« 黒田辰秋展を観に行く | トップページ | なぜ宿場町の用水路は一本なのか? »

2014/03/13

K先生の「大庄屋」宅を訪問する

0313 今年も放送大学の先生方と一緒に、学部や大学院の運営についての相談と、社会科学の教授法に関する合宿を開くために、群馬県の三国街道沿いにある湯宿温泉へ来ている。授業期間では、話し合うことができないことが、1つの場所に缶詰になって話し合うことで、濃密な相談ができる。利点は明らかで、長時間議論できること、多種類の議論ができること、親密な議論が可能であることなど、効用をあげたら切りがない。ところが、大学も公的な組織なので、このような合宿が次第に許されなくなって来ているらしい。合宿ができない大学は、大学とは言えないのではないかと思われるのだが、ビジネスライクな世間一般の常識とはかけ離れているらしい。今年で最後になるかもしれない合宿を記憶に止めておこうと思う。

0313_2 朝早く、電車を乗り継いで、三国街道沿いにある旧「須川宿」へ着く。ここは「たくみの里」という職人の街が形成されている。昨年は、ここの革細工の家で、ぽっくりした茄子型のキイホールダーを購入して、手に付く道具として便利に使っている。今年も訪れたのだが、木曜日はお休みの店が多く、目途としていた、この革細工の店と、木工品の椅子やテーブルの並んだ喫茶店もやはりお休みで、がっかりしてしまった。

0313_3 歩いていると、用水路のそばでスケッチしている方がいて、これが同僚の建築学のH先生だった。一緒に、脇本陣だった「須川宿」資料館を見学する。係の方が、たいへん親切なかたで、手持ちの資料を詳細に解説してくださった。H先生は3回目の訪問だったらしいのだが、フィールドワークは継続が重要なんです、とおっしゃって、質問に余念がなかった。ここを出た後、近くの群馬野菜を売りにしている定食屋さんで「たくみの里定食」を食べる。6種類の田舎風総菜が付いていて、さらに外が寒かったこともあって、豚汁が暖かくて美味しかったのだ。

0313_4 今年の特色として、これまでお世話になって来た農業経済学のK先生のお宅をみんなで訪れよう、という計画が立てられた。じつはK先生の家は、江戸時代から続く「大庄屋」の家柄で、建物自体が歴史的建造物として保護の対象になるほどの由緒ある建物なのだ。これを期待して、先生方がお昼に集まった。

0313_5 ところが、大庄屋さんは時間になってもなかなか現れない。電話をすると、すぐにぐわっと音をたて、車を駆ってやって来た。そして、須川宿周辺の集落を、ぐるっと一回りしてくださった。古いが格式ある寺があり、また他の近隣集落がそうであるように、かつては養蚕中心の造りを見せていて、桑の木がいたることころに残っていた。桑の木がこんなに幹が太くなるのを知らなかった。たくみの里での木工品の材料にも影響を与えていたのだ。

0313_6 さて、K先生宅の大庄屋書院造りの間は、想像以上に興味深いものだった。ひとつは、こんな山の奥(失礼!)でも、山里だからこそ、江戸時代にはかなりの豊かさを誇っていたことがわかる。狩野派系の絵が描かれた襖や、「正義」の立派な書などが目を引く。なぜ歴史建造物の保護の対象になったのかといえば、書院造りに理由があるそうで、身分制度を反映した数段階にわたる部屋間の段差が作られており、社会構造が建築物へ与えた影響を観ることができるからだそうだ。

0313_12 それで、圧巻は現在でも使用されている居間の囲炉裏で、ここに写真のような大木が燃やされていた。そこからの煙が想像以上の量で、ちょっと先が見えないのだ。もっとも、この煙が出るから、暖房が保たれる訳だが、じつは煙を避けるために地面を這って移動した。この煙に顔を突っ込んだならば、目がちかちかして、開けていられないのだ。これは、ちょっと見ただけでは想像できない状況なのだった。

0313_9 K先生は囲炉裏にどっかと座って、そんな煙など意に介さない様子で、さすが大庄屋の末裔だとの風格を感じさせた。この囲炉裏の部屋をぜひ数百年守っていただきたいものだと思った。それほど、価値ある居心地を感じさせる。かつては、上の階にある蚕棚などとの連携があり、必要不可欠の暖房装置として欠かせないものだったことを感じさせた。この大木が燃えるのを眺めながら、酒を酌み、論文を書く醍醐味は、彼だけにしかわからない楽しみにちがいない。

0313_10 写真に撮るのを忘れてしまったが、自家製の干し柿が真っ白に粉をふいていて、甘く美味しかった。K先生の奥さんは、京都時代に知り合って、こちらへ来たとのことで、最初はかなりの苦労をなさったと推測できるが、この自然いっぱいの生活に次第に魅せられていったのではないかと想像させられた。

« 黒田辰秋展を観に行く | トップページ | なぜ宿場町の用水路は一本なのか? »

大学関係」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/59339342

この記事へのトラックバック一覧です: K先生の「大庄屋」宅を訪問する:

« 黒田辰秋展を観に行く | トップページ | なぜ宿場町の用水路は一本なのか? »

『貨幣・勤労・代理人』(経済文明論)

  • “「貨幣・勤労・代理人」"

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。