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2013/05/22

遍路文化に触れる

今、使っているカメラは初期動作が速くて、シャッターチャンスを逃さない。今までになく愛着を持っていた。ところが、昨日バスの中から、河の様子を取っていたら、そのままレンズが納まらなくなって、壊れてしまった。シャッターを押しても、うんともすんとも言わない。四日目は、カメラのない旅行となった。

江戸時代に生まれた文化には、いろいろ有るが、レジャーに興味を持っているので、余裕を持った庶民がどのような暮らしを行ったのか、ということにはとくに気が惹かれる。金比羅参りもおかげ参りと並んで、近世の大旅行装置だと思っていたが、もう一つ遍路文化というものに以前から興味があって、人生が終わりに近づくと、今まで巡ってきた道筋が思い出されるという信仰はたいへん好ましいと思うようになった。

もちろん、無信仰者のことであるから、遍路という決められた道筋も重要かもしれないが、自分の中の遍路にも注目する年代となったということなのだ。それで前にも言ったように、妻が四国一周旅行を提案した時に、すぐに賛成したのだった。もっとも、妻がなぜ四国旅行なのかは、謎だったのだが。なぜ四国なんだろうか。

途中の道みちに、お遍路さんたちがちらほらしていて、心の遍路を目指したにもかかわらず、わたしはバスに乗っているという引け目を感じながらも、四国一周を目指したのだった。白装束姿も心の中に持って、遍路宿に泊まるつもりで、歩き続けたいと、バスに揺られたのだった。

それでわかったことは、遍路という制度は、宗教的な意味も多くあるのはもちろんだが、歩き続ける中で、自分に帰ってくるものがたくさんあり、このことの影響が数多く押し寄せてきて、本当のところ、この四国だからこそ、思い出されることがあるのだと、思ったのである。

日頃、忘れていることが、風景を借りて、自然に載せてあらわれるのだった。たとえば、吉野川上流にある、大歩危の遊覧船に乗る。ここには、激しく動く水がある。この水をたどって行くと、最後は徳島の大都市に至ることはわかる。あの溢れるばかりの雨のときに徳島へ行ったことも思い出した。

だから、水はふつう近代の中では、山村から都市へという下流化の流れとして現れる場合が多い。ところが、今日はこれを遡って、都市から山奥へとたどることで、日頃水について、水の力の大きさについて思わなかったことが、循環的に思い出されるのだった。この写真に撮りたいと思ったところは、水深が20メートルにも達するのだ。この水の奥を流れる水が、どのようにして、私たちの体を流れる水となるのか、不思議だと思わない方が不思議ではなかろうか。

遍路が雨に濡れて歩くシーンで思い出すのは、笠だ。日よけにもなるし、雨よけにもなって、都合がよい。突如、このシーンと全く異なる情景を思い出した。以前、妻と北海道旅行に行ったことがある。若いときの旅行は、自分で組むものと考えていたから、途中寄り道が多くなる。それで、太陽がじりじりと照る中で、両側にトウモロコシかジャガイモ畑が地平線まで続くような道に出てしまい、それでも二人で歩き続けたことがある。それで、何もないものだから、どうでも良いような話題をしゃべっていたら、違う道を歩こうということになってしまった。なぜそうなったのかわからないのだが、人生の長い中には、このようなことは二度三度あっても不思議はないだろう。結末はどうなったのか、いまでも不思議なことがあったと思っているくらいだ。

たぶん、「旅の重さ」を感じながら、互いに違うことを思い出しながら、同じ道をえんえんと歩き続けるような気がする。海の浜の砂路を歩いていたら、いつものように、通路を外れてしまい、砂浜の波打ち際に座り込んでしまった。大音響の放送が遠くから、注意を喚起してきたのだが、もう手遅れで、海を見つめ始めたら、止まらない。旅の終わりは、意外と簡単にやってきた。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。