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2013/04/14

コレクターとエディター

映画「舟を編む」を観ていて、「用例採取」カードというのに興味を持った。カードと言っても、原稿用紙の小さなタイプのものである。机の上にいつも束ねてあって、今までに無いような言葉を聞くとすぐに、採取して、その用例採取カードに記載されるのである。けれども、このようなカードは決して珍しくなく、わたしの世代ならば、梅棹忠夫氏が流行らせた「京大カード」があって、本を読んで、興味深い考えや言葉を書き付けておくのだった。

パソコンが流行ってからは、カードを持ち歩いている人は見なくなった。つまり、カードは最終的には、コンピュータに入力されるので、現在の学生ならば、最初からパソコンに打ち込んでしまうだろう。だから、昔カードにこった経験のある人ならば、現在なら大概は、パソコンにも堪能なはずだ。

違った見方をすれば、昔カードを使わなかった人は、現在もパソコンも使わないだろう。と思う。なぜカードとパソコンの関係が気になったのかといえば、辞書造りというのは、コレクターなのか、それともエディターなのか、ということが気になったからである。

それで、映画によると、コレクターを演じるときと、エディターを演じるときと両方があることになるらしい。最初に、カードで集めているときは、コレクターに徹しており、オペレーターに入力をすべてお願いしている。そして、整理がついたところで、エディターとなって、執筆者の依頼や語釈を行ったりするのだ。

映画からは、この辺の事情がよくわらなかったが、辞書を造るということは、海を渡るようなものだという表現を使っていた。つまり、羅針盤のように、海を渡るときの道具として、世間を渡るための辞書がある、という消費者側の立場を、取り入れたものだったと思われる。

けれども、この映画の中心は、辞書を造る側、編む側の物語なのだから、海を渡るための辞書と言うよりは、言葉を編んで、この題名のとおり、舟を造る物語を期待して、映画を見ていたものにとっては、ちょっとな、という感じだったのだ。主人公が海に溺れるシーンがあったが、辞書を造るときには、海に溺れるというイメージではちょっとずれがあったのだ。

むしろ、辞書を造るというのは、言葉自体を作り出すことで、言葉を新しくしなければならない。言葉自体を作り出さなければならない、というシーンを、いくつかは見られたものの、原作のようにもうちょっと中心に据えてもらいたかったような気がした。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。