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2013/01/10

小都市の魅力は、見渡せるほどの土地に育つ人間関係の程良さにある

0110_2卒業研究の審査があるので、朝早く羽田空港をたって、讃岐の高松市へ来ている。久し振りの旅行のためか、足取りがたいへん軽い。朝寝坊の方なので、午前5時に出ることになるのは、辛くなるだろうと予想していたのだが、どうやらそういう問題ではないらしい。結局は、心の持ちようである。

0110_4ホテルに荷物を預け、この近くに静かな喫茶店がないかと、カウンターに聞くと、玄関の目の前にある「コルシカ」喫茶店を指さしてくれた。開店してから、日は浅いらしいが、ドアを開け入ると焙煎の豆の匂いが漂っていて、JAZZの音楽と共に、外者であるわたしの身を包んでくれた。学生時代に帰ったかのような錯覚にとらわれた。前払い式で、自由な席に着く。日中のせいか、客は常連のひとりだけだ。

0110_5店の前の看板に、このところ何回か味わっていて、たいへん気に入っているコスタリカが書かれてあったので、どの程度酸味を乗せてくるのか、期待して注文する。それが、期待以上だった。自分で言うのも気が引けるが、世間の趣味とわたしの趣味はずれていて、わたしの酸味希求度はたいへん高いのだ。だが、それを超えて、しかも上品さを保持していてたいへん良い。今年が始まったばかりで申し訳ないが、いまのところ、今年一番の味だ。

0110_7朝の眠気を払拭したので、さっそく高松の街を県庁方面から、香川大学方面へ向かって、歩き出す。中央公園を右手にみて、左手に菊池寛の生家跡を過ぎ、うどん(出た、セルフうどん)屋を観ながら、屋敷街を突っ切って、香川大学の正門へ到達する。0110_8全体的に低層の校舎が連なっていて、落ち着いたキャンパスだ。香川学習センターは真ん中の広場を超えた、近辺では最も高い8階建ての洒落た建物に入っている。

卒研審査のほうは、「文楽」の経済問題をテーマにした、Iさんの論文だったが、無事終了した。主査のK先生、センター所長のY先生が同席してくださった。審査の内容は非公開なので、ここに書くわけにはいかないが、努力の結果が論文の言葉に適切に反映され、たいへん筋が良い、放送大学らしい論文だったと思う。0110_11Iさんの「たいへんだったんです」という無邪気で真摯な探究心に心を動かされた。また、K先生とY先生の弛まぬ指導に感謝申し上げたい。このような論文が半年で書かれてしまうという潜在能力を放送大学生は持っていて、この力がある限り、放送大学の存在意義が十分にあるといえよう。    

0110_12Y先生が論文成就のお祝いだというので、わたしたち3人を、讃岐うどんの店へ連れて行ってくださった。写真のように、「釜揚げ」うどんだ。Y先生は、工学部出身で、なぜ讃岐うどんが旨いのか、などたいへん工学的な蘊蓄が深い。プロテンの話は十分に説得的だった。こちらのご出身で、若い時には毎日食べていたこともある、とおっしゃっていた。0110_13うどん屋一軒二軒の経験のうちは、わたしもそうなのか、と思っていた程度だったのだが、K先生に店を紹介していただいて、うどん屋を回っているうちに、習慣になるのも頷けると思うようになった。

0110_14Y先生に紹介されて、高松藩の別邸のあった「栗林公園」を訪れる。風が冷たくて、散歩どころではないとはじめは思ったけれども、案内のかたに導かれて、南の湖の小高い丘に立って、公園全体を眺めると、壮大な庭の欲望が見えてくる。盆栽と同様に、世界全体のミニチュアを表してみたい、という江戸期の大名の意図が覗くことが出来たように思える。戦国時代であれば、世界全体を摑みたいと思ったら、戦争という欲望が擡げてきただろうと思われるが、ここには、静かな世界観が展望されている。0110_15海有り、崖あり、大きな湖ありで、船頭付きの船でも見て回ることができる趣向だ。こんなに水が豊富な土地であるとは想像できなかった。0110_16小学校の地理の時間に習ったイメージが強くて、日照りで溜め池がたくさんあると聞いていた。けれども、ここの栗林公園では、山からの地下水が豊富で、それで水の公園が成立したらしい。

0110_17そのあと、じつはその山、峰山とおっしゃっていたのかな、にY先生に連れて行っていただいた。見事なパノラマで、高松の歴史が凝縮されているようだ。高松が交通の要所であり、なおかつ、ひとつの世界の中心を占めていたことは上から見ると如実にわかることだった。

0110_18話は転々とするのだが、そういえば、香川大学の周りには、特徴有る店が点在していて、飽きさせない。まずは、喫茶店「H」へ入って、ハンガリー陶器のヘレンドの数々を拝ませていただいた。0110_19残念ながら、コーヒーを入れてくれたのは、ウェッジウッドの陶器だったのだが。ヘレンドは白い磁器に緑色の模様が描かれているものに特徴があって、きれいだった。

0110_20それから、高松が漆器の産地であることも、こちらへ来てはじめて知った。それで、大学の周りにも、「S」美工という店があって、朱色のマグカップをショウウインドウに飾っていた。それで、これも衝動買いしてしまったのだ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。