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2013/03/18

言葉を超えること

0318朝早く起きて、宿を出る。午前中は図書館へ籠もって、仕事、ワークワク。校正を行っているのだが、なかなか進まない。編集者Nさんの顔が見えてくる。

それも、どうも1章分の辻褄が合わないということが、わかってきていることもある。本も一冊になってくると、情報量が格段に増えてきてしまって、あちこちで初期的なほころびを見せている。今回とくに参っているのが、内容があちこちの章で重なっていて、繰り返しが多いという点であり、同じ論旨で、違う章でも使っているらしい。

0318_3カミュのごとくに、繰り返すことに意味があるならば、編集者も納得がいくだろう。どうもそうではないらしい。と、人ごとのようなことを言っているから、催促がきてしまっているのだ。それで、京都にきてからも、午前中は図書館へ籠もって、本来の資料収集と同時に、校正に血道をあげ、陳列されている本を頼りに、参考文献の注を充実するために使っているのだ。

0318_4強いて言えば、もう一つ情熱がぐぐっと来ていない、足りないのだと、自分では思っている。いつもなら、これだけの原稿を出したからには、一気に最終へ向かうはずである。それでと言っても理由にもならないが、午後からは気分を変えて、頭に栄養を与え、甘いものを仕入れようと、鴨川を渡って、いつもながらの饅頭屋さんの行列に並ぶ。

これだけの大きな豆餅なのに、お腹に入ってしまうともう一つ欲しいと思ってしまうから不思議だ。そして、これをお土産に、Kくんに会いに大阪へ向かう。

0318_5Kくんが別れる時に、示唆的なことを言っていたことを思い出した。もし人間がコミュニケーションということを必要とするとしたら、すでにコミュニケーションが成り立っている時ではなく、むしろ何らかの理由でコミュニケーションが途絶えようとしている時に、はじめてコミュニケーションが必要になるのだ、と。0318_6Kくんらしい、言葉の超え方だな、と感心したのだった。原稿を仕上げることも、コミュニケーションの一つだと考えるならば、今がちょうど途絶えようとしている時かもしれない。ここを超えたいものだ。

0317_9帰りに、祇園四条へ出る。南にすこし下った路地に入ると、京都特有の懐の深い、一軒家的な喫茶店が幾つかある。建仁寺の近くに、カフェ「O」があって、ちょっと長居して、気持ちを整えることにする。

表の赤を基調にした華やかさとは対象的に、内部の装いは、グリーンを基調にした落ち着いた部屋になっている。このところ追求している多様性ということを、喫茶店で追求したら、きっとこんな風になるだろうな、という佇まいだ。座りやすそうなグリーンのソファがあったけれど、残念ながら、空いていなかったので、少し高目の丸テーブルの席に着く。隣りが古本の書架になっていたので、森茉莉の短編集や、四方田犬彦の食卓の上の小さな混沌などを読みながら、時間を過ごすことができた。

0318_8ちょうど同じ頃入った女性客が、友人と待ち合わせていたらしく、近くの席に移ってきた。聞くともなしに、聞こえてきた話は、小さな人生相談で、人間関係を相談していた。

今日一日を振り返るのに、京都では徒歩圏内に、このような適当な場所がいくつかあるのだ。徒歩圏内というところが重要で、映画を見たり、ゼミを行ったりしたあと、ふらっと寄って、一日の終わりを迎えることができることが重要なのだ。0317_10こここそ、昨日述べた小さな部屋の複雑な構成をもった喫茶店なのだ。そして、利用する徒歩圏内の街の充実した場所なのだ。コミュニケーションの途絶えがちな友を呼び出して、ちょっとしゃべってみたいところなのだと思った。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。