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2013/03/06

ひとつの役目を終えて

一年間続いた、大学での一つの勤めを終えた。楽しさと苦しさの両方を味わわせてもらって、滅多に得ることができない経験だったと思っている。もちろん、仕事それ自体だけでなく、協力してくださった先生方と大学職員の方々に、絶大なる感謝を感じているのだが、それ以上に、民主主義的とはどういうことなのかを考えた一年でもあった。

0317 それは大学の一つの委員会での「委員長」と作業グループの「主査」だったのだが、社会科学を専門とするものとして、このような議論の中核を任されることは願ってもないことであった。それで、一年間という期限付きの職務を引き受けてきたが、それがようやく最終を迎えた。

委員会の内容については、守秘義務という今流行の考え方が支配しているので、言うことはできないが、さりとて、社会科学を学ぶものに取って、これを報告しないで、何を研究しているのだと言われかねないことなので、差し障りはないが重要であるところについて触れておきたい。

委員会や作業グループでの議論では、何が一番重要なのか。もちろん、目的は諸先生方の議論を整理し決定することなので、議論の最初や途中ではおおいに対立したりするのだが、そして譲歩もしたり、干渉したりするのだが、最後には一つの結論を導かなければならないところが面白く、大切なところだったことは、当然ながら間違いない。

実際の問題はたくさんあるのだが、言葉として残しておきたいことは、「議長の中間的というか、中立的な立場」ということだ。やってみればわかることだが、役割上、中間をバランスよく保つことが求められるのだ。議長だから、やはり議論の中での「縦の議論」は重要で、議論を程よく引っ張っていくには、議長のミクロ権力を行使して、時には多少強引な議事運営をすることもあり得るということだと、率直に思った。いくつかの誘導する手段は、暗々裏ではあるが試させてもらったことも、貴重な経験だった。程よさを知るには、極端も知っておく必要があるのだ。

だからといって、現在付き合いのある先生同士での議論だから、たとえば多数決ルールなどの、数にものを言わせるような強引な方法は採用することはできない。これは習慣の問題であり、「品性」の問題だ。

当然ながら、大学での議論は民主主義的な議論であるという伝統があり、最後には全員一致を目指して議論を行うことを基本にしている。最も良い案が出るまで、意見交換を繰り返すのが原則となっている。だから、「横の議論」ということが、もう一つの基本原則になる。

ところが、この「横の議論」というものを形成していこうとすると、並大抵の努力ではならないのだ。たとえば、原案が最初に出る。当然、反対論が続く。ここで議長の出番があり、これらの議論を整理して、何が対立点であり、何を決定しなければならないのか、あるいは、今回は決定を見送らなければならないのか、を示していく必要がある。比較対照をはっきりと示すことが必要で、ここで議論の中心が決まってしまうのだ。たびたび経験したのは、整理しても、異なる整理が絶えず出てきてしまって、何が議論の中心なのかが失われることがしばしば起こったことだ。このとき、効くのが常日頃からの日常からの議論だ。自分のことを考えてみると、やはり足りなかったのは、この「横の議論」だったな、と率直に反省しているところだ。

議長の面白さは、結局のところ何だといえば、縦の議論と横の議論の交差しているところにいて、両方をあるいは全体を観ることができることだ、と感じた次第である。

というような、反省の一日が終わって、家に帰り、早稲田大学のO先生のブログを開くと、わたしのことが載っている。表だってはそうは書いていないが、あまりにわたしのブログ更新が少ないので、それを促しているのだった。昔、宿題を忘れて、先生から促されたことを久しぶりに思い出した。また、新学期にお会いするのを楽しみにしている。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。