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2013/12/14

幕張で、卒業研究発表会

1214 年末になると、楽しみな卒業研究発表会が始まる。放送大学は全国組織なので、幕張本部へ来ることのできる学生の方は限られてしまうし、また「社会と産業」コースだけの発表会なので範囲も絞られるが、それでも今年は、以下のとおり多彩な論文発表が行われた。

テーマ

1.福島原発の事故後、人々の原発に対する意識はどのように変化していっているのか

2.まちづくりで協働する主体の相互バランスについて

3.日本型自動車ビジネスの限界利潤追求から利益追求への転換

4.管理職に求められる経営的能力の開発プロセスについて

5.IT業界への就職に関する考察

6.EPSとリスクプレミアと株価変動率の関係

7.千葉の農業、過去、現在、将来へ

8.企業の「社会的責任」の中の環境に対する国内企業の取り組みについて

9.鞆の浦景観訴訟について歴史的・文化的および自然景観保存の観点から

10.政治行政がもたらした郵政民営化社会情勢

11.道路交通法 危険運転致死傷罪に関する一考察

12.アメリカのユダヤ・ロビイその政治と経済力

13.なぜ駅弁は外装を纏うのか

14.従業員持株制度の財産形成策としての持続可能性

15.国際貿易に於ける交換の意義変動する国際決済通貨の下で

16.環境問題に対する日本の国際貢献政府開発援助を通して

1214_2 卒業研究であるから、玉石混淆であることは間違いないが、それでも集まってくるこの範囲の広さは、放送大学の特徴を十分に現していると思う。先生方やギャラリーからの質疑応答・議論で沸いた。

1214_3 発表会が終了した後、恒例の懇親会が研究棟の会場で始まった。懇親会は、もともと旧「産業と技術」コースの伝統から引き続いてきている催しだ。K先生をはじめとして、「産業と技術」の先生方が積極的になるときだ。今回も、こんなことがあった。

学生の方々がひとりずつ卒論の苦労話を話すのだが、学生の話より増して印象に残ったのは、広島からみえたT先生の話だった。一年間、放送大学の学生を受け持っていただいて、たいへん優秀な論文を成就させたのだ。その気持ちはたいへんわかる気がする。すっかり学生の論文に魅せられてしまい、熱のこもった大スピーチを展開なさっていた。手前味噌になってしまうが、それほど放送大学の学生の書く卒業研究には、魅力的なものも多いのだ。

全員が何かしゃべらなければならない、ということだったので、わたしは「卒業研究と修士論文とどこが違うのか」ということを短くスピーチした。

卒業研究の良いところは、「荒削り」であるところだと思う。もちろん、修士論文を技術的にも上回るような論文も数多くあるので、「荒削り」という意味は、未完成だという意味ではない。コーヒー豆でも、「粗挽き」があるように、「荒削り」の魅力があるのだと思われる。

それは技術的でもない、テーマの正当性でもない。微妙な問題なので、最終的には結局は読んでもらうしかないが、今年の傾向からすると、「これについて書きたい」という想いが前面に出ている論文が多い、ということである。しかし、これが前面に出る自体が、修士論文指導では抑制される傾向がある。

論文を書く本来の目的は、書く人の「好奇心」にあると思う。その好奇心の良い面がでれば、素晴らしい論文になるのだが、感情や規範ばかりが走ってしまって、真理を貫くところがおろそかになってしまいがちなので、好奇心には注意が必要であるのは、その通りなのだが、それでもやはり、書くに値することを感じさせる、好奇心は重要だと思う。

スピーチの途中、相変わらずK先生が茶々を入れて来て、「修士論文を書くことから入った成れの果てが、ここに並んでいる先生方です」とおっしゃった。わたしはそこまでは言うつもりはなく、実際言わなかったのだが、「当たっているな」と心のなかでは同意したのだった。

1214_4 先行研究が重要で、先達の成果を受けて、論文は書かれるべきだ、と一般の大学院ではみんなが教えられて、その結果「先生」となったのだ。だから、好奇心に走らせて、純粋に書きたいテーマを自由闊達に書くことの出来る卒業研究は、たいへ1214_5 ん羨ましい制度なのだ。人生の第一論文では、自分の情熱を傾けている、価値あるものを書くべきなのだ。1214_6 その意味では、卒業研究は修士論文とはまったく違う論文範疇に属すると言ってよいのではないかと思っている。その結果として、「荒削り」であるほうがむしろ好ましいとさえ言える。それが、第二論文へ繋がっていくのだと思う。

1214_7 席は海浜幕張のダイニングへ移り、今年度の忘年会となった。今年も、全国の清酒が集められているC店にて、美味なるお酒をたっぷりといただいたのだ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。