« 遍路文化に触れる | トップページ | 牛込神楽坂の、本がたくさん置いてある喫茶店K »

2013/05/26

亘理町いちご農家のMさん訪問

526 N先生プロジェクトで、亘理町に来ている。いちご農家のMさん訪問も、「いちご株券」のイベント後はじめてである。いちご収穫が最後の摘み取りの時期を迎えていて、そろそろ苗を育てる作業に入ろうとしている、という時期だった。526_14 社長と呼ばれている奥さんが、ハウスに出ていたMさんを連れてきた。いつものように、身体を猫背のように前へ傾けて、道を曲がってから、恥ずかしそうにこちらへ顔を向けた。

526_4 午前中に、N先生のゼミ生だったOさんが石巻で、訪問看護ステーションを新たに開いたのを見学してから、こちらへ回ったのだ。Oさんのことは、エピソードが多すぎるので、またいずれ別に取材したいと考えているので、そちらへ譲りたい。N先生には、数々の紹介をいただいてたいへん感謝している。

526_5 今回の訪問で、もっとも印象的だったのは、復興の帰結ということだった。Mさんたちのハウス栽培と、震災復興援助によるハウス栽培の違いだった。これらの両者の違いには、以前からたいへん興味を持って、拝見させていただいたり、意見を伺ったりしているのだが、わたしの見ていることの中でも次第に大きな問題となってきている点である。

526_6 簡単にいえば、Mさんのような「自発的な復興」と、いちご団地のような「公的援助による復興」の違いということになる。「私」と「公」との違いがくっきりと出た例として、たいへん興味深い。まず、支援のスピードの違いがある。前者は、震災直後から自前のハウスをボランティアの526_7 人びとにも助けられながら、早くから立て直して、既に昨年からいちご栽培を行っている。それに対して、後者はようやくハウスが今回出来上がり、うまく行けば、今年度からいちご栽培が最新鋭の施設で可能になるはずであるという段階に止まっている。この違いは何なのだろうか。

526_8 規模の違いも否定できないどころか、これが極めて大きな問題だ。あまり正確な数字ではないが、Mさん一人で、ボランティアと組んで作るハウスならば、5連の50メートル位のものが8棟くらいで、建設する上で、限界かもしれない。これだけ作るのに、数百万円かかっている。借りた機器類の費用を含めれば、もっとになるかもしれないが、それでも、絶対に1千万円にならないだろう。

526_9 けれども、これに対して、復興予算で出来たものは、10連の50メートル位のものが8つ一つのハウス施設にはいってしまう。この一つの施設で、コンピュータ制御の給水や、温度調節、風向が自動化されていて、全部で5千万円だそうだ。規模がかなり大きいとはいえ、それでも、予算の規模は桁違いだ。

526_10 Mさんは、盛んにこの違いを云々していたが、たしかにそのとおりだと思われる。公的な援助というものには、規格のあることは理解しているのだが、このように当事者の参加できる部分を最小限にしてしまうのは、やはり生産ということを無視している。作るということは、全体の問題であ526_11 り、一つ一つ有機的に生産に組み込んでいく必要があるのだと思われる。全体がパックとしてシステム化されているから構わないのだ、ということは、農業生産物にとっては、致命傷になる可能性もあると思われる。

Mさんも最終的には、いちご団地に加わる判断を最後に見せたが、最初の自主的な復興と、どのように調和させるのか、傍目ながらたいへん気になるところだ。このつぎ、取材するときに聞いてみたい点のひとつだ。

526_12 日が長くなったとはいえ、国道を仙台へ向かう頃には、日が完全に落ちてしまい、いつものように夜道を走る事になった。車を運転できないものにとっては、役割を免除されていると同時に、何んだか申し訳ないような気分にもなってくる。最終的に、良い取材ができれば、恩返しになるだろう、というくらいに楽観的に構えることにしよう。

526_13 今回も、震災のときに、塩害の状態を見るために、Mさんが砂地にいちご苗を植えていて、それがどうなったのか、2年間の耐久生活の様子を見に行った。何度目かの確認だが、毎回思うところが見つかる。すでに2年間の間に、復興のための耕作機などが入っていて、多くの苗は刈り倒されていて跡形もなかった。

三カ所くらい巡って、目印も定かでなくなってもう駄目かと思った。けれども、最後のところで、ひとつだけ頑張っている苗をやっと見つけた。肉厚の葉っぱを付けていて、おまえ頑張っているな、とみんなで声を掛けてきた。当たり前のように、見えないところで頑張っているものによって、世の中は成り立っているのだ。

« 遍路文化に触れる | トップページ | 牛込神楽坂の、本がたくさん置いてある喫茶店K »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/57510607

この記事へのトラックバック一覧です: 亘理町いちご農家のMさん訪問:

« 遍路文化に触れる | トップページ | 牛込神楽坂の、本がたくさん置いてある喫茶店K »

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。