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2013/06/25

友人が集まる

Photo_32福井から京都へ戻る。ずっとその間も、仕事は付いてまわってくる。この時期は、学期ごとに通信制の大学特有の通信問題への添削があって、今日もねじり鉢巻で、ボールペンのインクが無くなるほど、書きに書くまくっている。だんだん疲れがたまってきて、観るほどに悪字がさらに乱れてしまう。Photo_33 丁寧に書いても、悪字は悪字なのだと諦める。受け取った学生の方には済まないが、この答案が関西出張の間に書かれたことを、答案から聞いていただければ、と思うが、事実はこのとおりなのだ。

Photo_35 昼食まで頑張って、いつもこの宿に泊まるときに訪れるカフェ「K」へ滑りこむ。ちょうど窓際のカウンター席が一つだけ空いていて、腰を落ち着ける。目の前には文庫本が並んでいて、仕事を続けるには、ちょっと気が散ってしまうのだが、それでも何時来ても、Photo_36 気の置けない雰囲気がある喫茶店なのだ。ランチのスープとパン、そしてコーヒーを取ることにする。

Photo_37 旅行に出ることは、日常的ではないことを行うためにでるのだから、このような落ち着ける場所を見つけてしまうことは、旅行の趣旨と矛盾するのだが、そうはいっても、これほどたびたび同じ宿に泊まってしまうと、やはり近所にいつも行くような場所をみつけてしまうことに、Photo_38 つまりは、旅行にあっても日常的な場所を求めてしまうという習性が、人間にはというよりも、わたしにはあるらしい。

さて、年を取ってくると、昔の友人と会う楽しみがあると思う。それは単に、将来どうなるのか、とその昔想像していたことが、ほんとうのところ、実際にどうなったのか、というありきたりの関心を満足させるというよりは、むしろ年を隔てて、新たな関係が生ずるのではないかという、楽しみもあるから、と思っている。けれども、そこで想起されて来ることは、やはり過去のことが多くて、それで記憶が蘇ってきてしまって、じつは困ってしまうのだが。

大学時代の友人たち、三人が集まった。ひとりのSくんとは、以前会ってから、10年くらいが経っている。じつはもう二人の、SくんとKくんとは、じつに大学卒業以来だということだから、かれこれ40年くらい経っていることになる。離れてしまって、違う生活をする時間の方が圧倒的に多いにもかかわらず、会えばそのまま以前の友人のままでいると言う関係は、いったい何なのだろうと思う。

三人の共通点は、大学から大学院へ進んだということと、大学1年生のときに、経済学の自主的な研究会を三人で作ったということだ。最初に選んだテキストが、なぜか「ドイツイデオロギー(マルクス)」であって、わたしにとっては、なぜ参加したのか、わからないところもあったのだ。もっとも、経済学を勉強することでは一致していたが、研究会をどのように利用するのかは、やはり三人三様だったと、後で知ることになる。

Photo_39 今回、集まったところは、Kくんの家のそばにある、「びわ湖大津館」というところで、旧琵琶湖ホテルを移築したものだ。明治期の宮殿を思わせる和洋折衷形式で建てられていて、重厚さを感じさせるホテル建築だ。広い玄関を入ると、赤い絨毯が迎えてくれる。いまは、レストランだけが営業されている。それでゆったりと、長時間滞在しても大丈夫な、ある種隠れ家的な場所である。

Kくんの奥さんも一緒に、楽しい会話を楽しんだ。印象に残っているのは、学生時代に持っていた、それぞれの個性が丸くなって出ていた、ということだった。このことは、年を取ると、丸くなるということではない。個性は、ほぼ学生時代そのまま温存されていて、40年が経ったとは到底思えないほどの、同じような会話のリズムであり、メロディーであるのだが、複雑さが増したな、という感想である。多層的な会話になった分だけ、単純さが表に出なくなったということだと思われる。

人生の多くの時間を共有した訳ではない。一緒に行動したのは、ほんのわずかの時間であったにもかかわらず、決定的な瞬間をいくつか共有したのが、友人の関係だ。決定的といっても、人生で必ずしも重要である必要はない、けれども記憶のなかではかなりの部分を潜在的には占めているかのように、思われる。この時間を超えた友人関係とは、ほんとうに不思議な関係だと思う。

2年生か3年生の時に、この三人が加わって、コンパを行い、野毛山へ向かう坂道を数人で登っていった。かなり酒が入っていて、誰かが溝に落ちたりした。こんな酔い方も学生時代だったからだ。飲み始めたら、止まらないという飲み方だ。それで、酔い方も激しくて、ちょうど交番前を通りかかったときに、Kくんが叫んだのだ。お巡りさん、過激派がいます、と巡査たちは笑って受け流してくれたけれども、当時は大学内で、たびたび内ゲバで人が死んでいる時代だった。

Photo_40 Sくんが新幹線で東京へ帰るということで、京都駅で分かれた。そのあと、夕飯を食べるために、宿の近くの蕎麦屋さん「W」へ行く。お酒を飲みながら、昨日の蕎麦が美味しかったな、と思って、今日も再び、梅おろし蕎麦を食べてしまったのだ。

Photo_42 帰り道、宿までの道筋には、老舗の店が並んでいる。先日終了したドラマ「鴨、京都へいく」に出てきそうな老舗旅館が暗くなった夜道にぬっと現れてきた。隣りの骨董屋には、今回は伊万里焼きが並んでいた。夜になっても、わたしのような観光客が引きも切らず注目する街に、どのようにしてなったのだろうか。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。