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2013/06/13

神楽坂で会う

0613_2 娘と会うことを見せびらかすつもりはないが、会うことを口実にして、神楽坂に出ることを見せびらかすのは、大いにあり得ることだ。ところが、邪心が見透かされたように、梅雨が戻ってきてしまった。霧雨に濡れる坂道を見やりながら、待つ。地下鉄の出口には、会社から出てきたような、待ち合わせの人びとが視線を逸らしながら、集まっている。傘を片手に持っているので、つい注意を怠って、店の前ではどうしても隣りの人を突いてしまう、というのが都会の良いところだ。会社を出て、ちょっと歩いたところに、美味しい店が集積していることが、その街が栄えている指標となる。

0613_3 歩ける距離にあるのだから、当然坂道を降りてくると踏んでいた。それで、坂道を下ってくる人や、登っていく人を眺めていて、しばし想像力を発展させた。たとえば、虚ろな目をして、おそらく友人を待っていると思われる人が、電柱の向こう側にいた。軽装だから、きっと近くの会社から出てきたのだと思われる。友人が現れると、すぐに方向を定めていたから、これから話す内容も、これから行く店も、きっと決まっていたのだろう。

0613_5 うしろから、お待たせ、と声がして、雨が降っていたから、地下鉄を利用したとのことだ。さっそく、約束していた甘味処の「K」へ入る。ちょっと前まで、満員で待つ人もいた。けれども、微笑ましかったのは、甘味処であるにもかかわらず、男性ひとりで出てくる人が結構いて、そうなのか、とも思っていたのだ。そのひとりが初老の男性で、上品な方だった。歩きはじめて、店員が追ってきた。傘を忘れて出たらしい。わたしもそうなるのは、もうちょっとだ。

0613_9 高知へ行ってきた土産で、白あん風味の小夏羊羹、猫の手ぬぐい、陶器のキャップのついたコルク栓、しゃれた文芸誌などなどのガジェットを渡し、かわりに、父の日のプレゼントを手に入れる。高級感のあるコーヒー豆と、かねてより、民芸店「B」へ注文を出しておいた、しのぎの白磁ポットだ。ちょっとエビで鯛的な感じがしないでもないが、孝行娘が言うには、父の日だから奮発したのだそうだ。

 

0613_11 ランチを食べ始めてから、ここが甘味処であることを計算に入れるのをすっかり忘れていたことに気がついた。ご飯ものを二人でシェアして、甘味をそれぞれ頼むべきだったのだが、逆にご飯ものをそれぞれ頼んでしまったのだ。ちょっとしたことだが、甘味を楽しみたいと思っているものにとっては、重大問題なのだ。

ということで、鳥釜飯を釜一杯食べてしまった。焦げ目がすこしついていて、控えめな醤油味がよくしみ込んでいる。おしゃべりしているうちに、すこし余裕も出来てきたので、写真のあんみつ白玉を取ることにする。辛口と甘口の両党使いの家系に生まれついたことを、先祖に感謝しつつ、蜜をたっぷりと白玉にかけていただいた。甘みを抑えた餡子が、蜜と混じる頃には、多彩な味となって、舌を驚かせる。大げさなようだが、甘味のために生きてきたような気がするから不思議なのだ。そして、欲望はつねに際限のないもので、隣りに座っている人が、この店の名物「抹茶ババロア」を頬張っているのをみて、次はかならず、これを取ろうと思うのだった。

お腹が満たされたので、眠くなる前に、W大へ向かう。地下鉄口を登る頃から、学生たちの傘で前が見えなくなる。大学から帰る学生と、これから大学へ行く学生がちょうど門のところでつかえてしまっていて、通勤列車並みの混雑だ。この混雑の集積にW大のひとつの魅力ではあるのだが、この行列は何とかならないものだろうか。

今日の演習では、「教員」という職業についてのインタヴューを取り上げたのだった。毎回、それぞれのグループの工夫がダイレクトに現れて興味深いのだが、この点では学生よりもわたしの方が楽しんでいるのかもしれない。今日、素晴らしい発表があった。学生の側にはあまり訴えていなかったようだが、わたしの側ではたいへん面白かった。

教員という職業の本質を挙げてもらっている時に、なぜ教えたこともない学生がこのような発想ができるのか、と思うほどのものだった。教員だから、教える側の論理が優先されていくことを他のグループは突いていた。たとえば、「教育訓練が第一原則」,「教えることにベストを尽くす」ことなどなど、である。

ところが、一つのグループが、インタヴューの中では地味に取り上げられていた「子どもらしさ」を挙げてきた。これはあまり期待していなかった。ちょっと斜めから突かれた感じだった。「子どもらしさ」は子どもの側の論理であって、教員側の論理ではないと、カマをかけたら、なるほどという論理を用意していた。つまりは、多様性・複数性ということだが、相手の論理が自分の論理になり得ることを、なぜかこのグループはわかっていたらしい。職業というものは相手があってはじめて成立する、という当たり前のことを伝えることができたのは、今日の収穫だった。

帰りに期限が来ていた本を、4冊T図書館へ返した。かばんが急に軽くなったのを感じたので、寄り道をしようと企てたが、旅の疲れが、今頃になって出てきたらしいので、そのまま目をつぶり、電車に揺られて帰ることにする。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。