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2014/01/20

武雄市図書館にて

0120 横浜を出るときには、曇りだったのだが、九州の福岡空港から特急に乗り、武雄温泉駅につく頃には、雨が降り出していた。ホテルから傘を借りて、さっそく武雄市図書館へ向かう。駅から続く街は、地方都市共通のシャッターの降りた店が続くが、0120_2 なんとなくゆったりとしているのは、風土のなせるものと思われる。なぜかと考えるに、特別にニョと飛び出たような山はあるものの、基本的には田んぼの平地が続いているので、農業の豊かなことが、ゆったりとした理由となっていると思われる。

0120_3 図書館に着くと、駐車場が満杯であり、利用者たちの交通手段が多くは、自動車であることを認識させられた。それは、子ども連れやお年寄りにとっても、0120_4 自動車で図書館という時代になっていることを感じさせるのだ。かつて、図書館へは、自転車に乗って、本を小脇に抱えてという、自転車少年のイメージで育って来たわたしの世代とは、やはり隔世の感がある。

0120_5 英国の大英博物館にまだ英国図書館が入っていた頃に、それはずっと昔になってしまったが、図書カードを造り、ミーハーと言われようとも、マルクスの座っていた席に座ろうと出かけたことがある。そのときに、360度書架で、ドームの天井を冠した空間に出会った。この圧倒的な書籍空間の演出には、やはり意味があって、0120_6 全部がそこにあると言うだけで、すでに亡くなった人びとの息づかいが影響を与えているのではないか、という気がしてくるのだった。この圧倒的な書架の効果はいろいろなところに受け継がれている。これは図書館建築の伝統となっているような気がする。武雄市図書館も玄関を入って、グルっと見回すと180度重層的に書架が並んでいて、壮観な建築になっている。しかも、木造建築の柔らかい感じが素晴らしい。

0120_7 今回、C株式会社のY氏を通じて、わたしが今進めている協力論のインタビューが可能になったので、ちょっと挨拶をして、館内を案内してもらった。最初に連れて行かれたのは、図書館の中央部に作られている、書架の部屋だ。この作り方は、代官山のT書店と同じ考え方で作られていて、いわば図書館を特徴づけている「顔」の意味を持つとの説明だった。料理の部屋、子どもの部屋、人文の部屋が現在作られていて、特色を出している。

0121 C株式会社の得意とするところは、Tチェーンのフランチャイズ資産を使えるところにある。この共通資産がなければ、0から公共図書館を民間企業が引き受けることはできなかったにちがいないだろう。公共と民間のパートナーシップを結ぶときに、問題になるのは、「コード」の問題だ。共通のコードを使わなければ、協力は成り立たない。通常は、双方の組織文化が問題になり、どのような規則ルールのもとに、人びとが働くのかが問題になる。

けれども、この図書館でまず問題になったコードは、図書館分類だ。通常の図書館は標準分類を使っているのだが、ここはTチェーンの分類を採用した。これは、大きな決断だったと思われる。けれども、考えてみれば、これは大学図書館を回ってみればわかることだが、大学によっては、独自の図書分類を行っているところはたくさんある。つまりは、利用者が利用しやすい分類であれば良いのだと思われる。市の図書館であって、子どもや中学・高校生が利用者の多くを占めていることを考えれば、Tチェーンの分類はわかりやすいものだと言えよう。もっとも、番組で使うための童話本を検索してみて、実際に見つけてみようとしたら、何冊かは出て来たが、どうしても見つからないものもあって、困ってしまった。

武雄市図書館の特色でもっとも好評なのは、Sコーヒー店が中に入っていて、ブックカフェとして機能していることだろう。図書館の本や、新刊本の本を持ち込んで、読みながらコーヒーを楽しむことができる、というのは、図書館を利用するものにとってはたいへん好ましい環境であると言える。その昔、家と学校あるいは、歳をとってからは職場との間で、ちょっと息抜きをしたいという「サードプレイス」として、喫茶店があった。図書館とサードプレイスの複合は、相性がよいのではないかと思われる。

わたしの中で、思い出として残っている図書館は、まず小学校の図書館から始まる。図書委員となって、図書新聞まで発行して、通い詰めた。それでも、本の種類は足らなくて、学校の前にあった貸本屋に日参したし、さらに自転車に乗って、当時は松本市内丸の内にあった市の図書館へ通ったものだ。だから、市の図書館というものに出会ったのは、やはり小学校時代だった。漫画の週刊誌が発行され始めた頃だった。月刊の冒険小説にも興味をもったのだ。それ以来、東京に出て来てからも、学校以外の公共図書館にはかならず通った。当時は冷房が入っていない図書館が多く、汗がたらたら出て来た思い出がある。これは、船橋市図書館だ。

市の図書館が多様性の典型施設であるといえるのは、時間によって利用者が異なることだ。この世代間の複合機能があるから、これを組み合わせた利用を図れば、市の施設として、たいへん好ましいところだといえるのだと思われる。午後の3時頃、この武雄市図書館に着いたのだが、多かった利用者は、子どもと主婦層だった。中央部の児童書コーナーはやはり市の図書館のメインなのだ。5時になると、アナウンスが流れて、児童が家族同伴でない場合には、帰宅するように促される。このころから目立つのが、中学・高校生でおしゃべりを楽しみたい人びとは、外のテラスで、マフラーを巻いて粘っていた。寒かろうに。

そのあとの時間帯には、比較的若い層が目立つのだが、仕事帰りの人びとなのだろうか。カップルで一緒に本を見ながら相談しているのは、旅行の相談か、仕事場の宴会の相談なのか、都会での図書館では見られない風景も見られる。

職員は、社員5名、契約社員13名、パート26名で運営されているとのことだ。現在では、昨年4月開館からすでに、8ヶ月を過ぎているので、当初社員11名体制で動いていたのよりも、手がかからなくなっていると言うことだ。結局、考えてみれば、固定的な費用部分については、C株式会社の共通運営で行うことができるので、純粋に運営費部分だけで良いのだということである。契約社員というのは、専門職の司書で、主として選書が任務だと言うことだ。評価は、入館者数と貸出冊数であり、これらの数値管理は通常の図書館と同じである。指定管理者であるから、年度毎の監査は受けるが、3ヶ月毎のC株式会社内での監査があるとのことだった。そこでは、費用対効果として、新規購入冊数に対して、貸出増加冊数がどのくらいだったか、これにはより効果的な貸出活動の評価が行われることになる。

0120_8 結局、C株式会社が民間企業として、指定管理業者として参入するメリットは、固定費部分の節約ができる点と、複合的なサービスを提供できる点だと思われる。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。