« ゴルトベルク変奏曲と是枝映画の解釈 | トップページ | 遠出の日曜日散歩 »

2013/10/13

「横濱」の遊歩に積まれたもの

1013 毎年恒例の横濱ジャズプロムナードへ、今年も向かう。昨年はヨーロッパから来た素敵なジャズクァルテットが午前中から掛かっていて、関内小ホールが満員で入れなかったこともあって、今年は昼食をまず取ってから、余裕をもって、関内ホールへ向かう。近くの馬車道十番館でカレーを食べる。コーヒーも専用のカップが良い形だ。1013_2 まだ開いたばかりで最初の客だった。天井の高いこの喫茶室へ座っていると、陽光が差し込んできて、外は涼しくなっていることを忘れ、休日の朝のゆったりとした街の空気を感じることができる。1013_3 今日は、横浜という「場所」に座りこんで、土地から挙ってくる雰囲気を吸い込みたいと考えている。

1013_4 娘が甘いものがある、といって、関内ホールの隣りにある飴屋さんへ入っていった。町歩きにもジャズを聴きながらも、口が寂しくなるのだ。

1013_5 「組織立った混沌」というものがジャズの本質だとちょっと利いた風なことを言わせてもらいたいと思う。「アドリブ的協力」とわたしは勝手に呼んでいる。本人たちは「打ち合わせのない対話」を行っているのだ、という比喩をよく使う。1013_6 昨日、ジャズプロムナードの実況ライブをNHK-FMで行っていて、その中でも演奏者が使っていた。けれども、これはあくまで比喩であって、わたしたちでさえも、対話を行う場合には、打ち合わせをしてから対話を行う場合もあるし、まったく初対面でそのまま対話になる場合もあるのだ。対話にも幅がある。

1013_7 今日、街角ライブまで含めると、5カ所以上回ったことになる。けれども、やはり今年の圧巻は、「静と動」の対比として聴いたのだが、恒例の渋谷毅ビッグバンドと板橋文夫のビッグバンドが良かった。この場所でないと、聴くことができない。Youtubeにも載らないのだ。それらを聴いていて、アドリブ的協力には、二種類があることがわかったのだ。デュオやトリオであれば、対話のきっかけはほぼ目線で合図を取ることで可能である。そしてまた、ジャズであるからには、たとえビッグバンドであっても、多くは当初の約束が何小節目にある、と知らされていれば、問題がない。1013_8 ところが、ビッグバンドで、個人のアドリブが途中挟まれたとき、再び多数者同士の曲に戻るとき、このときが興奮するのだが、ビッグバンド特有のアドリブの一致を行うのだ。これは、少人数の一致と、ビッグバンドの一致とはちょっと違っているように思える。

1013_9 なぜ一致して、頭を揃えて、途中からビッグバンドとしてのアドリブへ入れるのか。普通のビッグバンドであれば、リーダーが「指揮者」となって、その合図を出すのだ。デューク・エリントン楽団もそうだった。(先日テレビで観たサイトウキネンオーケストラと大西順子の「ラプソディ・イン・ブルー」演奏でも、トリオのアドリブ的演奏から、オーケストラの演奏へ戻るときに、小沢征爾がきっかけを取るのに苦労していた。1013_10 だから、音楽では普遍的な出来事なのだと思われる。)ところが、今日の両ビッグバンドでは、リーダーが合図を出すのはかなり限られていて、相互に音を出し合って、頭出しを探っていた。アドリブ的協力は、一致しないときにこそ発揮されるものであって、一致しないものがいつの間にか不思議に一致したかのような状態を醸し出すところで有効なのだ。

1013_11 その中で注目したのは、限られたいくつかの小節で、バンドのひとりが、前面に出て来て、「さん、に、いち」と指を折って示し、きっかけを指示する場面が見られたことだ。全体の2時間のなかで、ほんの1回か2回だけだったが。1013_13 それによって一致された音は、またまたそれで活気づくのだった。このとき、全員が賛成しているわけではないが、それぞれに一致をイメージするのだと思われるが、そこにそれぞれが異なる、アドリブ的興奮が生まれるのだ。

1013_14 今年のジャズプロムナードは、食事を忘れてしまうほどだった。感性の呼び戻しに有効だった。帰り道、伊勢佐木町のコーヒー店へ入って、1013_15 今日最後の一杯を、娘と話しながら飲む。身体からは当分の間、「ダンダ、タッタ、ダンタッタ・・ジャンボ」というリズムが抜1013_16 けないだろう。

« ゴルトベルク変奏曲と是枝映画の解釈 | トップページ | 遠出の日曜日散歩 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/58593081

この記事へのトラックバック一覧です: 「横濱」の遊歩に積まれたもの:

« ゴルトベルク変奏曲と是枝映画の解釈 | トップページ | 遠出の日曜日散歩 »

『貨幣・勤労・代理人』(経済文明論)

  • “「貨幣・勤労・代理人」"

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。