが、それは原稿書きで、家に閉じこもっている期間が長すぎたからだということだろう。

文学部のプレハブだったところが、工事に入るらしく、通常口の門が閉鎖され、記念会堂の前から構内へ入った。O先生の研究室で待ち合わせて、会食しようという計画だ。彼のブログに寄ると、早稲田系の店への招待と、蒲田系の店への招待と、二つのバリエーションを持っていて、彼の卒業生たちが訪れると、どちらかへ誘っている。

0318_2 わたしの場合は、早稲田系を選んだ。店は彼におまかせということにした。じつは、会食と、もう一つ目的があって、彼がライフコース論の専門家であることを活用させていただこうという虫のいい話で、迷惑だったかもしれないが、来年度のわたしの放送大学のテキスト「多様なキャリアを考える」掲載の内容を聞いていただいた。わたしなりの内容チェックを行おうという意図もあったのだ。こちらのほうは、彼の指摘が的確であったので、諾々と進んで、各種の改良がなされた。お腹が空いているところ、嫌な顔一つせずに付き合ってくださったので、たいへん感謝している。

彼の行きつけの神楽坂の店、「スキッパ」へ行く。「スキッパ」の前までは、何回か来ているのだが、これまで早稲田大の講義日が木曜日であり、この曜日はスキッパが定休日なのだ。それで、これまで一度も入ったことがなかった。めでたく、「スキッパ」デビューということになった。今日の定食は、メインがチキンカレーで、人参などの野菜の煮物などが添えられていて、たいへんヘルシーなメニューだった。最近は歳をとったせいか、量があまりに多いと敬遠してしまうのだが、この量は最適だった。

0318_3 食事の後、おしゃべりをしていたら、女子会食やら、カップルたちやらで店がいっぱいになって来たので、続きをお隣の喫茶店「トンボロ」へ移して行うことにした。今日のおしゃべりは、「社交性」について、えんえんと話が弾んだ。彼のブログで何回も取り上げられてはいるものの、やはり生の声で会話すると、刺激の度合いが違う気がするのだ。経験というもののなかでも、実感という部分がこの社交には作用しているものと思われるが、それがこれだ、と取り出すことができないのだ。ちょっと厄介なものかもしれないが、おしゃべりというものの魅力的な部分だ。

0318_4 たとえば、O先生が実践している社交性の発揮の事例として、差し障りのないところでいえば、彼が卒業生たちと会うというのがある。なぜか、いつも卒業生たちが早稲田を目指して上京したり、仕事を抜け出したり、家庭から出て来たりするのだ。そしていつもブログに登場するのは、女性の「美人」卒業生なのだ。男性はほぼ訪れない。「美人」だから訪れてブログに登場するのか、それともたまたまブログに登場する卒業生が「美人」なのかはわからない。ここが、社交の難しいところではないかと思われる。恋愛感情を持ってしまっては、社交にならないし、かといって、まったく持たなければ、これも社交にならない。彼の卒業生との社交性とは、どのような性質のものなのか、このままではよくわからないので、どのような性質を持っていないのか、という否定的な側面から質問してみることにした。

まず、大学教授と女子学生というシチュエーションで有名なのは、映画「月の輝く夜に」のなかでのニューヨークの大学教授の例がある。毎年、教え子に手を出して、その関係が絶えず破綻するのだ。レストランで女子学生がコップの水を教授の顔にバシャとやるシーンがある。人生の中で、一度はバシャとやってみたい。なぜ男が女に興味をもつのか、という答えが、死の恐怖から逃れたいからだという形而上学的な理由を挙げている。O先生の場合、このような強い恋愛感情は、これまで卒業生には持ったことがないとのことだ。卒業生が結婚の相談に来て、もし相談相手と恋愛してしまったら、それは問題だが、それはないらしい。

0318_5 それでは、文藝春秋3月号の村上春樹の短編「独立器官」に出てくる「度会」氏のような、感情処理はどうだろうか。度会は美容整形の医師で、多くの女性と関係を持つが、恋愛感情を深くもつことはなかった。ところが、最後に思いも寄らず、深い恋に落ちてしまった。そのときに、「誰かを好きになりすぎないように努力する」という方法を思いつく。彼女のネガティブなこと、欠点を考えるようにする、という努力を重ねるのだ。さて、これについてもO先生の場合には当てはまらないらしい。このような努力をするような、ストレスを負ったことはこれまで一切なかったとのことだった。

それじゃ、なぜ女性の卒業生たちと会うのか、結局は堂々巡りなのだが、「社交性」のためだ、というところに落ち着くのだ。ほかにも、いろいろな社交性の事例が出て来たが、まだまだしゃべり足りなかった。

0318_6 トンボロでは、いつも酸味系のブレンドを注文する。相変わらず、このコーヒーの酸味は抑制が効いていて、素晴らしいと思う。チーズケーキもさりげない味で、コーヒーの味を引き立てている。ふたりとも名機のカメラを取り出し、コーヒーを撮るついでに互いを撮り合った。こちらのブログには、O先生が掲載され、O先生のブログには、でかでかとわたしが載ってしまった。ここでは、写真の社交性を暗黙のうちに追究した結果になったのだが、それ以上になんとなく、いわく言いがたい変な社交関係が、今後繰り広げられる可能性があるのでは、ときわめて危惧し、また楽しみにもしているのである。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。