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2013/02/20

女性兵士の伝えるイメージ

現代の「兵士のイメージ」が変わってきている。以前に、湾岸戦争があったときに、女性兵士は人を殺せるか、あるいは殺す任務に着かせるべきか、という論争が、ニューズウィークだったか、あまり定かでないが一度載っていて、男女均等雇用もここまできている、広まってきていると感じたことがある。じつは、この論争の決着が着かないまま、現実は雇用だけでなくもっと遥かに進んでいることがわかる。

映画「ゼロ ダーク サーティ」を観る。Bin Ladenがパキスタン北部の村で、夜中の0時30分に米国特殊部隊に襲われて落命するドキュメンタリー手法の映画だ。ここには、現代の女性が戦場において、どのような状況にあるのかを映している。監督は「ハートロッカー」でオスカーを取った女性監督キャスリン・ビグローで、前作同様に、戦場の描写には現実感があった。主役はCIAの女性情報分析官だ。この冷血として描かれた女性を通して、現代的な戦場を克明に写していて、映画としての現実感はあふれるばかりだ。現代の米国を映した映画がオスカーを手に入れると言われているが、この映画の現実感は拷問などの道徳的な善悪判断も含んでいて、絶大なものがある。

女性が人を殺す職業に着くのか、拷問を行う部署に配属されるのか、という限界的な女性職業の在り方が現実に問われている。そのくらいに、女性の、それを通じて、翻っては男性の職業の範囲が広がっており、そこで生まれる状況は、女性だけでなく、すべての人間に突きつけられていることになっているのだと考えられる。つまり、この映画によってわかるのは、情報ということを通して、わたしたちが日常的に戦場にあることを隠喩として語っている。日常におけるすべての人間の限界状況を映し出していると解釈できる。

米国の衛星映像の鮮明なことは、思っていた以上にショックだ。家屋から出て遊ぶ子供や、男女の性別、年齢まで動作からわかってしまうと描かれている。北朝鮮のミサイル発射の衛星映像でわかってはいたが、これほど克明に、ひとつの建物の状態が映し出され、標的としてみんなに観られているのだ。世界中の誰でもが、このような鮮明映像の対象となりうる可能性があるのだ。インターネットで情報が国を超えて、戦場となっていることを頭ではわかっていても、実際の映像を観て、その情報の信憑性を確かめるまではなかなかこのような状況はわからないところだが、それが頭のなかにイメージとして叩き込まれる感がある。

さらに、グローバリゼーションの経済面と並んで、政治的・軍事的側面が見事に描かれている。9.11でやすやすとテロが国境を超えたのと同様にして、帝国の軍隊も、国境をやすやすと超えて、軍事作戦を遂行することができるのだ。さらに、国境を超えれば、問題となったような戦犯の拷問が可能になってしまうことも、現実に起こっていることで、その是非にかかわらず、この映画は現実的に描いている。たぶん、テロ側から観れば、到底許すことのできない場面もあるし、またテロを仕掛けられた側から観ても、まったく容認できないことが描かれている映画だ。でも、これが現在状況の一部を詳細に報告していることは間違いない。わたしたちは、依然として、戦争状態を生きている。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。