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2013/07/24

高村光太郎展をじっくり

0724 「高村光太郎」展が開かれている、千葉市美術館へ行く。なぜ今、高村光太郎なのか、という点は、おそらく生誕130年後における、近代日本の美術史上の位置づけを巡っていくつかあるだろうと想像させられる。古典的な趣が近代日本のなかでどのようにかんがえられていたのかは、とくに興味あるところであるが、これらは評論家にまかせておきたい。

実際に観てみると、なぜというのは、直ちに理解できる。ひとつは、ロダンや荻原碌山との関係で、ブロンズの人物彫像のひとつの時代を切り開いたということだ。もうひとつには、やはり木彫の見直しが必要だということだと思う。

0724_3 たとえば、1935年制作の高村光雲一周忌のブロンズ像は、前に立つと、その迫力に圧倒されて、夢の中まで出てきそうな勢いがある。これは信州の碌山美術館所蔵だから、何回か観ているはずだ。今回展示されていたもののなかで、成瀬仁蔵像にも、思いあまって、像から飛び出して、こちらの現実の社会へ飛び込んで来そうな感じを抱かせる。像自体のエネルギーには、ものすごいものがある。

最初に高村光太郎について聞いたのは、ロダンを好きだった父からで、家に著書がいくつか有った。だから、母も展覧会に行きたいと言っていたくらいだ。だから、彫刻家としてよりも、詩人や評論家として家の中では存在していた。

それでは、彫刻に出会ったのはいつかと、思い出してみると、小学校時代に碌山の彫刻と一緒に観ていた作品以外では、中学校の修学旅行で十和田湖へ行き、湖岸にあった二人の裸婦像を観たときだ。当時は、二人だと率直に思っていた。手を合わせて、触れるか触れないかの構図に興味をもった。それで、今日はじめてわかったのは、片方が内部の人で、もう片方が外形の人だということだ。二人ではなく、まったく同じ人を二つ描いて並べたのだそうだ。

0724_2 今日、一番気になったのは、光雲と光太郎との親子関係と、それに妻智恵子との関係のもとに制作された、昆虫や野菜、果物などの木彫だった。光雲は江戸時代からの木彫師で、後に明治期に教壇にも立つことになるのだが、光太郎に対しては、何も教えなかったらしい。光太郎は、6歳から木彫を始めるが、職人的な教育のもとにあり、何も教えずに、見よう見まねの実践的な伝授によっって、木彫を行ったのだと書かれていた。光雲は他の弟子たちには教えたのだが、光太郎には一切なにも教えることはなかったのだ。論文指導なんて受けたことがない、というのが大学院教育だったが、同じようにクラフト的教育の本質はこのようなところにあるのではと思う。

0724_4 16歳のときに彫られた、木彫の「羅漢」がある。才気走った、すっと切れそうな浮き彫りだ。技術的には、並ぶものがないほどの素晴らしい技だ。けれども、どうゆう訳か、この描き方を発展させること無く、20年以上も木彫からは遠ざかることになる。もちろん、逆に言うならば、20年以上経ってやっともどってきたのだ、ということができる。親子関係や夫婦関係の複雑な問題を想像させて、たいへん面白かった。その結果が、「柘榴」であり、「桃」であるのだ。ざくろの脇に、光太郎の詩がおいてあった。

さくろの実

  はなやかにして

     ややにかし

  このあちはひ

    たれと

      かたらん

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。